地球の裏側、ブラジル。日本から最も遠いこの国で、日本人の血を引く生産者たちが丁寧にコーヒーを育てている—— そう聞いたとき、どこか胸が温かくなる感覚を覚えませんか。
移民の歴史とともにブラジルの大地に根を下ろした日系農園が守り続けるのは、伝統的なブルボン種と、妥協を許さない品質への姿勢。その一杯には、遠い地で受け継がれてきた日本人の誇りが静かに宿っています。
ブラジルコーヒーと日系移民の深い縁

ブラジルへの日本人移民の歴史は、20世紀初頭に遡ります。1908年、第一回移民船「笠戸丸」がサントス港に到着。多くの日本人がコーヒー農園での労働を目的にブラジルへ渡りました。過酷な環境のなかで汗を流し、やがて自らの農地を手にしていった先人たち。ブラジルのコーヒー産業と日系移民は、その出発点から深く結びついていたのです。
現在、ブラジルには約200万人の日系人が暮らしており、農業分野で大きな存在感を示しています。コーヒー農園を営む日系生産者は、日本人気質の丁寧さと勤勉さを受け継ぎ、ブラジルコーヒーの品質向上に貢献してきました。大量生産・効率重視の風潮のなかで、あえて手間のかかる伝統品種を守り続ける。その姿勢は、遠い地で花開いた日本人のクラフトマンシップと呼べるのではないでしょうか。
日系農園のコーヒーが高品質である理由

日系農園のコーヒーが品評会で高い評価を得ることは珍しくありません。その理由はどこにあるのか。
まず、品質への妥協のなさ。日本人が持つ「もの作り」への真摯な姿勢が、一粒一粒の豆への丁寧な向き合い方に表れています。収穫のタイミング、乾燥の管理、選別の精度、それらすべての工程で手を抜かない。
次に、伝統品種への一貫した信念。収量が少なく、病害に弱いブルボン種を、それでも守り続けるのは「この品種でしか出せない味がある」という確信があるから。効率やトレンドに流されず、自分たちが信じる品質を追求し続ける一貫性が、カップの中に確かな違いとして現れるのです。
山口農園 — セラード地域で伝統のブルボンを守る
NOVOLD COFFEE ROASTERSが取り扱うブラジル産シングルオリジンは、ミナスジェライス州セラード地域の山口農園から届けられます。標高850〜1,200mのセラード高原で、日系生産者が共同栽培するコーヒー。品種は伝統的なブルボン種。精製はナチュラル—— チェリーの果肉をつけたまま天日で乾燥させる、最もシンプルで古い方法です。
山口農園がナチュラル精製にこだわるのは、ブラジル・セラードの気候がこの方法に最適であるという理由だけではありません。果肉の甘みを豆に移行させるナチュラル精製が、ブルボン種のポテンシャルを最大限に引き出せるから。自然乾燥の過程でゆっくりと浸透する糖分が、アーモンドやヘーゼルナッツの風味を纏った、甘く深い味わいを生み出します。伝統品種と伝統精製の組み合わせを頑なに守るというその職人気質が、山口農園の個性です。
アーモンドとミルクチョコ 日系農園ならではの繊細な甘み
山口農園のブルボン・ナチュラルをカップに注いだとき、まず感じるのはアーモンドとヘーゼルナッツの穏やかなナッツ感。派手さはないけれど、どこまでも心地よい。続いて広がるのが、ミルクチョコレートのような甘めのチョコ感。苦味や酸味に偏ることなく、柔らかく甘いのです。
キャラメルやブラウンシュガーを思わせる甘味が後味に残り、口の中をじんわりと温めてくれます。酸味は控えめで、全体を通じて穏やかなトーン。この「主張しすぎない上品さ」は、日系農園の丁寧な栽培と選別があってこそ生まれるもの。一杯のコーヒーのなかに、生産者の人柄が透けて見えるような、そんな繊細な甘みです。
味覚チャートは、甘味4・香り3・コク2・酸味2・苦味2。甘味が突出しているのが特徴で、コーヒーの苦味が得意でない方にも安心してお勧めできるバランスに仕上がっています。
1932年創業の徳島と、ブラジルの日系農園をつなぐ物語

NOVOLD COFFEE ROASTERSの母体である有限会社徳島ブラジルコーヒは、1932年(昭和7年)に徳島市大工町で創業しました。社名に「ブラジル」を冠するこのロースターと、ブラジルで伝統品種を守る日系農園。93年を超える歴史のなかで紡がれてきた、日本とブラジルのコーヒーの縁。
創業者・桜井吉朗氏が京都で出会ったアイスコーヒーに感銘を受け、徳島で最初のコーヒー豆販売店を開いた時代から、三代目の櫻井健司氏が伝統と革新を両立させる現在まで。日本の老舗ロースターとブラジルの日系農園が結ぶのは、品質への信念の架け橋。遠い地で守られた日本人の丁寧さが、徳島の焙煎技術によって最高の一杯へと昇華される—— この物語を、ぜひカップの中で味わってみてください。
よくある質問
Q. 日系農園の豆は他と何が違う?
一般化はできませんが、日系農園の多くは品質管理の丁寧さと伝統品種へのこだわりに定評があります。山口農園の場合、収量の少ないブルボン種を守り続け、ナチュラル精製で甘みを最大化する方針を貫いています。効率よりも味を優先するその姿勢が、カップの中の違いとして確かに感じられるはずです。
Q. 山口農園以外の日系農園の豆もある?
ブラジルには多くの日系コーヒー農園が存在し、品評会で入賞する農園も少なくありません。NOVOLD COFFEE ROASTERSでは現在、山口農園のブルボン・ナチュラルを取り扱っています。今後のラインナップについては、公式サイトをチェックしてみてください。
Q. ブラジルコーヒーは初心者向き?
非常に向いています。酸味が穏やかで、ナッツやチョコレートの親しみやすいフレーバーが中心のブラジルコーヒーは、スペシャルティコーヒーの入り口として最適。山口農園のブルボン・ナチュラルは、苦味や酸味のバランスが良く、ブラックでもミルクを入れても楽しめます。