自宅でカッピングに挑戦|プロも行う味覚評価を体験してみよう

自宅でカッピングに挑戦|プロも行う味覚評価を体験してみよう

コーヒーの味を評価するプロの技法「カッピング」。なにやら特別な道具や専門知識が必要に思えるかもしれませんが、実は自宅のキッチンにあるもので十分に始められます。
カッピングを通じてコーヒーの味わいを分解して理解する力が身につくと、毎日の一杯がまったく違う深みを持って感じられるようになるのです。

「カッピング」とは、プロが味を評価する方法

カッピングは、スペシャルティコーヒー協会(SCA)が定めたプロトコルに基づくコーヒーの品質評価法。焙煎所やコーヒーバイヤーが豆を仕入れる際、品質を見極めるために行う手法として世界中で用いられています。

なぜドリップやプレスではなくカッピングなのか。それは、抽出器具の影響を排除し、豆そのものの特性を最もピュアに評価できる方法だからです。フィルターや抽出器具を使わず、粉にお湯を注いで味を評価するシンプルな手法。極めてシンプルなのに、コーヒーの持つすべての情報が手に取るようにわかる。その体験は、一度味わうと忘れられないものになるでしょう。

NOVOLD COFFEE ROASTERSの代表・櫻井健司氏は、コーヒーインストラクター1級、アドバンスドコーヒーマイスター、Jr.スペシャルティコーヒーカッパーの資格を持つプロの評価者。日常的にカッピングを行い、豆の品質を見極め、焙煎のレシピを決定しています。その同じ手法を、自宅で簡易的に体験できるのがホームカッピングです。

自宅カッピングに必要なもの

特別な道具は不要。キッチンにあるもので始められます。

用意するもの

・耐熱カップまたはマグカップ:2〜3個(同じ大きさのものが望ましい)
・カレースプーンほどの大きさのスプーン:1本
・コーヒースケール:あると正確だが、計量スプーンでも可
・タイマー:スマートフォンのもので十分
・沸騰したお湯

そして、NOVOLD COFFEE ROASTERSの異なる銘柄2〜3種類。

カッピング専用のスプーンや特殊な器具は、自宅で楽しむぶんには必要ありません。「気軽に始められること」が、ホームカッピングの最大のメリット。まずは手元にある道具で試してみましょう。

簡易カッピングの手順

ステップ1 — 豆を粗挽きにする

各銘柄をそれぞれ10〜12g用意し、粗挽きに。フレンチプレス用の粗さが目安です。挽いた粉をそれぞれのカップに入れます。この時点で、粉の香り(フレグランス)をチェック。鼻を近づけて、乾いた粉の状態での香りを感じてみてください。銘柄ごとの違いがすでに感じられるはず。

ステップ2 — お湯を注ぐ

90〜96℃程度のお湯を、各カップに180〜200ml注ぎます。粉が浮き上がり、表面に「クラスト」と呼ばれる粉の層が形成されます。ここでタイマーをスタート。

ステップ3 — 4分間待つ

4分間、じっと待ちます。この間にお湯がコーヒーの成分をゆっくりと溶かし出しています。粉の層がお湯の表面を覆い、蒸気を閉じ込めてくれるため、フレーバーが逃げにくい構造になっているのです。

ステップ4 — クラストを破る(ブレイク)

4分経ったら、スプーンの背で粉の層を3回ゆっくりとかき分けます。この瞬間が最も劇的。閉じ込められていた香り(アロマ)が一気に立ち上ります。鼻をカップの近くに寄せて、深く吸い込んでみてください。エチオピア アリーチャ村ならジャスミンやベリーの華やかな香りが、ブラジル 山口農園ならナッツやチョコレートの温かみのある香りが広がるはず。

ステップ5 — 表面の粉を取り除く

クラストを破った後、表面に残った粉やアクをスプーンですくい取ります。2本のスプーンを使って、表面を滑らせるように取り除くときれいに。

ステップ6 — すする(テイスティング)

やけどしない温度まで少し冷めたら、スプーンでコーヒーをすくい、勢いよくすすります。「ズズッ」と音を立てるようにすするのがポイント。口の中にコーヒーを霧状に広げることで、舌全体でフレーバーを感じ取れます。上品さは一旦忘れて、思い切りすすってみてください。カッピングでは、あえて勢いよくすするのが正しい作法です。

温度が下がるにつれて、味わいが変化していくのもカッピングの醍醐味。高温ではわからなかった酸味や甘味が、冷めるにつれて現れてくることがあります。

カッピングで注目したい評価ポイント|フレグランス、アロマ、フレーバー、ボディ

カッピングで評価する主要な項目を整理しましょう。

フレグランス(乾いた粉の香り)

挽いた直後の粉から立ち上る香り。花のような、果実のような、ナッツのような——最初の印象をここで捉えます。

アロマ(お湯を注いだ後の香り)

クラストを破った瞬間に解放される香り。フレグランスとは異なる、より複雑で立体的な香りが感じられるでしょう。

フレーバー(味わい)

口に含んだときの総合的な味わい。酸味、甘味、苦味のバランスや、具体的に何を連想するか(ベリー、チョコレート、花、ナッツなど)を感じ取ります。

ボディ(口当たり・重さ)

コーヒーの「重さ」や「質感」。水のように軽いのか、ミルクのように滑らかなのか、シロップのように重厚なのか。口の中でのコーヒーの存在感を評価します。

NOVOLD COFFEE ROASTERSの各銘柄には味覚チャート(甘味・香り・コク・酸味・苦味の5段階評価)が用意されています。カッピングで感じた自分の印象と、このチャートを照らし合わせてみてください。「確かに、このエチオピアは酸味4で甘味4だ」と実感できた瞬間、コーヒーの世界がぐっと身近になるはずです。

NCRの飲み比べセットでカッピング入門

カッピングの醍醐味は「比較」にあります。1銘柄だけでは気づかない個性が、隣に別の銘柄を並べた瞬間にくっきりと浮かび上がる。NOVOLD COFFEE ROASTERSの6銘柄の中から3種を選んでカッピングしてみることをおすすめします。

おすすめの組み合わせ — 味の対比が明確な3銘柄

エチオピア アリーチャ村 ナチュラル(華やかな酸味と果実感)、ブラジル 山口農園(ナッツとチョコレートの甘み)、インドネシア マンデリン エスペシャル(重厚なコクとアーシー感)。この3銘柄を並べると、産地・精製方法・焙煎の違いが生み出すフレーバーの幅がはっきりと体感できます。

エチオピアのフローラルな華やかさは、Loring S35 Kestrelの「Flavor-Lock Roast Process」が煙の影響を排除し、豆本来の産地個性をダイレクトに表現したもの。一方、マンデリンのアーシーな深みは、1971年製Probat UG22nの鋳鉄ドラムが生む重厚な甘みの真骨頂。同じロースタリーの「焙煎の二刀流」が、いかに多彩な味わいを生み出しているかを、カッピングを通じて実感してみてください。

カッピングの体験が深まるほど、日常のコーヒーの楽しみ方も変わります。「今日のエチオピアは、いつもよりベリー感が強い」「このマンデリンは、後味にスパイスが長く残る」——こうした発見が、毎朝のコーヒーを特別な時間に変えてくれるでしょう。

よくある質問

Q.  一人でカッピングしても意味はありますか?

もちろん意味があります。カッピングは他人と意見を交わすことも楽しいですが、本質は「自分の味覚を鍛えること」。一人で集中して味わうことで、微妙なフレーバーの違いに気づく力が磨かれます。ノートに感じたことを書き留める習慣をつけると、自分の味覚の成長を記録として振り返れます。最初は「美味しい」「酸っぱい」程度の感想でも、回を重ねるうちに「ブルーベリーに似た酸味」「チョコレートの余韻」と語彙が増えていくはずです。

Q.  カッピングスプーンは必要ですか?

カッピング専用のスプーンは、深くて丸い形状が特徴で、適量のコーヒーをすくってすすりやすい設計になっています。ただし自宅カッピングでは、カレースプーンやれんげなど、深さのあるスプーンで十分に代用可能です。専用スプーンは形にこだわりたくなった段階で購入を検討すればよいでしょう。まずは始めることが何よりも大切です。

Q.  カッピングはどのくらいの頻度で行うのがよいですか?

決まった頻度はありません。新しい豆を購入したタイミングや、飲み比べたい銘柄が手元にあるときに行うのが自然です。月に1〜2回程度でも、継続すれば味覚の解像度は確実に上がっていきます。特別な行事として構えるのではなく、「週末に少し時間ができたからやってみよう」くらいの気軽さで。コーヒーを深く知るための、穏やかな習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。