同じ農園、同じ品種の豆でも、精製方法が変わればカップの中は別世界。コーヒーの奥深さを語るうえで、精製方法の存在を避けて通ることはできません。ナチュラル、ウォッシュド、ハニー、スマトラ式、そして近年注目のアナエロビック。それぞれがどのような工程を経て、どんな味わいを生み出すのか。NOVOLD COFFEE ROASTERSの6銘柄を実例に、コーヒーの精製方法を一気に解説します。
精製方法がコーヒーの味を半分決める

コーヒーチェリーから生豆を取り出す工程——これが「精製」です。赤く熟したチェリーの中には、外皮、果肉、粘液質(ミューシレージ)、パーチメント(内果皮)、そして私たちが焙煎して飲むことになる種子(生豆)が入っています。この外側の層をどのように除去し、どのように乾燥させるか。その違いが、味を劇的に変えてしまう。
品種が豆の「素質」を決め、テロワール(産地の環境)が「育ち」を決めるなら、精製方法は「仕上げ」を決める要素。同じブルボン種でも、ナチュラルで仕上げればチョコレートの甘みが前面に出て、ウォッシュドなら酸味の明るさが際立つ。精製方法を知ることは、自分好みのコーヒーを見つけるための最も実用的な知識かもしれません。
ナチュラル — 果実の甘みを閉じ込めるドライプロセス

ナチュラル精製は、コーヒーチェリーの果肉をつけたまま天日で乾燥させる方法。最も古く、最もシンプルな精製法です。果肉に含まれる糖分やフルーツの風味成分が、乾燥の過程でゆっくりと豆に浸透していく。結果として、フルーティーで甘みの強いコーヒーに仕上がります。
NOVOLD COFFEE ROASTERSでナチュラル精製を採用しているのは、ブラジル山口農園とエチオピア アリーチャ村。山口農園は、アーモンドやヘーゼルナッツのナッツ感と、ミルクチョコレートの甘みが調和した穏やかな味わい。味覚チャートは甘味4・香り3・コク2・酸味2・苦味2。一方、アリーチャ村は、ブルーベリーやラズベリーの爆発的なフルーツ感に、赤ワインのような重厚さとジャスミンのフローラル香が加わる。酸味4・甘味4・香り4。同じナチュラル精製でも、品種とテロワールの違いでこれほど味が変わる好例です。
ウォッシュド — クリーンで明るい水洗式

ウォッシュド(水洗式)精製は、果肉除去→発酵→水洗い→乾燥という工程を経る精製方法。果肉と粘液質を水できれいに洗い流すため、豆本来の風味だけが残る「クリーンカップ」が最大の特徴です。
NOVOLD COFFEE ROASTERSのグアテマラ エルインヘルト農園がこの方法を採用。名門農園では、山からの湧き水を利用して60〜72時間の長時間発酵を行い、極めてクリーンで明るい酸味を実現しています。味覚チャートは、コク3・甘味3・香り3・酸味2・苦味2。ストロベリーのような果実感と、ワインを思わせる気品あるアロマ。ナチュラルのような濃厚な甘みはないものの、品種とテロワールの個性がダイレクトに伝わる透明感は、ウォッシュドならでは。余韻にはナチュラルのような甘味が重なり合い、複雑で上品な味わいを生み出しています。
ハニー — ナチュラルとウォッシュドの良いとこ取り

ハニープロセスは、果肉を除去したあと、粘液質(ミューシレージ)を残したまま乾燥させる方法。ハチミツのようにベタベタした粘液質の質感が名前の由来で、蜂蜜を使う精製ではありません。残す粘液質の量によって、イエロー(少なめ)、レッド、ブラック(多め)に分類されます。
NOVOLD COFFEE ROASTERSのコスタリカ グラナディージャ農園は、イエローハニーを採用。2011年カップオブエクセレンス優勝のマイクロミルが、標高1,850〜1,950mの高地で栽培したカトゥアイ種を丁寧に仕上げています。味覚チャートは、甘味3・香り3・酸味2・コク2・苦味1。ウォッシュドのクリーンさに、粘液質由来のほのかな甘みが加わった絶妙なバランス。ハチミツのような甘味とレモンやオレンジの明るい酸味が共存し、ジャスミンを連想させるフローラルな余韻が長く続きます。
スマトラ式 — インドネシア独自の重厚な味わい

スマトラ式(Wet-hulling)は、インドネシア・スマトラ島で独自に発展した精製方法。年間を通じて降水量が多いスマトラ島では、天日乾燥に時間がかかりすぎるため、パーチメントの状態で含水率が高いまま脱穀するという独特の手法が生まれました。
この方法で処理された豆は、生豆が独特の深い緑色を帯び、他の精製方法では生まれないアーシーな風味を持ちます。湿った土や森を連想させるアーシー感、クローブやナツメグのスパイシーなアクセント、ダークチョコレートの深い甘み。NOVOLD COFFEE ROASTERSのマンデリン エスペシャルは、リントンニフタ、パランギナン地区の厳選農家から直接買い付け、選別を徹底することで「マンデリンの理想形」を実現しています。味覚チャートは、コク4・苦味3・香り3・甘味2・酸味1。他のどの精製方法にも似ていない、マンデリンだけの唯一無二の個性です。
アナエロビック — 精製の最前線

アナエロビック(嫌気性発酵)は、酸素を遮断した密閉環境で発酵を行う最新の精製手法。ワイン醸造の知恵をコーヒーに応用したこの方法は、スペシャルティコーヒーの世界で最もホットなトレンドのひとつです。密閉タンク内で天然酵母が嫌気的条件下で活動し、通常の発酵では生まれない有機酸やエステル類を生成。ワインのような複雑な発酵フレーバーや、鮮烈なフルーツ感がコーヒーに加わります。
NOVOLD COFFEE ROASTERSの「ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル」は、嫌気性発酵後にナチュラル精製(果肉付き天日乾燥)を行うハイブリッド手法。天然酵母を活用した独自の製法により、チェリーやストロベリーの鮮やかな赤系果実フレーバーが溢れ出します。味覚チャートは、酸味4・香り4・甘味3・コク1・苦味1。温度変化で味の表情がくるくると変わり、飲むたびに新しい発見がある。Loring焙煎機のFlavor-Lock技術が、繊細な発酵フレーバーをクリーンに守り、カップへと届けています。
よくある質問

Q. 精製方法は自分で選べる?
NOVOLD COFFEE ROASTERSの各銘柄には精製方法が明記されているので、好みに合わせて選べます。フルーティーな甘みが好きならナチュラル(山口農園、アリーチャ村)、クリーンで明るい味なら ウォッシュド(エルインヘルト)、甘みとクリーンさのバランスならハニー(グラナディージャ)、重厚なコクならスマトラ式(マンデリン)、衝撃的な新体験ならアナエロビック(フルッタ)。自分の好みの精製方法を見つけるのが、コーヒー選びの楽しさです。
Q. どの精製方法が一番美味しい?
好みの問題であり、優劣はありません。それぞれの精製方法が、豆の異なる側面を引き出しています。甘みを求めるならナチュラル、透明感を求めるならウォッシュド、バランスを求めるならハニー、個性を求めるならスマトラ式やアナエロビック。すべてを飲み比べてみることで、自分の「好きな精製方法」が見つかるでしょう。
Q. 精製方法はパッケージに書いてある?
スペシャルティコーヒーの場合、ほとんどの豆で精製方法が明記されています。NOVOLD COFFEE ROASTERSの豆にも、産地・品種とともに精製方法が記載されているので、購入時に確認してみてください。