Probat UG22n × Loring S35 Kestrel|二台の焙煎機が織りなすNOVOLDの味

NOVOLD COFFEE ROASTERSのロースタリーには、性質の異なる二台の焙煎機が並んで稼働しています。1971年製のヴィンテージProbat UG22nと、四国地方で唯一導入されている最新鋭Loring S35 Kestrel。半世紀を隔てた二台の対話から、NOVOLDの味わいは生まれます。

本ページでは、それぞれの機体の技術的特徴と、二台を使い分ける焙煎哲学について詳しくご紹介します。

Probat UG22n(1971年製・ドイツ)── 黄金期の名機

1971年製ヴィンテージ焙煎機 Probat UG22nの全体像。鋳鉄ドラムが重厚なコクを生む

機体概要

  • 機種名: Probat UG22n
  • 製造年: 1971年(機体刻印「70/4164」)
  • 製造メーカー: Probat(ドイツ・1868年創業)
  • シリーズ: UGシリーズ(Probat社の黄金期1950年代後半〜1970年代の代表モデル群)

1868年創業のProbat社は、コーヒー焙煎機製造において世界最高峰の評価を受ける老舗メーカー。その技術力の頂点にあった「黄金期」に製造されたUGシリーズは、現在では市場に新たに出回ることはなく、良好な状態で稼働する個体は世界的にも極めて稀少です。

技術的特徴① 鋳鉄製焙煎ドラム ── 深みとコクの源泉

厚く高品質な鋳鉄を使用した焙煎ドラムが、UG22nの味づくりの核。鋳鉄が持つ優れた蓄熱性と均一な熱分布により、豆全体に安定した熱環境を提供。さらに鋳鉄から放射される遠赤外線が豆の内部を加熱し、メイラード反応とカラメル化反応を理想的に進行させ、甘み・コク・豊かな香りを最大限に引き出します。

ステンレスや鋼板を使う現代的な焙煎機と比べ、鋳鉄は蓄熱の重さが段違い。豆の芯まで熱を通しながら、表面を焦がさず、ゆったりと火を入れていく。深煎りや中煎りの「深みのある味わい」は、この鋳鉄ドラムなしには成立しません。

技術的特徴② 半熱風式焙煎 ── 風味バランスの妙

UG22nが採用する半熱風式は、ドラムからの直接熱(伝導熱)と熱風(対流熱)を組み合わせる焙煎方式。直火式の力強さと熱風式のクリーンさの中間に位置し、ボディ感とアロマの両立を可能にします。

焙煎士のダンパー操作によって、望ましい香りを閉じ込めながら不要な雑味を排出する。この繊細な制御によって生まれるのが、複雑で多層的な風味プロファイルです。

技術的特徴③ アナログ操作と職人技 ── 唯一無二の味わい

三代目代表 櫻井健司が1971年製Probat UG22nを操作する様子

UG22nの操作系は、温度計・ガス圧計・ダンパーといった機械的計器のみ。デジタル自動制御は一切ありません。焙煎士が五感を駆使してリアルタイムで状況を把握し、微細な調整を加えていく必要があります。

その日の気温・湿度・豆のロット差──環境要因に応じた最適な焙煎を、機械任せにすることはできない。長年の経験と熟練した技術がそのまま味の差として現れるからこそ、UG22nを使いこなすことは「焙煎技術の証明」とも見なされてきました。

引き出す味わい

UG22nの特性が最も活きるのは、中煎りから深煎り。鋳鉄ドラムの蓄熱性を活かした重厚なコクと、ゆったりと引き出される甘み。マンデリン エスペシャルの大地を感じさせる香り、ブラジル山口農園のチョコレート感、深煎りブレンドのカフェの王道的な飲みごたえ──これらはUG22nの真骨頂です。

Loring S35 Kestrel(米国製・四国唯一)── 革新の最新鋭機

四国地方で唯一導入されているLoring S35 Kestrel焙煎機。最新鋭の対流式

機体概要

  • 機種名: Loring S35 Kestrel
  • 製造年: 2017年
  • 製造メーカー: Loring Smart Roast, Inc.(アメリカ合衆国 カリフォルニア州)
  • 特記事項: 四国地方で唯一、当社が導入

「SUPERIOR IS. OUR STANDARD.(最高こそが我々の基準)」を企業理念に掲げるLoring社は、コーヒー焙煎技術の革新をリードする企業。その代表モデル S35 Kestrel は、スペシャルティコーヒー業界で最もクリーンな風味表現を実現する機種として高く評価されています。

技術的特徴① Flavor-Lock Roast Process™ ── ピュアな風味の実現

Loringの特許技術「Flavor-Lock Roast Process™」は、単一バーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う独自のシステム。焙煎中の煙による風味への悪影響を極限まで排除し、豆本来のクリーンで繊細な味わいを保護します。

外部のアフターバーナーが不要なため、設備コスト・設置スペース・エネルギー消費量の削減も実現。雑味のないクリアな風味と、サステナブルな焙煎を両立する設計です。

技術的特徴② 対流式焙煎(熱風循環システム) ── 完璧な均一加熱

精密に制御された熱風を焙煎ドラム内で効率的に循環させ、豆を加熱する対流式。豆一粒一粒に均一な熱が供給されるため、焙煎ムラ(豆ごとの差・豆の内外の差)を徹底的に排除します。

甘み・酸味・苦味・香りのバランスが理想的に整い、豆が持つ潜在能力を最大限に引き出す。この均一性こそが、スペシャルティコーヒーの繊細な個性を表現する上で決定的な意味を持ちます。

技術的特徴③ 高度なデジタル制御 ── ローストプロファイルの忠実な再現

Loring S35 Kestrelの精密制御パネルとアナログ計器の詳細

タッチスクリーン式のインターフェースで、温度・時間・ファン速度などを0.1℃・1秒単位で精密に管理・自動制御(PID制御)します。一度確立した最適な焙煎レシピを、バッチごと、あるいは異なるLoringモデル間でも一貫して再現可能。

「いつ飲んでも変わらない最高の美味しさ」──スペシャルティコーヒーが求められる安定した品質を、デジタル制御の力で実現します。Artisan・Cropsterといった業界標準ソフトウェアとの連携で、高度なデータロギングと分析にも対応します。

技術的特徴④ 環境性能 ── 燃料80%削減のサステナブル焙煎

シングルバーナーシステムによる効率的な熱利用により、従来のアフターバーナー付き焙煎機と比較して最大80%の燃料節約を実現。CO2排出量も大幅に削減し、美味しさと環境への配慮を両立する次世代焙煎機です。

業界での評価 ── ティム・ウェンデルボー氏が選ぶ機種

Loring S35 Kestrelは、コーヒー界のレジェンド「ティム・ウェンデルボー氏」が自身のロースタリー「Tim Wendelboe」(ノルウェー・オスロ)に導入していることでも知られています。

  • 2004年 ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ優勝
  • 2005年 ワールド・カップテイスターズ・チャンピオンシップ優勝
  • Nordic Roaster Competition 通算6度目の優勝(2017年に3年連続を含む)

品質に一切の妥協を許さないレジェンドが選んだ事実が、Loring焙煎機の信頼性と性能を雄弁に物語っています。Good Food Awardsをはじめとする国際品評会でも、Loring焙煎機を使用したコーヒー豆は数多くの受賞実績を持っています。

引き出す味わい

Loring S35 Kestrelの特性が最も活きるのは、浅煎りから中浅煎り。煙の影響を受けないクリーンな焙煎により、エチオピア アリーチャのブルーベリー感、コスタリカ グラナディージャのフローラルな酸味、ゲイシャ品種の華やかな香り──これらの繊細な産地個性をダイレクトに表現できます。

二台を使い分ける焙煎哲学

NOVOLD COFFEE ROASTERSのロースタリー内観。Probat UG22nとLoring S35 Kestrelが並ぶ

1971年と2017年。半世紀を隔てた二台の焙煎機が同じ空間で稼働する光景は、NOVOLD──「新しい」と「古い」の共存──そのものを体現しています。

豆の個性に合わせた使い分け

焙煎機 得意な領域 代表的な銘柄
Probat UG22n 中煎り〜深煎り(重厚なコクと甘み) マンデリン エスペシャル / 深煎りブレンド / ブラジル山口農園
Loring S35 Kestrel 浅煎り〜中浅煎り(クリーンで華やかな酸味) エチオピア アリーチャ / コスタリカ グラナディージャ / ゲイシャ系

豆の品種、精製方法、目指す味わいによって、最適な焙煎機を選択する。データだけでは導けない、長年の経験と五感による判断──それが三代目代表・櫻井健司の焙煎哲学です。

OLD × NOVO ── 温故知新の体現

古いものを否定して新しいものに走るのではなく、伝統の価値を守りながら革新を取り入れる。鋳鉄ドラムの蓄熱性とアナログ操作の繊細さ。Flavor-Lock技術の透明感とPID制御の再現性。両者は対立するものではなく、それぞれが補完し合う関係です。

1971年製のヴィンテージ機を現役で使い続ける希少性と、四国地方で唯一の最新鋭機を導入する先進性。NOVOLDの一杯には、この「OLD」と「NOVO」が両立して初めて生まれる味わいが、確かに込められています。

関連情報

本ページの内容は、有限会社徳島ブラジルコーヒ店および機材メーカー公式情報に基づき作成されています。