半熱風式焙煎のコーヒーが美味しい理由|Probat UG22nが生む93年続く老舗の味

NOVOLD COFFEE ROASTERSのProbat焙煎機サンプルスプーンを操作する手元

焙煎方式の中でも、日本で根強い人気を持つのが「半熱風式」。ドラムからの伝導熱と、送風による対流熱—— 2つの熱を巧みに操ることで、直火式の力強さと熱風式のクリーンさの「いいとこ取り」を実現する焙煎方式です。なぜ半熱風式のコーヒーは美味しいのか。その仕組みと、93年の歴史を持つロースターの味を通して見ていきましょう。

 

半熱風式焙煎とは — 2つの熱を操る焙煎方式

コーヒーの焙煎方式は、大きく3つに分類されます。

直火式は、火がドラムの穴を通して直接豆に当たる方式。パンチの効いた味わいが出やすい反面、焼きムラのリスクが高い。熱風式(対流式)は、熱風のみで豆を加熱する方式。均一な加熱が可能で、クリーンな味わいが特徴。

そして半熱風式は、この二つの中間に位置します。密閉されたドラムの金属面から伝わる伝導熱と、ドラム内に送り込まれる熱風の対流熱を組み合わせて豆を加熱する。ドラムからの伝導熱がボディの厚みと甘みを生み、対流熱が全体を均一に加熱して雑味を抑える。二つの熱源のバランスを焙煎士がコントロールすることで、複雑で奥深い風味が引き出されるのです。

 

半熱風式が生む味わい — 複雑な風味と豊かなアロマ

半熱風式焙煎の味わいを一言で表すなら、「複雑さ」。

伝導熱は豆の表面にじっくりと熱を伝え、メイラード反応とカラメル化反応を促進します。これにより、ナッツやキャラメル、チョコレートといった甘味系のフレーバーが強く引き出される。同時にボディに厚みが加わり、口の中に広がるコクと余韻が生まれます。

一方の対流熱は、豆全体を包み込むように均一に加熱。伝導熱だけでは生じやすい焼きムラを解消し、クリーンさを確保する。この二つが組み合わさることで、「甘くてコクがあるのに雑味がない」という、一見矛盾するような味わいが実現するのです。

さらに、半熱風式では焙煎中のアロマ(香気成分)が豊かに発生する傾向があります。伝導熱と対流熱の複合的な化学反応が、多種多様な香気成分を生み出す。袋を開けた瞬間に広がる芳醇な香り—— それが半熱風式焙煎のもう一つの魅力です。

 

1971年製Probat UG22nの半熱風式焙煎 — その唯一無二の味

半熱風式焙煎機の中でも、NCRが所有するProbat UG22nは特別な存在です。

1868年創業のドイツの老舗、プロバット社。その技術力の頂点にあったとされる「黄金期」に製造された1971年の個体。高品質で厚い鋳鉄を使用した本体ドラムは、現代の量産品では再現が難しいとされる蓄熱性と均一な熱分布を持っています。

この鋳鉄ドラムから放射される遠赤外線が、半熱風式の伝導熱をさらに強化。豆の表面だけでなく芯まで火を通し、内部の糖分をしっかりとカラメル化させる。結果として生まれるのは、重厚なコクと豊かな甘み。キャラメルやブラウンシュガーを思わせる柔らかい甘さが、口の中にじんわりと広がります。

そしてこの焙煎機には、デジタル制御がありません。三代目代表の櫻井健司氏が、コーヒーインストラクター1級やアドバンスドコーヒーマイスターの知識を背景に、五感を駆使してガス圧やダンパーを手動で調整する。音を聴き、煙の色を見極め、豆の香りを嗅ぎ分ける——。そのアナログな工程が、機械では出せない温かみのある味を紡ぎ出すのです。

良好な状態で稼働する同型機は世界的にも非常に稀少。市場に新たに出回ることもなく、専門業者のあいだで極めて高値で取引される存在。このヴィンテージ機が現役で稼働していること自体が、一つの物語です。

 

半熱風式焙煎が特に活きる豆の選び方

半熱風式焙煎の特性——重厚なボディ、深い甘み、複雑な風味—— を最大限に活かすなら、相性の良い豆を選ぶことが大切です。

ナッツ・チョコレート系のフレーバーが豊かな豆

ブラジル 山口農園 豆P large

ブラジル山口農園は、半熱風式と最も相性の良い銘柄の一つ。ミナスジェライス州セラード地域、標高850〜1,200mで栽培されたブルボン種のナチュラル精製。アーモンドやヘーゼルナッツのナッツ感と、ミルクチョコレートの甘みが鋳鉄ドラムの伝導熱で一層引き立ちます。味覚チャートの甘味4が、半熱風式でさらに豊かに。

アーシー・スパイス系のフレーバーが強い豆

インドネシア マンデリン エスペシャル 豆P large

インドネシア マンデリン エスペシャルも、半熱風式の恩恵を存分に受ける銘柄。スマトラ島北部リントンニフタ、パランギナンから届くこの豆は、湿った土や森を連想させるアーシー感と、クローブやナツメグのスパイシーな風味が特徴。ダークチョコレートの甘味が支える、コク4のフルボディ。半熱風式の重厚な伝導熱が、この個性的な風味を余すことなく引き出します。

コクと甘味を重視した中〜深煎り向きの豆

グアテマラ エルインヘルト農園 豆P large

グアテマラ エルインヘルト農園も候補に挙がります。ウエウエテナンゴの名門農園から届くブルボン・カトゥアイ種のウォッシュド。コク3、甘味3、香り3と高水準でまとまったこの豆は、半熱風式の中煎りでストロベリーの果実感とワインのアロマが見事に調和。

 

半熱風式ロースターのコーヒーを味わうなら

NOVOLD COFFEE ROASTERSのロースタリー内観。Probat UG22nとLoring S35 Kestrelが並ぶ

NCRのProbat焙煎銘柄は、1932年創業の老舗が93年かけて磨き上げた味。古い倉庫をリノベーションした徳島市マリンピア沖洲のロースタリーから、工場直送でお届けしています。

徳島県内200店以上のプロの飲食店が選ぶ品質を、自宅のテーブルで。休日の朝、少し厚めに切ったトーストにバターを塗って、半熱風式焙煎のコーヒーをゆっくり淹れる。鋳鉄ドラムが紡ぐ重厚な甘みが、何気ない朝を特別な時間に変えてくれるはずです。

ブランド名「NOVOLD」——ポルトガル語の「NOVO(新しい)」と英語の「OLD(古い)」の造語——が表すように、伝統の半熱風式焙煎と最新鋭のLoring S35を併せ持つNCR。まずは半熱風式の味わいから、その世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

 

よくある質問

Q. 半熱風式と直火式、どちらが美味しいですか?

どちらが優れているというものではなく、味の方向性が異なります。直火式は、炎が直接豆に当たることでパンチの効いた力強い味わいが出やすい。半熱風式は、伝導熱と対流熱の組み合わせによる複雑な風味と、均一な加熱によるクリーンさが持ち味です。NCRのProbat UG22nは半熱風式ですが、鋳鉄ドラムの蓄熱性と遠赤外線放射が加わることで、一般的な半熱風式以上の深みと甘みを実現しています。

Q. 半熱風式の焙煎機は家庭用にもありますか?

一部のメーカーから、小型の半熱風式ドラムロースターが販売されています。ただし、業務用のProbat UG22nのような厚い鋳鉄ドラムの蓄熱性や、遠赤外線効果を家庭用サイズで完全に再現するのは難しいのが現状です。半熱風式の本格的な味わいを体験するなら、それを使いこなすプロのロースターの豆を選ぶのが近道です。