コーヒー焙煎の1ハゼ・2ハゼとは|タイミングで決まる焙煎度の見極め方

NOVOLD COFFEE ROASTERSの焙煎士がProbat焙煎機を操作する全身

焙煎機の前に立っていると、ある瞬間「パチパチ」と乾いた音が響き始めます。これが「ハゼ」——焙煎において味の方向性を決定づける、最も重要な瞬間の一つ。

1ハゼと2ハゼ、二つのポイントで何が起きているのか。そしてNCRの焙煎士は、この音をどう聴き分けているのか。焙煎のクライマックスに迫ります。

パチパチという音 — 焙煎における「ハゼ」の正体

コーヒー豆を加熱し続けると、豆の内部では水分が蒸発し、CO2ガスが生成されます。これらのガスが豆の内部圧力を高め、あるタイミングで豆の組織を破裂させる——その瞬間に鳴るのがハゼ(クラック)の音です。

ポップコーンが弾ける原理に近い、と言えばイメージしやすいでしょうか。閉じ込められた水蒸気やガスが、一気に解放される瞬間。この物理的な破裂に伴って、豆の内部構造が変化し、風味成分の生成が加速します。

ハゼは通常、二段階で訪れます。1ハゼ(ファーストクラック)と2ハゼ(セカンドクラック)。それぞれのタイミングで起きている化学反応は異なり、どこで焙煎を止めるかによって、味はまったく別物になるのです。

1ハゼ — 化学変化の始まりを告げる合図

1ハゼは、通常196〜205℃付近の温度帯で発生します。比較的大きく、はっきりとした「パチッ、パチッ」という音。この段階で、豆の内部ではメイラード反応が加速し始めています。

メイラード反応とは、アミノ酸と糖が反応して褐色の化合物を生み出す化学反応。パンが焼けるときの香ばしさ、ステーキの表面の焦げ色——あの美味しさの源と同じ反応が、コーヒー豆の中で起きているのです。

1ハゼの段階では、豆の色は薄い茶色から中程度の茶色に変わり、サイズも生豆の約1.5倍に膨張します。この時点で焙煎を止めると、一般的には浅煎り〜中浅煎りの焙煎度になります。フルーティーな酸味やフローラルな香りが際立つ、産地の個性が最も鮮明に出る焙煎度です。

NCRが取り扱うエチオピア アリーチャ村のブルーベリーやジャスミンの香り、コスタリカ グラナディージャ農園のレモンやオレンジの明るい酸味——こうした繊細なフレーバーは、1ハゼ付近のタイミングで固定されます。

2ハゼ — 深煎りの領域への入り口

1ハゼが収まってからしばらく焙煎を続けると、今度はより細かく、密度の高い「ピチピチ」という音が聞こえ始めます。これが2ハゼ。通常224〜230℃付近で発生します。

2ハゼでは、豆の細胞構造がさらに崩壊し、内部の油分が表面に滲み出し始めます。1ハゼとは異なり、この段階の破裂はCO2ではなく、豆の細胞構造がさらに変化し、セルロースの破壊や内部圧力の変化によって、より細かな破裂音が生じます。音も1ハゼより小さく、注意深く聴かないと見逃してしまうことがあります。

2ハゼの始まり付近がフルシティロースト、2ハゼの最中がフレンチロースト、そして2ハゼの終盤がイタリアンロースト——いわゆる「深煎り」の世界です。この段階では酸味は大幅に減少し、代わりに苦味とコクが前面に出る。ダークチョコレートやスパイスのような風味が支配的になります。

ここでの判断は、まさに「秒単位」。2ハゼに入ってからの数秒間で、味のプロファイルは刻一刻と変化していきます。あと3秒早ければ酸味が残ったはず、あと3秒遅ければ焦げのニュアンスが出てしまう——この微妙な世界を制御するのが、焙煎士の腕の見せどころです。

五感で聴く — NCR焙煎士のアナログな判断

NCRのProbat UG22nでの焙煎は、まさにこの「聴く技術」が試される工程です。

1971年製のこのヴィンテージ機には、デジタル制御がありません。温度はアナログのメーターで確認し、ハゼのタイミングは焙煎士自身の耳で聴き分ける。三代目代表の櫻井健司氏は、コーヒーインストラクター1級、アドバンスドコーヒーマイスター、Jr.スペシャルティコーヒーカッパーの資格を持つ専門家ですが、このProbatの前では、資格の知識以上に「五感」が頼りになります。

ハゼの音だけではありません。
煙の色の変化——白っぽい煙から青みがかった煙への移行。
豆の色——テストスプーンで取り出した豆の微妙な褐色の変化。
香り——生っぽい穀物的な匂いから、甘く焦がしたような香りへの転換。

これらすべてを同時に読み取り、手動でガス圧やダンパーを調整していく。

この五感によるアナログな判断が、機械には出せない温かみのある味を生み出すのです。鋳鉄ドラムの蓄熱性と遠赤外線が、焙煎士の繊細なコントロールに応え、重厚なコクと豊かな甘みを紡ぎ出す。ハゼの一音一音に耳を澄ませる——それは、93年の歴史が培った職人の技術そのものです。

一方、Loring S35ではPID制御によって温度カーブが精密に管理され、ハゼのタイミングもデータとして記録されます。一度確立したプロファイルを忠実に再現できるLoringと、五感で一回ごとの焙煎に向き合うProbat。NCRの「二刀流」は、このハゼの瞬間にもはっきりと表れています。

ハゼのタイミングで変わるNCR銘柄の味わい

NCR取扱い銘柄を、ハゼとの関係で見てみましょう。

1ハゼ付近で仕上げる銘柄

エチオピア アリーチャ ナチュラル

エチオピア アリーチャ村ナチュラル。ジャスミンやオレンジブロッサムのフローラル香、ブルーベリーやラズベリーの赤系果実感。酸味4、香り4——1ハゼ付近の浅い焙煎度で、産地の華やかさが最大限に開花します。

コスタリカ グラナディージャ農園のイエローハニー精製も、1ハゼ付近が真骨頂。レモンやオレンジの明るい酸味と、ジャスミンのフローラルな余韻が長く続きます。

1ハゼ後〜2ハゼ前の中煎り銘柄

ブラジル 山口農園

ブラジル山口農園。アーモンド、ヘーゼルナッツ、ミルクチョコレート——甘味4のプロファイルは、1ハゼ後の中煎り帯で甘みとナッツ感が見事に調和します。

グアテマラ エルインヘルト農園も中煎りが映える銘柄。ストロベリーの果実感とワインのアロマが、この焙煎度でバランスよくまとまります。

2ハゼ付近の深煎り銘柄

マンデリン エスペシャル

インドネシア マンデリン エスペシャル。ダークチョコレート、クローブ、ナツメグのスパイシーな風味が、2ハゼ付近の深煎りで重厚なフルボディに仕上がる。コク4の圧倒的な存在感。

よくある質問

Q.  自宅焙煎でハゼの音が聞こえないときはどうすればいいですか?

換気扇の音や焙煎機のモーター音で聞き取りにくい場合は、周囲の雑音を減らす工夫をしてみてください。また、温度計を併用して目安の温度帯(1ハゼ:約196〜205℃、2ハゼ:約224〜230℃)を確認する方法もあります。豆の色の変化や、煙の量の変化も判断材料になります。

Q.  1ハゼと2ハゼの間で止めるとどんな味になりますか?

いわゆるミディアムロースト〜ハイローストの領域。酸味と甘味のバランスが取れ、ナッツやチョコレートのフレーバーが出始める、多くの方にとって飲みやすい焙煎度です。NCRのブラジル山口農園やグアテマラ エルインヘルトのような銘柄が、この帯域で真価を発揮します。

Q.  ハゼが来ないのは焙煎の失敗ですか?

火力が弱すぎる場合、ハゼに必要な温度に到達しないことがあります。また、投入量が多すぎて十分に加熱されないケースも。ハゼが来ない焙煎は「ベイクド」と呼ばれる状態になりやすく、香りが弱く平坦な味になりがちです。適切な火力と投入量の調整が、ハゼを正しく発生させるための基本です。