1932年創業の老舗コーヒーロースター|93年続く徳島ブラジルコーヒとNOVOLDが守る焙煎哲学

1932年創業の老舗コーヒーロースター|93年続く徳島ブラジルコーヒとNOVOLDが守る焙煎哲学

日本のコーヒー文化は明治から始まった

日本にコーヒーが伝わったのは、江戸時代末期のこと。しかし、庶民がコーヒーを日常的に飲むようになったのは明治時代以降です。文明開化の波とともに、東京や横浜を中心に喫茶店が誕生し、大正時代にはカフェ文化が花開きました。

昭和に入ると、全国各地に個人経営の喫茶店が増え始めます。マスターがカウンターの奥でサイフォンやネルドリップでコーヒーを淹れ、常連客が新聞を広げながら一杯を楽しむ。そんな日本独自の喫茶文化が、地方の街角にまで根を下ろしていきました。

戦後の高度経済成長期には、喫茶店の数がピークに達します。インスタントコーヒーの普及や缶コーヒーの登場で「手軽に飲める」文化が広まる一方、丁寧に一杯ずつ淹れる喫茶店の文化も守り続けられてきた。この「手軽さ」と「本物志向」の二つの流れが、今日のサードウェーブやスペシャルティコーヒーブームへとつながっています。

その長い歴史の中で、戦前から現在まで途切れることなくコーヒーを焙煎し続けてきた老舗ロースターが、日本各地に存在します。そんな老舗の一つが、徳島にあります。

昭和7年、徳島に一軒のコーヒー豆店が生まれた

1932年(昭和7年)。世界が大恐慌の余波に揺れ、日本では満州事変の翌年にあたるこの年。徳島市大工町に、一軒のコーヒー豆販売店が産声を上げました。

創業者の名は桜井吉朗氏。京都を訪れた際に出会ったアイスコーヒーに深く感銘を受けたことが、すべての始まりでした。「この味を、徳島の人々に届けたい」——その一念が、徳島初のコーヒー豆販売店の開業につながったのです。

昭和7年の徳島に、コーヒー文化はまだほとんど存在していなかったはず。大都市の喫茶店文化がようやく地方に波及し始めた頃に、豆の販売から始めるという選択。それは当時としては相当な先見の明であり、同時に大きなリスクを伴う挑戦だったのではないでしょうか。

しかし桜井氏の直感は正しかった。コーヒーの香りは徳島の街に少しずつ広がり、地元の喫茶店や飲食店との信頼関係が築かれていきます。「徳島ブラジルコーヒ」という社名には、当時ブラジルから届くコーヒー豆への敬意と、異国の味を地元に届ける使命感が込められていたのかもしれません。

戦争、復興、そして三代目へ — 93年の歩み

創業からわずか数年後、日本は戦時体制へと突入します。コーヒー豆の輸入は停止し、疎開を余儀なくされた時期も。コーヒーは「敵国の飲み物」として肩身の狭い思いをした時代です。

それでも、コーヒーへの情熱は潰えなかった。戦後、徳島の街が復興していく中で、コーヒー豆の販売も再開。焼け跡から立ち上がる人々の日常に、再びコーヒーの香りが戻ってきました。高度経済成長とともに喫茶店が増え、徳島ブラジルコーヒは地域のコーヒー文化を支えるインフラとしての存在感を強めていきます。

そして現在、三代目の櫻井健司氏が代表取締役として舵を取ります。コーヒーインストラクター1級、アドバンスドコーヒーマイスター、Jr.スペシャルティコーヒーカッパーの資格を持つ専門家。先代、先々代から受け継いだ伝統を守りながら、スペシャルティコーヒーという新しい潮流も積極的に取り入れる。93年という時間の重みを背負いつつ、常に前を向く姿勢が、今日のNCRを形作っています。

徳島県内200店以上のプロの飲食店が豆を採用。ゴ・エ・ミヨ賞受賞のフレンチレストランや、全国コンテスト入賞のショコラティエが在籍するケーキ店にも豆が届けられている。お遍路ドリップバッグの徳島代表選任、ジャパンハンドドリップ選手権の会場選出——。93年の信頼は、これらの実績となって花開いているのです。

NOVOLD — 「新しい」と「古い」を融合

2017年12月、徳島市マリンピア沖洲の工業エリアに新ブランド「NOVOLD COFFEE ROASTERS」が誕生しました。ポルトガル語で「新しい」を意味する「NOVO」と、英語で「古い」を意味する「OLD」を組み合わせた造語。「ブラジルコーヒーの伝統を守りつつ、新しいコーヒー文化を築いていきたい」——その想いが、ブランド名そのものに刻まれています。

古い倉庫をリノベーションしたロースタリーは、まさにこの哲学の体現。外観の素朴さと、中に秘めた最新鋭の設備。そして何より象徴的なのが、二つの焙煎機の共存です。

伝統の象徴 — Probat UG22n(1971年製)

ドイツの老舗プロバット社が技術力の頂点にあった「黄金期」に製造したヴィンテージ機。厚い鋳鉄ドラムの優れた蓄熱性と遠赤外線放射が、豆の芯まで火を通し、重厚なコクと甘みを引き出す。半熱風式による複雑な風味プロファイルと、焙煎士が五感で調整するアナログな工程。50年以上の歳月を経てなお現役で稼働する世界的にも稀少な一台。

革新の象徴 — Loring S35 Kestrel(2017年製)

四国で唯一導入されているアメリカ・Loring Smart Roast社の最新鋭機。特許技術「Flavor-Lock Roast Process」が煙の影響を排除し、豆本来のクリーンな産地個性をダイレクトに表現。0.1℃、1秒単位のPID制御で最高のレシピを再現し、従来機比で最大80%の燃料削減も実現する。

1971年と2017年。半世紀を隔てた二つの焙煎機が同じ空間で稼働する光景は、NOVOLD——「新しい」と「古い」——そのものです。伝統の厚みに革新の鋭さを重ね合わせることで、他のどこにもない味わいが生まれる。老舗であることに安住せず、常に進化を求める。それが93年を生き抜いてきたロースターの矜持なのでしょう。

歴史ある味を、あなたのカップに

93年の歴史は、そのまま93年分の信頼と技術の蓄積です。戦前から現在まで途切れることなくコーヒーを焙煎し続けてきた経験値は、一朝一夕で手に入るものではありません。

その歴史が刻まれた一杯を、NCRの通販を通じて全国どこでも味わえる時代。ブラジル山口農園の穏やかなナッツ感、エチオピアの華やかなフローラル香、マンデリンの重厚なアーシー感——6銘柄それぞれに、93年の目利きと焙煎技術が注がれています。

老舗であるということは、長い時間をかけて「変えないもの」と「変えるべきもの」を見極めてきたということ。品質への妥協なき姿勢は変えない。でも、焙煎技術は進化させ、新しい産地の豆にも挑戦する。その絶妙なバランス感覚こそが、93年という歳月が教えてくれた知恵なのかもしれません。

「歴史ある味」と聞くと、古めかしいイメージを持つ方もいるかもしれません。しかしNCRの一杯は、古いだけでも新しいだけでもない。Probatの重厚な甘みとLoringのクリーンな透明感が共存する、唯一無二の味わい。その一杯をぜひ、あなたのカップで確かめてみてください。

よくある質問

Q. 老舗のロースターと新しいロースター、味に違いはありますか?

老舗には長年の経験から培われた焙煎技術と、安定した品質管理のノウハウがあります。新しいロースターには最新の設備やトレンドを取り入れる柔軟性がある。どちらが優れているという話ではなく、それぞれに強みがあります。NCRの場合、93年の経験と最新鋭のLoring S35 Kestrelを併せ持つことで、双方の強みを一つの屋根の下に集約しているのが特徴です。

Q. 93年間ずっと同じ味なのですか?

いいえ。93年の間にコーヒー豆の産地も品種も精製方法も大きく変化してきましたし、焙煎機もProbatからLoringへと進化しています。「変わらないもの」は品質への姿勢と、徳島の食文化に寄り添う使命感。「変わってきたもの」は技術、設備、そして取り扱う豆のラインナップ。時代に合わせて進化しながら、根幹の哲学を守り続ける——それが長年にわたり支持されてきた理由の一つなのかもしれません。

Q. ロースタリーの見学は可能ですか?

見学の可否や方法については、NCRの公式サイトまたはお電話でお問い合わせください。1971年製のProbat UG22nと最新鋭のLoring S35 Kestrelが並ぶ光景は、コーヒー好きにとって一見の価値があります。訪問が難しい方は、まず通販でNCRの味を体験し、いつか実際にロースタリーを訪れてみてください。カップの中の味わいが、どんな歴史と技術から生まれているのか——実際に目にすると、コーヒーの味がさらに深く感じられるはずです。