砂糖をひとさじも入れないカップから、ハチミツを思わせる甘い香りが立ち上がる。それがコスタリカ グラナディージャです。レモンやオレンジのような明るい酸味が寄り添い、最後にジャスミンのようなフローラルな余韻が残る。標高1,850〜1,950mの高地で育ったカトゥアイを、イエローハニーで仕上げた一杯。甘さとバランスで飲ませるタイプの豆です。

ハチミツのような甘さは、どの瞬間に立ち上がるか

一口目に来るのは、香りのほうが先です。カップを近づけた時点でハチミツを思わせる甘い匂いがあり、口に含むと今度はレモンやオレンジのような明るい酸味が広がります。尖った酸ではなく、輪郭のはっきりした、透明感のある酸。
中盤で甘さが追いついてきます。イエローハニー由来の甘みが酸のうしろから持ち上がってきて、酸味と甘味がちょうど釣り合うところで落ち着く。トロピカルフルーツを思わせる印象が顔を出すのもこのあたりです。苦味はほとんど感じられません。
冷めたときには、甘さの側が前に出てきます。温かいうちは酸味と並走していた甘さが、温度が下がるにつれて主役の位置に移る。ハチミツという比喩がいちばん腑に落ちるのは、実はこの冷めた状態かもしれません。
余韻はジャスミンのようなフローラルさ。これが長く続くのがこの豆の特徴で、飲み終えてしばらく経ってから、鼻の奥に花のような香りが残っていることに気づきます。クリーンで、後味が濁らない。
コスタリカ グラナディージャの豆のプロフィール(早見表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 産地 | コスタリカ |
| 地域 | タラス地方 ドタ・バレー/サンタ・マリア・デ・ドタ |
| 農園・生産者 | グラナディージャ農園(カルデロン一家所有)/精製はロスアンヘレス・マイクロミル(2009年稼働) |
| 標高 | 1,850m〜1,950m |
| 品種 | カトゥアイ |
| 精製 | イエローハニー |
| 推奨抽出 | ハンドドリップ:豆15g/湯225ml(1:15)/91℃/蒸らし30秒/合計2:30 | 挽き目:中挽き |
産地はタラス地方ドタ・バレー、標高1,850〜1,950m

この豆が育つのは、コスタリカ・タラス地方のドタ・バレー、サンタ・マリア・デ・ドタ。標高は1,850mから1,950mという高地です。タラスはコスタリカのコーヒー産地のなかでもよく知られたエリアですが、そのなかでもグラナディージャ農園の環境は特別と言っていい条件を備えています。
理由は昼夜の気温差です。高地では日中と夜間の温度差が大きく、コーヒーチェリーの成熟がゆっくり進みます。時間をかけて実ったチェリーには糖分と酸が蓄えられるので、この豆の甘さと明るい酸味は、標高がもたらしたものだと言えます。
精製はイエローハニー。果肉を除いたあと、種子のまわりに残る粘液質(ミューシレージ)を少なめに残して乾燥させる方法です。ハチミツを加えているわけではなく、粘液質がハチミツのような質感であることから名前がつきました。残す量が少ないぶん乾燥も短めで、ウォッシュドに近い透明感を保ちながら、ほのかな甘みが乗ります。ナチュラルの甘さとウォッシュドのクリーンさ、その中間にある精製方法です。
精製方法そのものの違いを知りたい方は、コーヒーの精製方法を全解説 — ナチュラル・ウォッシュド・ハニー・スマトラ式・アナエロビックの味の違いもあわせてどうぞ。
誰がどう作っているか|カルデロン一家とロスアンヘレス・マイクロミル

グラナディージャ農園を所有するのは、カルデロン一家。精製を担うのは、2009年から稼働しているロスアンヘレス・マイクロミルです。栽培から水洗処理、乾燥まで、すべての工程を一家の手で行っています。
マイクロミルというのは、大規模な共同精製施設に豆を出すのではなく、農園が自前で持つ小さな精製施設のこと。イエローハニーのように「粘液質をどれだけ残すか」で味が変わる精製は、こうした自前の設備があってこそ精度が出せます。
ロスアンヘレス・マイクロミルを営むカルデロン家は、2011年のカップ・オブ・エクセレンス コスタリカ大会で La Estrella 農園のロットが第1位(90.38点)に選ばれています。グラナディージャは、その同じミルで精製される農園のひとつです。
農園主はこう言います。「1杯のコーヒーには、ストーリーがあります。ロスアンヘレスミルの熱意と愛情の日々を、感じてください」
品種と産地と焙煎がどう味に効いてくるかは、コーヒー豆の品種・産地・焙煎の関係|種類で変わる味と香りのガイドで整理しています。
NOVOLD の焙煎|Loring S35 Kestrel で透明感を守る

NOVOLD はこの豆を Loring S35 Kestrel で焼いています。Loring は、単一のバーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う特許技術「Flavor-Lock Roast Process™」を備えた焙煎機。焙煎中の煙による風味への影響を抑える設計です。
方式は対流式。精密に制御された熱風を焙煎ドラム内で循環させて豆を加熱します。豆一粒一粒に均一に熱が入るため、豆ごとの焼きムラも、豆の内側と外側の焼きムラも排除される設計。操作はタッチスクリーン式で、温度・時間・ファン速度を0.1℃、1秒単位で自動制御(PID制御)します。

焙煎を担当するのは、三代目の焙煎士・櫻井健司。NOVOLD には性格の異なる二台の焙煎機があり、深く焼き込む豆はドイツ製・1971年製の Probat UG22n が受け持ちます。この豆は Loring 側です。二台の詳細はProbat UG22n × Loring S35 Kestrelのページにまとめました。
いちばん美味しく淹れる|91℃・中挽きの数値レシピ

ハンドドリップの目安は、豆15g/湯225ml(比率1:15)/湯温91℃/挽き目は中挽き/蒸らし30秒/合計2分30秒。
まず湯を30〜40mlほど落として粉全体を湿らせ、30秒待ちます。あとは中心から外へ、渦を巻くように、湯面を切らさない程度のペースで。2分30秒で落としきる想定です。
湯温は91℃を基準に。この豆は苦味がほとんどないタイプなので、温度を上げすぎると酸味だけが立ってバランスが崩れます。逆に低くしすぎると、せっかくの甘さが出きらない。91℃前後の細い幅で合わせてみてください。
淹れたてで飲みきらず、少し冷ましてからもう一口。この豆はその手間に応えてくれます。
合わせたい食べ物と、飲む時間

ハチミツのような甘さ、柑橘の明るい酸味、フローラルな余韻。この三つが輪郭なので、合わせる相手も軽やかなものが向きます。
ひとつめは柑橘系の焼き菓子。レモンケーキやオレンジピール入りのパウンドケーキのように、カップの酸味と同じ方向のものは素直に重なります。ふたつめはフルーツそのもの。白桃やマスカット、洋梨あたり。トロピカルフルーツを思わせる中盤の印象と、よく合います。みっつめはプレーンなスコーンやシンプルな食パン。味の少ないものを合わせると、コーヒー側の甘さと香りがかえってはっきりします。
重たい焼き菓子や濃厚なチーズケーキは、この豆の透明感を押し流してしまうので避けたいところ。飲む時間は、午後がいちばん似合うと思います。食後の一杯、あるいは休憩に一人で飲む時間。アイスにしても酸味と甘さが崩れにくいので、夏の午後にも向きます。
他の銘柄とどう違うか|飲み比べで見える立ち位置
グラナディージャがどのあたりに立っている豆なのかは、他の銘柄と並べるとはっきりします。
ひとつはエチオピア アリーチャ ナチュラル|イルガチェフェのブルーベリー感を楽しむ。こちらはブルーベリーを思わせる華やかさそのものが主役で、香りの強さで飲ませる豆です。グラナディージャの主役は甘さとバランスのほう。酸味はどちらも明るい側ですが、アリーチャが果実感の強い酸なのに対し、グラナディージャは柑橘寄りでクリーン。甘さはグラナディージャがハチミツ系、アリーチャは果実の甘さです。
もうひとつはブラジル 山口農園|ブルボン種ナチュラルが生むナッツとチョコの甘さ。酸味を控えめにした王道タイプで、キャラメルやナッツの香ばしさが中心です。グラナディージャはほどよい酸味がある側で、方向がはっきり違います。コクは山口農園のほうが丸く、グラナディージャは軽やかで澄んだ質感。毎日の定番を探すなら山口農園、その日の一杯に華やぎがほしいならグラナディージャ、という選び方になります。
逆に言えば、苦味やコクのある重たいコーヒーを求めている方、酸味が苦手な方には向きません。この豆は苦味がほとんどなく、甘さと明るい酸で組み立てられているからです。深煎りの厚みを探している日には、別の豆を手に取ってください。
どれが自分に合うか迷ったら、100gずつ3種を選べるお試しパックから始めるのが早道です。なお、こちらはお一人様2回までのご購入とさせていただいています。
よくある質問
Q. グラナディージャはどんな人に向いていますか? どんな人には向きませんか?
砂糖を入れずに甘さを感じたい方、明るくクリーンな酸味が好きな方に向いています。苦味がほとんどないので、コーヒーを飲み始めたばかりの方にも入りやすいタイプです。一方で、深煎りの苦味やどっしりしたコクを求める方には物足りなく感じられるはず。酸味そのものが苦手な方にも、あまりおすすめしません。
Q. どんな品種・精製方法のコーヒーですか?
品種はカトゥアイ、精製はイエローハニーです。カトゥアイは甘みと酸味のバランスに優れた品種で、そこにイエローハニー特有の透明感が重なります。ハニープロセスにはイエロー・レッド・ブラックといった段階があり、粘液質を残す量が多くなるほど甘みとボディが濃くなっていきます。イエローは最もクリーンな側です。
Q. おすすめの淹れ方は?
ペーパードリップなら、中挽き・湯温91℃で、豆15gに湯225ml。蒸らし30秒を挟んで合計2分30秒が目安です。少し冷ましてから飲むと甘さがはっきりするので、淹れたてを急いで飲みきらないほうが楽しめます。アイスにしても味が崩れにくい豆です。
Q. 200gでどのくらい飲めますか?
1杯あたり豆15gで淹れる計算なら、200gでおよそ13杯分。1日1杯のペースなら、2週間ほどのおつきあいになります。
NOVOLD COFFEE ROASTERSの強みは、性質の異なる二台の焙煎機を豆ごとに使い分ける「温故知新」の哲学にあります。
ドイツ製の Probat UG22n が受け持つのは、深く焼き込んだ豆の厚みのある味わい。
最新鋭 Loring S35 Kestrel は、精密な熱風制御で焙煎ムラを抑え、煙の影響を排した焙煎を行う設計です。
新旧二機を三代目・櫻井健司が焼き分け、浅煎りから深煎りまで、それぞれの豆が持つ最良の表情を引き出します。




