コーヒー豆のカッピング方法とは?|香りと味を見極める、静寂の儀式

コーヒー豆のカッピング方法とは?|香りと味を見極める、静寂の儀式

コーヒーの世界には、“カッピング”と呼ばれる儀式があります。
焙煎士やバリスタが、豆の香りと味を純粋に見つめるために行う、いわば「味覚の審美」。

カップに広がる香気を嗅ぎ、温度の変化とともに表情を変える液体を味わい、
その一杯の中に潜む“個性”を探る。
それがカッピングです。

 

カッピングとは

カッピングとは、コーヒー豆の香りや味を客観的に評価するための基本技法。
焙煎度や産地、精製方法による違いを、均一な条件で比べることで、
豆が持つ「素の美しさ」を見極めます。

スペシャルティコーヒーの世界では、
このカッピングが「品質の共通言語」として用いられています。
そこでは点数や数値以上に、香りの透明感や余韻の深さが語られます。

 

カッピングで見えてくるもの

豆の個性を知る

カッピングを行うことで、豆の“声”が聞こえるようになります。
甘みが主張するもの、果実の酸が凛と立ち上がるもの、
あるいは静かに深みを湛えた苦味の輪郭を描くもの。

同じ焙煎でも、豆によって香りの立ち方はまるで違います。
その差を感じ取ることこそ、カッピングの本質です。

焙煎・抽出の方向性を見極める

焙煎士にとって、カッピングは設計図のようなもの。
火加減、時間、排気のバランスを整えるために、
一杯一杯の味わいを記録し、次の焙煎に生かします。

 

カッピングに必要なもの

  • 焙煎したてのコーヒー豆(複数種類を比べるのが理想)

  • グラインダー

  • カッピングカップ(または同容量の耐熱カップ)

  • カッピングスプーン

  • スケールと温度計

  • お湯(92〜94℃前後)

静かな空間で行うことが望ましい。
香水や食事の香りを遠ざけ、
コーヒーだけに集中できる“静寂”を用意してください。

 

カッピングの方法

① 粉の香りを嗅ぐ(ドライアロマ)

豆を挽いた瞬間に立ち上がる香りを、深く吸い込みます。
果実の甘さ、ナッツのような香ばしさ、時に花の香。
乾いた豆が語る“はじまりの香り”を感じます。

② お湯を注ぎ、クラストを形成する

カップにお湯を静かに注ぎ、3〜4分間そのままに。
表面には泡と粉が膜を作り、香りを閉じ込めます。
その静けさの中に、すでに豆の物語が宿っています。

③ ブレイク(香りを解き放つ)

スプーンで膜を崩す瞬間、
香りが一気に解き放たれます。
この“ブレイク”こそ、カッピングの最も劇的な瞬間。
焙煎の仕上がり、豆のポテンシャルが一呼吸で伝わります。

④ テイスティング

スプーンで少量をすくい、空気を含ませながら口に広げる。
温度が下がるにつれ、酸が柔らぎ、甘みが浮かび上がる。
その移ろいを味わいながら、香り・舌触り・余韻を記録していきます。

 

評価の視点

カッピングでは、主に以下の要素で豆を捉えます。

  • アロマ(香り):最初に感じる印象

  • フレーバー:味の輪郭

  • アシディティ(酸の質):明るさ・透明感

  • ボディ:口当たりの厚み

  • バランス:各要素の調和

  • アフターテイスト:余韻の長さと静けさ

数値で点をつけることもありますが、
本来は感覚の記録です。
心に残る香りや、時間とともに変化する甘みを、言葉にしてみましょう。

 

自宅でカッピングを楽しむために

プロの道具がなくても構いません。
同じ条件で、静かに向き合うことが大切です。

  • 豆を同じ粗さで挽く

  • 湯温・抽出量を一定に保つ

  • 一杯ずつ香りを記録する

カッピングノートをつけると、
自分の好みが少しずつ形になっていきます。
まるで、時計の針が時を刻むように、
あなたの味覚も少しずつ研ぎ澄まされていくでしょう。

 

結びに

カッピングは、ただの評価手段ではありません。
それは、コーヒーという嗜好品と向き合う“静かな時間”です。

香りの層を読み解き、余韻を感じ、
一杯の中にある世界を愛でる。

その繰り返しの中で、
あなたの中に“理想の一杯”が形を持ちはじめる。
 カッピングとは、その瞬間に立ち会うための、美しい作法なのです。

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