一杯の格を決める“コーヒー豆の抽出時間”

一杯の格を決める“コーヒー豆の抽出時間”

コーヒーの味わいを決定づけるのは、焙煎でも豆の種類でもない。
それは、“抽出時間”という名の芸術です。
たった数秒の違いが、酸味の輪郭を変え、香りの層を重ね、余韻をまるで別のものにしてしまう。

NOVOLD COFFEE ROASTERSでは、
その数分の“静寂”を、嗜好品として愉しむための時間と捉えています。
焙煎士が刻んだ時間を、抽出という行為で完成させる――。
ここでは、豆ごとに異なる「理想の時間」をご紹介します。

 

抽出時間が生み出す、香りと余韻のバランス

抽出時間は、味の方向性を決めるもっとも繊細な要素です。

  • 短い抽出(約2分台)では、酸味が明るく立ち、香りは軽やか。

  • 中間(約3分前後)では、甘味と酸味が均衡し、最もバランスが整う。

  • 長い抽出(3分半〜4分以上)では、コクと苦味が深まり、重厚な余韻が生まれる。

それはまるで、音楽のテンポを変えるように、
時間の取り方ひとつで一杯の印象がまるごと変わる。
豆が持つ“声”を聴きながら、最も美しく響くリズムを探す――それが抽出です。

焙煎と抽出、二つの時間が交わる場所

NOVOLDの焙煎は、二つの名機によって支えられています。
ひとつは1971年製のドイツ製Probat UG22n
厚い鋳鉄のドラムが、深く、じっくりと熱を伝える。
そこから生まれるのは、重厚なコクと、どこか懐かしい温もり。

もうひとつは、アメリカ製のLoring S35 Kestrel
対流式の熱風とデジタル制御による、精密な温度管理。
雑味を抑え、豆本来の香りを透明に描き出す。

この「伝統」と「革新」、
ふたつの時間の哲学が交わる場所に、NOVOLDの味はあります。

 

豆ごとに異なる、理想の抽出時間と表情

ブラジル 山口農園 ― “均整のとれた3分の美学”

キャラメルとミルクチョコレートを思わせる甘み。
2分半〜3分で淹れると、やわらかな甘味とナッツの香りが最も調和します。
3分半を超えると、ボディが増して落ち着いた深みが現れる。

焙煎機:Probat UG22n
→ 安定と温かみ。日常の基準となる“王道の一杯”。

ブラジル フルッタ アナエロビック ― “2分40秒、果実が香り立つ瞬間”

嫌気性発酵によるワインのような芳香。
短めの抽出(約2分40秒)では、赤い果実の酸味と軽い発酵香が際立ちます。
3分を超えるとキャラメルのような甘みが増し、まるで熟したベリーの余韻。

焙煎機:Loring S35 Kestrel
→ 抽出時間によって、“果実”が“熟成ワイン”に変わる稀有な豆。

コスタリカ グラナディージャ農園 ― “黄金の3分”

ハニー製法特有のハチミツの甘味と花の香り。
2分半では柑橘の酸が立ち、3分で香りと甘味が均衡。
3分半ではキャラメルのようなコクが増す。

焙煎機:Loring S35 Kestrel
→ 抽出時間によって、「蜜」と「花」の均衡が整う。まさに“黄金比”。

エチオピア アリーチャ ― “2分半、香りの頂点”

ナチュラル製法によるベリーとジャスミンの香りが印象的。
2分半の短い抽出では、華やかさと酸の透明感が際立ち、
3分を超えると赤ワインのような深みと艶やかな余韻へ。

焙煎機:Loring S35 Kestrel
→ 短い抽出は“花”、長い抽出は“果実”。香りが変奏する美しい豆。

グアテマラ エルインヘルト農園 ― “3分半、静寂の深み”

ウォッシュド精製が生むクリーンな酸味と柔らかな甘み。
3分半前後でじっくりと時間をかけることで、酸が溶け込み、
ハチミツのようなまろやかさと上質なボディが現れる。

焙煎機:Probat UG22n
→ 時間が磨く、静かで深い説得力を持つ一杯。

インドネシア マンデリン エスペシャル ― “4分で完成する重厚”

スマトラ式精製によるアーシーでスパイシーな個性。
3分半〜4分、ゆっくりと時間をかけて抽出することで、
森のような深みとブラウンシュガーの甘香が重層的に広がる。

焙煎機:Probat UG22n
→ “待つ時間”が生む、静謐で力強い一杯。

 

抽出時間を“愛でる”という愉しみ

抽出時間は、単なるレシピではなく、嗜好の儀式
湯が落ちる速度、香りが立ち上がる瞬間、
その一滴のリズムに身を委ねる時間は、
ワインのデキャンタージュにも似た、官能的な行為です。

NOVOLDが届ける豆は、その数分の「静寂」を愉しむために存在します。
時計の針を見つめるのではなく、
香りの立ち上がりを五感で感じながら――。
あなた自身の“理想の時間”を見つけてください。

 

理想の時間は、あなたの手の中に

焙煎士が刻んだ時間を、抽出という行為で完成させるのはあなた。
2分半で軽やかに香るのも、4分で深く沈むのも正解です。
重要なのは、「どんな時間を愛でたいか」という感性。

コーヒーは、味わう嗜好品であると同時に、
“時間を味わう芸術”でもあります。

今この瞬間、あなたの手の中で滴る一杯が、
世界でたったひとつの物語を描いています。

 

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