コーヒーの精製方法は、ここ数年で驚くほどの進化を遂げています。嫌気性発酵、カーボニックマセレーション、インフューズド—— 次々と登場する新しい手法が、コーヒーの味の可能性を押し広げている。2025年の今、この潮流はどこへ向かっているのか。最新トレンドを追いつつ、「本質」を見失わないための視座を考えていきます。
コーヒーの精製革命は止まらない

かつてコーヒーの精製方法といえば、ナチュラルかウォッシュドかの二択が主流でした。そこにハニープロセスが加わり、スマトラ式という地域独自の方法が知られるようになり、精製の多様性は徐々に広がっていきました。しかし、近年の変化のスピードは桁違い。嫌気性発酵(アナエロビック)が普及し始めたかと思えば、カーボニックマセレーション(炭酸ガス浸漬法)がコンペティションを席巻。さらにはフルーツや香辛料のフレーバーを加える「インフューズド」まで登場。
この精製革命の背景には、生産者の品質追求への飽くなき情熱と、スペシャルティコーヒーマーケットの成熟があります。消費者がより個性的で複雑なフレーバーを求めるようになり、生産者がそれに応えるために新しい技術を探求する。ワイン醸造、チーズ製造、パン焼きなど、他の発酵食品から知恵を借りながら、コーヒーの可能性を拡張し続けている。2025年現在、この流れはさらに加速しています。
アナエロビック × ハニー × ナチュラル — 精製のハイブリッド化

2025年の最も顕著なトレンドのひとつが、「精製のハイブリッド化」です。単一の精製方法だけでなく、複数の手法を組み合わせることで、従来にない複雑なフレーバーを追求する動き。
NOVOLD COFFEE ROASTERSの「ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル」は、まさにこのハイブリッド精製の実例。嫌気性発酵(アナエロビック)で密閉環境下での発酵を行った後、ナチュラル精製(果肉付き天日乾燥)で仕上げる。嫌気性発酵が生み出すワインのような複雑な発酵フレーバーと、ナチュラル精製が加える果肉由来のフルーツ感が融合。チェリーやストロベリーの鮮やかな赤系果実フレーバー、わずかにワインを感じさせる発酵感、温度変化で変わる多彩な表情——単一の精製方法では実現できなかった、多層的な味わいが生まれます。
天然酵母を活用した独自の製法は、ブルボン種という伝統的な品種に、最先端の精製技術を掛け合わせたもの。「古い品種×新しい精製」という組み合わせ自体が、2025年のコーヒートレンドを象徴しています。
カーボニックマセレーション — ワイン製法の本格応用
カーボニックマセレーション(Carbonic Maceration / CM)は、ワインの世界ではボジョレー・ヌーヴォーの製法として知られる技術です。CO2(二酸化炭素)を充填した密閉タンクの中にコーヒーチェリーを入れ、発酵を進める。嫌気性発酵(アナエロビック)と似ていますが、CMではCO2を積極的に充填することで、タンク内の環境をさらに厳密にコントロールします。
この手法で処理されたコーヒーは、非常にクリーンでありながら、驚くほど複雑なフレーバーを持つことが多い。2020年代に入り、世界バリスタ選手権やカップオブエクセレンスなど国際コンペティションで、CM処理の豆が上位を席巻するケースが増えています。トップバリスタたちがこぞってCM豆を採用する理由は、審査員を唸らせるフレーバーの複雑さと、それでいてクリーンカップのスコアを損なわない品質の高さにあります。
ただし、CM処理には高度な設備と専門知識が必要で、現時点では限られた農園でしか実践できていません。今後、技術の普及とともにより多くの産地で採用される可能性があり、コーヒーの味の多様性をさらに広げていくでしょう。
インフューズドコーヒー — 賛否両論の最前線

コーヒーの精製トレンドのなかで、最も議論を呼んでいるのが「インフューズド」です。インフューズドコーヒーとは、精製過程で外部のフレーバー素材(シナモン、バニラ、果汁、スパイスなど)を添加し、豆にフレーバーを浸透させる手法。
賛成派は、「新しい味覚体験の創出」「コーヒーの楽しみ方の拡張」として肯定します。反対派は、「それはもはやコーヒー本来の味ではない」「産地やテロワールの個性が覆い隠される」と批判。国際コンペティションでは、インフューズド豆の出品を禁止するルールが設けられる動きも出ています。
NOVOLD COFFEE ROASTERSが追求するのは、「豆本来の個性を最大限に引き出す」という哲学。外部のフレーバーを加えるのではなく、品種のポテンシャル、テロワールの個性、精製方法の技術——これらを焙煎の力で開花させることに注力しています。フルッタ アナエロビックのチェリーやストロベリーのフレーバーは、天然酵母の発酵が生み出した「豆自身の力」。添加物ではない、本物の味わいです。
トレンドに振り回されない — NCRが大切にする「本質」

新しい精製方法が次々と登場するなかで、NOVOLD COFFEE ROASTERSが守り続けているのは「豆のポテンシャルを最大化する焙煎」という本質です。
1932年の創業から93年。その歴史のなかで、コーヒー業界は幾度もの変化を経験してきました。戦時中のコーヒー豆入荷停止、インスタントコーヒーの普及、シアトル系カフェの台頭、サードウェーブの到来——そのすべてを乗り越え、時代のニーズに応えながらも根幹を変えずに歩んできた。トレンドの精製方法を取り入れつつ(フルッタ アナエロビック)、伝統的な精製の魅力も守る(山口農園のナチュラル、エルインヘルトのウォッシュド)。1971年製のProbatで伝統の味を紡ぎ、Loring S35 Kestrelで革新の味を拓く。
最新のトレンドに飛びつくだけでもなく、変化を拒むわけでもない。「この豆が最も美味しくなる焙煎は何か」——その問いに対する答えを、二台の焙煎機と三代目の技術で追い求め続ける。それが、93年という時間をかけて磨かれてきた本質であり、流行に左右されない信頼の源です。NOVOLD COFFEE ROASTERSの多彩なラインナップから、あなたにとっての「最高の一杯」を見つけてみてください。
よくある質問
Q. トレンドの精製は一過性のもの?
アナエロビックやカーボニックマセレーションは、単なるブームではなく、コーヒーの精製技術の本質的な進化と見なされています。ワインの世界で嫌気性発酵が何百年も続いているように、コーヒーでも定着していく可能性が高い。ただし、インフューズドのように議論が続く手法もあり、すべてが残るわけではないかもしれません。本当に品質向上に寄与する技術が、時間の試練を経て残っていくでしょう。
Q. 初心者にもトレンド精製は楽しめる?
十分に楽しめます。むしろ、「コーヒーってこんな味がするの?」という驚きを最も感じやすいのが初心者の方かもしれません。NOVOLD COFFEE ROASTERSのフルッタ アナエロビックは、チェリーやストロベリーのジューシーなフレーバーが主役で、コーヒー特有の苦味が少ないため、コーヒーが得意でない方にも受け入れやすい味わいです。
Q. NCRで今後新しい精製の豆は出る?
NOVOLD COFFEE ROASTERSでは、品質基準を満たす新しい精製の豆を積極的に探求しています。現在のフルッタ アナエロビックはその好例です。今後も、最新の精製技術によって生まれた優れた豆があれば、ラインナップに加わる可能性は十分にあります。新しい精製の豆の入荷情報は、公式サイトでチェックしてみてください。