ワインのようなコーヒーの秘密 — アナエロビック・ナチュラルが生む未知の風味体験

NOVOLD COFFEE ROASTERSの焙煎士がProbat焙煎機の温度表示を確認

「これ、本当にコーヒーなの?」——初めてアナエロビック・ナチュラルのコーヒーを口にした人の多くが、思わずそう呟きます。チェリーやストロベリーの鮮やかな果実香。グラスの中で揺れるワインのような芳醇さ。温度が下がるにつれて次々と表情を変える、万華鏡のようなフレーバー。コーヒーという飲み物に対する固定概念が、一杯で覆される瞬間。その衝撃を、まだ体験していないとしたら——ぜひこの先を読み進めてみてください。

 

「これ、本当にコーヒー?」ワインを連想させる一杯との出会い

コーヒーの味わいといえば、苦味やコク、あるいはナッツやチョコレートの風味を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ところが、目の前のカップから立ち上るのはチェリーとストロベリーの華やかなアロマ。口に含んだ瞬間、舌の上で弾けるのはフルーツのジューシーな甘酸っぱさ。赤ワインを連想させるような複雑な奥行き。飲み終わったあとも、甘い果実の余韻がいつまでも漂い続ける。

この体験をもたらすのが、嫌気性発酵(アナエロビック)とナチュラル精製を組み合わせた、スペシャルティコーヒーの最前線ともいえる精製方法です。ワイン醸造の知恵をコーヒーに応用することで、従来の常識では考えられなかった味の領域が開拓されました。

 

嫌気性発酵(アナエロビック)とは — ワイン醸造の知恵をコーヒーに

嫌気性発酵とは、酸素を遮断した密閉環境のなかで微生物による発酵を進める技術です。ワインの世界では古くから知られたこの手法が、コーヒーの精製に応用されるようになったのはごく最近のこと。

通常の発酵は空気中の酸素がある状態(好気性)で行われます。対して嫌気性発酵では、密閉タンクの中で酸素を排除し、特定の微生物だけが活動できる環境をつくり出す。この条件下では、好気性発酵とは異なる代謝経路が活性化し、通常は生まれない有機酸やエステル類が生成されます。結果として、ワインを思わせる複雑な発酵フレーバーや、鮮やかなフルーツ感がコーヒーに宿るのです。

ワインの醸造士が樽やタンクの環境を精密に管理するように、コーヒーの生産者も温度・時間・pH値を厳密にコントロールしながら発酵を進めていきます。まさに、科学とクラフトマンシップの融合。

 

ナチュラル精製×アナエロビック — 果実味の二重奏

アナエロビック発酵だけでも十分にユニークな風味が生まれますが、そこにナチュラル精製を掛け合わせると、フレーバーの複雑さはさらに増幅します。

ナチュラル精製とは、コーヒーチェリーの果肉をつけたまま天日で乾燥させる方法。果肉に含まれる糖分やフルーツの風味成分が、乾燥の過程で豆に浸透していきます。ここに嫌気性発酵をプラスするとどうなるか。密閉環境での発酵で生まれた独特のエステル類や有機酸が、ナチュラル精製の乾燥段階でさらに果肉の甘みと溶け合う。いわば、果実味の二重奏。通常のナチュラル精製よりもさらに鮮やかで、多層的なフルーツ感が実現するのです。

ただし、この精製方法は非常に繊細で手間がかかります。発酵の温度や時間を少しでも誤れば、不快な発酵臭が生じるリスクも。だからこそ、プロの生産者による精密な管理が不可欠であり、成功したときの風味の素晴らしさは格別なものになります。

 

ブラジル フルッタ アナエロビック — チェリーとストロベリーの鮮やかな世界

NOVOLD COFFEE ROASTERSが取り扱う「ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル」は、まさにこの精製方法の魅力を体現した一杯。ミナスジェライス州セラード地域で、天然酵母を活用した独自の製法により生み出されたブルボン種のコーヒーです。

標高850〜1,200m(CSVデータでは1,080m)のセラード高原で育てられたチェリーを、嫌気性発酵にかけたあとナチュラル精製で仕上げる。この工程を経た豆からは、チェリーやストロベリーのような鮮やかな赤系果実の風味が溢れ出します。わずかにワインを感じさせる複雑な発酵感と、柔らかい酸味がアクセント。温度が下がるにつれて、さまざまなフルーツの表情が顔を覗かせ、ミディアムからフルボディの飲み応えを楽しめます。

味覚チャートは、酸味4・香り4・甘味3・コク1・苦味1。苦味がほとんどなく、フルーツと香りが主役のプロファイル。コーヒーの概念を一杯で塗り替えてくれる存在です。

 

Loring焙煎がアナエロビックのピュアな発酵感を守る

せっかく生産者が精密に管理した嫌気性発酵のフレーバーも、焙煎の段階で煙に汚染されてしまっては台無しです。NOVOLD COFFEE ROASTERSでは、このフルッタ アナエロビックをアメリカ・Loring社のS35 Kestrelで焙煎しています。四国地方で唯一導入されているこの最新鋭機は、特許技術「Flavor-Lock Roast Process」により、単一バーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う仕組み。

煙の影響を極限まで排除できるため、豆本来のクリーンで繊細な味わいを損なうことなく焙煎できます。アナエロビック精製で生まれた繊細な発酵香、チェリーやストロベリーのフレーバー、ワインのような奥行き——それらをピュアなまま、カップへと届ける。精密に制御された対流式の熱風循環システムが、豆一粒一粒のポテンシャルを最大化させるのです。タッチスクリーンによる0.1℃、1秒単位のPID制御は、一度確立した最高のレシピを何度でも忠実に再現することを可能にしています。

 

よくある質問

Q. アナエロビックは普通のコーヒーとそんなに違う?

はっきり言って、別の飲み物かと思うほど違います。通常のナチュラル精製でもフルーティーさは出ますが、アナエロビックの場合はワインのような発酵感や、鮮烈なベリー系フレーバーが加わります。コーヒーを長年飲み慣れた方ほど、その違いに驚かれることが多い印象です。

Q. ワイン好きにおすすめ?

非常にお勧めです。ワインのような複雑な発酵香や果実味が好きな方には、まさに刺さる味わい。実際に「ワインみたい」とおっしゃるお客さまも少なくありません。赤ワインの豊かな果実感が好きな方には、ぜひ一度試してほしい一杯です。

Q. 発酵臭が強すぎない?

品質の高いアナエロビック精製では、不快な発酵臭はありません。天然酵母の活動が精密に管理され、さらにLoring焙煎機のFlavor-Lock技術でクリーンに仕上げているため、感じられるのはあくまで「心地よい発酵フレーバー」です。チーズやワインで言えば「熟成の旨味」に近い感覚で、嫌な臭みとはまったく異なります。