コーヒーの「テロワール」とは — 土壌・気候・標高が一杯の味を決める

NOVOLD COFFEE ROASTERSのふるいに入った焙煎豆のマクロ撮影

ワイン好きなら「テロワール」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。同じブドウ品種でも、育った土地が違えば味はまるで別物になる—— あの概念です。
実は、コーヒーにもテロワールは存在します。同じブルボン種でも、ブラジルの台地で育ったものとグアテマラの火山性斜面で育ったものでは、カップに注いだときの味わいが全く異なる。土壌、気候、標高—— 目に見えない条件の積み重ねが、一杯のコーヒーの個性を決めているのです。

 

ワインだけではない、コーヒーにもテロワールがある

テロワールはフランス語で「土地」を意味する言葉。ワインの世界では、ブドウが育つ土壌の成分、気候、地形、水はけ、さらにはその土地の伝統的な栽培法までを含む概念として定着しています。ブルゴーニュのピノ・ノワールとカリフォルニアのピノ・ノワールが味わいにおいて別物であるように、コーヒーもまた土地の個性を映す鏡なのです。

標高850mのブラジルで育ったブルボン種からは、ナッツとチョコレートの甘い風味が生まれる。一方、標高1,800mのエチオピアで育った原種からは、ブルーベリーやジャスミンの鮮烈なアロマが立ち上る。同じ「コーヒー」という植物でありながら、まるで別の飲み物のよう。この違いを生み出しているのが、テロワールの力です。

 

・標高 — 高ければ高いほど酸味と甘みが増す理由

コーヒーのテロワールを語るうえで、最も影響力が大きいとされるのが標高です。高標高で育つコーヒーは、昼夜の気温差が大きくなり、日中は太陽の光を浴びて光合成が活発に行われ、糖分が生成される。しかし夜間に気温がぐっと下がると、植物の代謝が鈍り、日中につくった糖分が消費されにくくなる。結果として、チェリーの中に糖度と有機酸がどんどん蓄積されていくのです。

NOVOLD COFFEE ROASTERSの取扱い銘柄を標高で並べてみると、その影響は明らか。ブラジル山口農園が850〜1,200m、マンデリン エスペシャルが1,300〜1,500m、グアテマラ エルインヘルトが1,500〜2,000m、コスタリカ グラナディージャが1,850〜1,950m、エチオピア アリーチャ村が1,800〜2,200m。標高が上がるにつれて、甘みと酸味の鮮やかさが増していく傾向を、味覚チャートの数値からも読み取ることができます。

 

・土壌 — 火山性か、砂質か、粘土質か

足元の土が何でできているかは、コーヒーの味に直結します。グアテマラ・ウエウエテナンゴのエルインヘルト農園が位置するのは、火山性土壌の豊かな地。火山灰由来のミネラルが根に豊富な栄養を届け、複雑なフレーバーの形成に寄与しています。ストロベリーのような果実感やワインを思わせるアロマは、この火山性土壌の恩恵です。

ブラジル・セラード地域の山口農園は、広大な高原台地に広がる比較的均質な土壌。過度にミネラルが突出しない環境が、穏やかで甘みの豊かなフレーバーを育みます。インドネシア・スマトラ島のマンデリン エスペシャルの産地は、肥沃な火山灰土壌。この土が生む力強いアーシー感は、他の産地では再現できないマンデリン独自の個性です。土壌の違いは、カップの中で確かに「味」として現れます。

 

・気候と降水量 — 雨季と乾季のリズムが精製を決める

気候、特に降水量のパターンは、コーヒーの精製方法の選択にも大きな影響を与えます。ブラジル・セラードのように乾季がはっきりしている地域では、天日乾燥がしやすいためナチュラル精製が最適。山口農園がナチュラル精製にこだわる背景には、この気候条件が味方しています。

一方で、インドネシア・スマトラ島のように年間を通じて降水量が多い地域では、天日乾燥に時間がかかりすぎるため、独自の「スマトラ式(Wet-hulling)」が発達しました。マンデリン エスペシャルのあのアーシーな風味は、多雨環境への適応から生まれた精製方法の副産物でもあるのです。グアテマラのエルインヘルト農園では、山からの豊富な湧き水がウォッシュド精製を可能にし、クリーンで明るい酸味を生み出しています。気候が精製を決め、精製が味を決める—— テロワールの影響は、畑の外にまで及んでいます。

 

NCR 6銘柄 テロワール比較マップ

NOVOLD COFFEE ROASTERSの6銘柄を、テロワールの視点で整理してみましょう。

ブラジル山口農園
ブラジル 山口農園
標高850〜1,200m、セラード台地、ナチュラル精製。甘味4・香り3・コク2・酸味2・苦味2。ナッツとチョコレートの穏やかな甘み。ブラジル フルッタ アナエロビック——標高850〜1,200m(1,080m)、同じくセラード地域だが嫌気性発酵後ナチュラル精製。酸味4・香り4・甘味3・コク1・苦味1。同じ産地でも精製で激変するテロワール表現の好例です。

コスタリカ グラナディージャ
コスタリカ グラナディージャ農園
標高1,850〜1,950m、タラス高地、イエローハニー。甘味3・香り3・酸味2・コク2・苦味1。高標高と精製の透明感。グアテマラ エルインヘルト——標高1,500〜2,000m、火山性土壌、ウォッシュド。コク3・甘味3・香り3・酸味2・苦味2。バランスの品格。

エチオピア アリーチャ村

標高1,800〜2,200m、ガーデンコーヒー、ナチュラル。酸味4・甘味4・香り4・コク2・苦味1。最高標高が生む圧倒的アロマ。マンデリン エスペシャル——標高1,300〜1,500m、スマトラ火山灰土壌、スマトラ式。コク4・苦味3・香り3・甘味2・酸味1。アーシーな重厚感。テロワールの違いが、味覚チャートの違いとして明確に表れています。

 

よくある質問

Q. テロワールは焙煎で消えない?

消えません。ただし、焙煎によってテロワールの表現は変わります。浅煎りではテロワールの個性がよりダイレクトに表れ、深煎りでは焙煎由来の風味が加わります。NOVOLD COFFEE ROASTERSでは、Loring焙煎機のFlavor-Lock技術やProbatの鋳鉄ドラムなど、それぞれの豆のテロワールを最大限に活かす焙煎を行っています。

Q. 同じ農園でも年によって味は変わる?

変わります。ワインに「ヴィンテージ」があるように、コーヒーも年ごとの気候条件によって味わいに微妙な変化が生じます。雨量、気温、日照時間—— その年の自然条件がそのまま味に反映されるのは、テロワールが生きている証拠。毎年同じ農園の豆を追いかけることで、そうした微細な変化を楽しむのも通の楽しみ方です。

Q. テロワールを感じるおすすめの淹れ方は?

テロワールの個性を最もダイレクトに感じたいなら、ペーパードリップで丁寧に淹れるのがおすすめ。湯温は少し低めの85〜90℃で、ゆっくりと注ぐ。ミルクや砂糖は加えず、ブラックで味わうことで、産地ごとの酸味、甘み、ボディ、アロマの違いがクリアに感じ取れるはずです。