コーヒー豆の味見方法とは?プロのカッピングから嗜好品としての愉しみ方まで解説
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ワインや葉巻と同じように、コーヒーもまた味わいを確かめる“儀式”を通して、嗜好品としての深みが生まれます。
ただ香りを楽しみ、飲んで満足するだけでは、本当に上質な豆との出会いは掴めないかもしれません。
「味見」を習慣にすることで、コーヒーは“所有する悦び”へと変わる。
本記事では、プロの世界で用いられる「カッピング」の手順から、家庭でもできる風味比較のコツ、そして高級焙煎機の違いが生む“味わいの対話”まで、味見の極意を丁寧にご紹介します。
なぜ「味見」が重要なのか?

ただ飲むだけでは分からない「本当の風味」
毎日飲んでいるコーヒーの中にも、実は豊かな味わいの階層があります。
たとえば同じ豆でも、焙煎度の違いや抽出条件のわずかな変化で、甘みが引き立ったり、苦味の印象が大きく変わることもあるのです。
こうした繊細な変化に気づく力を育てるには、「意識して味見する」習慣が欠かせません。
ただ美味しいという感想から一歩踏み込んで、自分の好みに出会うための第一歩といえるでしょう。
嗜好品としてのコーヒーに必要な「味の記憶」
ワインや時計のように、“語れる”ということもまた、嗜好品を楽しむ喜びのひとつ。
風味の印象を記憶し、言葉にして残すことは、あなたの選択眼を磨き、ブランドを選ぶ理由を明確にしてくれます。
プロが実践する味見方法|カッピングの基本手順

世界中のスペシャルティコーヒー業界で用いられる味見方法、それが「カッピング」です。
シンプルな道具と工程で、豆本来の風味を正確に評価できることから、焙煎士やバイヤーが日常的に行っています。
準備する道具とレシピ(SCA推奨)
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グラインダー(粗挽き推奨)
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カッピング用スプーン
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カップ(150〜200ml)
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スケール、ストップウォッチ、温度計
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お湯:92〜96℃、豆10g:湯166g(約1:16.6)
プロトコルに基づき、同条件で複数の豆を同時に味見することで、違いを明確に認識できます。
手順①|ドライフレグランスを嗅ぐ
挽きたての粉の香りから、ナッツやスパイスなどの一次印象をチェックします。
手順②|お湯を注ぎ、クラストの形成を観察
蒸らしを兼ねて表面の泡(クラスト)が立つ様子を観察。香りが立ち昇る瞬間です。
手順③|クラストを割る(ブレイク)
スプーンで軽くかき混ぜながら香りを嗅ぐことで、揮発性アロマの奥行きを探ります。
手順④|テイスティング(啜って飲む)
スプーンですくい、勢いよく吸い込むように口内に広げて味を評価。
甘み・酸味・苦味・口当たり・余韻まで丁寧に感じ取ってください。
焙煎機で、ここまで味は変わる

味見の深さを知るうえで、“焙煎機の違い”を体験することは格別の学びになります。
NOVOLDでは、2台の異なる哲学を持つ焙煎機を使い分け、唯一無二の味わいを生み出しています。
伝統の炎で育む深み|Probat UG22n
1950年代から続く名機「UG22n」は、直火式とスチーム加熱を併せ持つヴィンテージ焙煎機。
火の息づかいを感じながら、職人の五感で微調整しながら焙煎するその姿はまさに工芸の域。
仕上がりは、甘くやわらかい香ばしさと重厚なコクが共存するクラシカルな風味。
焙煎士の個性が色濃く反映される“手仕事の味”を堪能できます。
熱効率の極地|Loring S35 Kestrel
一方、アメリカ発の「Loring S35」は、環境負荷を抑えながら熱風循環で高精度な焙煎が可能。
雑味を削ぎ落とし、素材本来の輪郭をクリアに引き出すその技術は、まさに現代の理想。
軽やかで上品な酸味と、ミネラルを感じるような透明感は、Loringならではの特長。
「これが同じ豆?」と驚くほどに、焙煎の違いが“味見”を通して体感できます。
味を言葉にする|フレーバーホイールの使い方

味見をしたあと、その体験を“言葉”として残すことは重要です。
SCA(スペシャルティコーヒー協会)の「フレーバーホイール」は、その手助けになります。
“なんとなく美味しい”を脱する第一歩
ホイールの中心から広がるカテゴリは、「甘味」「酸味」「ロースト」など大まかな軸から、「キャラメル」「アプリコット」「ベルガモット」などの繊細な風味まで分類されています。
実際に飲みながら、直感に近いものを指でなぞり、ノートに書き出していくことで、語彙と感覚が自然に育まれていきます。
香り・後味・口当たりまで表現する
「酸味が強い」ではなく「レモンピールのように清らか」
「後味が重い」ではなく「ハイカカオチョコのように深く残る」
こうした表現は、嗜好品としてコーヒーを楽しむ上で大きな武器となります。
コーヒー豆の味見を“嗜む”ということ

ペアリングで味覚を拡張する
味見の世界をさらに広げるのが「ペアリング」です。
例として以下のような組み合わせが挙げられます。
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中煎りのエチオピア×白カビチーズ
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深煎りのブラジル×ビターチョコレート
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浅煎りのコロンビア×柑橘ピール
異なる素材との対話の中で、コーヒーの個性がより立体的に感じられるでしょう。
味覚を鍛える“4週間プログラム”
NOVOLDでは、味見を日常に取り入れたい方向けに、「4週間テイスティングチャレンジ」を推奨しています。
1週目:同じ豆をProbat/Loringで比較
2週目:焙煎度違いでの飲み比べ
3週目:温度帯(60℃/45℃)での風味の変化を記録
4週目:食後・空腹時など時間帯ごとの味の違いを確認
PDFテンプレートもご用意しております。味の記憶を“資産”に変える第一歩にどうぞ。
まとめ|“語れる一杯”が、人生を豊かにする

味見とは、ただの確認作業ではありません。
香りを感じ、風味を記録し、自分の好みを発見する。
その過程こそが、コーヒーを“選びたくなる嗜好品”へと昇華させます。
ヴィンテージの炎、現代の技術、そしてあなた自身の五感。
すべてを総動員した“味見の儀式”を、ぜひ日常に取り入れてみてください。

