コーヒー豆の種類「アラビカ種」とは|香りを愛でる人のための最高峰ガイド
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アラビカ種とは──世界が認める「最も繊細な品種」
コーヒー豆にはいくつかの種類が存在しますが、その中でも世界で最も広く愛されているのが「アラビカ種(Coffea Arabica)」です。全世界の生産量の約70%を占め、スペシャルティコーヒーの大半がこの品種をルーツとしています。
アラビカ種は、エチオピアの高地を原産とし、15世紀ごろからアラビア半島で栽培が始まりました。標高1000〜2000mの冷涼な気候を好み、手間のかかる管理が必要ですが、その分繊細な味わいと豊かな香りを引き出すことが可能になります。
丁寧に育てられたアラビカ種の豆は、まるでワインのように産地の個性=“テロワール”を色濃く映し出します。
アラビカ種が愛される理由|3つの特性

優雅な酸味と多層的な香り
アラビカ種の最大の魅力は、口に含んだ瞬間に広がるフローラルな香りと、果実のような酸味です。柑橘系、赤ワイン、ベリー、ジャスミン、チョコレートなど、産地や品種ごとに異なる“香味の層”を楽しめるのが特徴。味覚だけでなく嗅覚も刺激する、五感で味わう芸術品といえるでしょう。
低カフェイン・高品質のバランス
アラビカ種は他品種と比較してカフェイン含有量が少なく(ロブスタの約半分)、まろやかで優しい飲み口が特徴です。高級志向の方や、日常的に複数杯を楽しみたい層にもぴったり。体への負担を抑えながらも、深い満足感をもたらします。
焙煎との相性──浅煎りで映える個性
アラビカ種は浅煎り〜中煎りでその個性が最大限に引き立ちます。浅煎りでは明るく爽やかな酸味が際立ち、中煎りではナッツやキャラメルのような甘みが現れます。深煎りにすると苦味が強くなるため、品種ごとの微妙な差を楽しみたいなら、軽めの焙煎が理想です。
アラビカ種の代表的なサブバラエティ一覧【高級ライン中心】

アラビカ種の中にも複数の“サブバラエティ”が存在します。それぞれが独自の香味とストーリーを持ち、まさに嗜好品としての世界を広げてくれます。
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品種名 |
代表産地 |
香味の特徴 |
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ゲイシャ |
パナマ・エチオピア |
ジャスミンやベルガモットを思わせる華やかさ。世界最高峰。 |
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ブルボン |
ルワンダ・ブルンジ |
柔らかな酸味と丸みのある甘み。しとやかな印象。 |
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ティピカ |
中南米各地 |
クリーンで滑らかな質感。アラビカの原型とも言える品種。 |
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SL28・SL34 |
ケニア |
酸味とボディのバランスが秀逸。赤ワインのようなコク。 |
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パカマラ |
エルサルバドル |
大粒ならではの滑らかな質感とチョコレート感。 |
どの品種も、単なる「酸味と苦味」では語り尽くせない奥深さを秘めています。豆ごとのストーリーに触れることも、アラビカを嗜む醍醐味でしょう。
アラビカ vs ロブスタ vs リベリカ種|違いを比較
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種類 |
味の傾向 |
カフェイン量 |
香りの複雑さ |
主な用途 |
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アラビカ |
柑橘・果実・花系、繊細 |
少なめ |
非常に豊か |
高級豆、スペシャルティ |
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ロブスタ |
強い苦味、土っぽさ |
多い |
単調 |
インスタント、ブレンド |
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リベリカ |
独特な酸味とクセ |
中程度 |
強いが好みが分かれる |
一部地域での地場消費 |
アラビカは繊細さ、香り、余韻すべてにおいて“芸術的”。対してロブスタはコスト重視の実用品。リベリカは個性的でマニア向け。まさに、アラビカは「香りを愛でるためのコーヒー」なのです。
アラビカ種を愛でる──豆選び・保存・抽出のポイント

品種で選ぶ“愉しみ”
これまでは「産地で選ぶ」のが一般的でしたが、今は品種=サブバラエティで選ぶ人も増えています。ワインにおける“ピノ・ノワール”や“シャルドネ”のように、豆そのものの個性を愛でる楽しみ方が広まりつつあります。
保存方法──香りを閉じ込める
香りの命とも言えるアラビカ種。保存には「密閉+冷暗所」が鉄則です。特に焙煎後2週間以内が最も香味が立つ時期。ガス抜きバルブ付きのパッケージを使うことが多いですが、開封後は早めに使い切るのが理想です。
抽出方法──“余韻”を味わうために
浅煎りのアラビカ種を味わうなら、ペーパードリップやエアロプレスが最適。温度は85〜90℃、湯量は豆の10〜15倍を目安に。雑味を抑え、透明感のある香味を引き出すことができます。
NOVOLDのこだわり──2つの焙煎機が引き出すアラビカの美学

徳島の焙煎所「NOVOLD」は、ただ豆を焼くだけではありません。アラビカという芸術を“表現”するために、2種類の焙煎機を使い分けています。
Probat UG22n──クラシックが奏でる深み
1950年代に製造されたドイツ・プロバット社製のUG22n。鋳鉄製のドラムでじっくりと熱を通し、豆の内側から甘みを引き出します。特にティピカやブルボンなど、クラシカルな品種と相性抜群。重層的な香りとコクを生み出す、“熟成”のような焙煎です。
Loring S35──モダンが描く立体感
一方、アメリカ製のLoring S35は熱風循環式。焙煎による煙の再利用でクリーンな仕上がりに。ゲイシャのような繊細な香味や、パカマラの立体感あるボディも、Loringならではの精密な熱制御によって際立ちます。
豆の個性を最大限に──“2台体制”の真意
クラシックとモダン──相反するようでいて、アラビカという品種を深く理解するために両者は必要です。NOVOLDの焙煎は、まさに品種と火入れの“マリアージュ”。この一杯にかける熱量こそ、嗜好品としてのコーヒーの本質でしょう。
まとめ|最高級を選ぶなら“アラビカ種”という選択を

香り、味わい、個性──アラビカ種は、そのすべてにおいて「こだわる人」のためのコーヒーです。産地を超えた品種の魅力に触れ、自分だけの一杯を見つける。その豊かなプロセスもまた、コーヒーという嗜好品の醍醐味ではないでしょうか。
次に豆を選ぶとき、ラベルに記された「品種名」にも注目してみてください。そこには、あなたの感性を揺さぶる物語が眠っているかもしれません。

