焙煎機のPID制御とは|0.1℃精度で再現性を支える最新焙煎技術

焙煎機のPID制御とは|0.1℃精度で再現性を支える最新焙煎技術

「前回買ったときと、なんだか味が違う気がする」—— コーヒー豆の通販を利用する方なら、一度はそんな経験があるかもしれません。同じ産地、同じ品種、同じ焙煎度のはずなのに、ロットが変わると微妙にニュアンスが異なる。その原因の一つが、焙煎の「再現性」です。

NOVOLD COFFEE ROASTERSが導入しているLoring S35 Kestrelには、0.1℃・1秒単位で温度を制御するPID制御が搭載されています。この技術が、毎回同じ美味しさを届けるためにどう機能しているのか。焙煎の安定品質を支える技術の裏側を見ていきましょう。

 

「前回と味が違う」を防ぐ焙煎の再現性という課題

コーヒーの焙煎は、温度と時間の精密なコントロールによって成り立っています。同じ豆を同じように焙煎しているつもりでも、気温や湿度の変化、投入量のわずかな差、ガス圧の微妙なズレ—— こうした要因が積み重なると、仕上がりの味は変わってしまいます。

特にアナログ焙煎では、焙煎士の経験と感覚が頼り。それは「一期一会の味」を生む魅力でもありますが、同時に「毎回まったく同じ味を再現する」ことの難しさでもあります。趣味として楽しむなら個性になる揺らぎも、200店以上のプロの飲食店に豆を届けるロースターにとっては、品質管理上の重要課題。

再現性とは、「昨日と同じ美味しさを、今日も、明日も届ける力」のことです。

 

PID制御とは — 0.1℃単位の温度管理が生む安定品質

PID制御とは、Proportional(比例)、Integral(積分)、Derivative(微分)の頭文字をとった制御方式。目標温度と現在温度の差を検知し、三つの要素を組み合わせて最適な出力を算出する仕組みです。

少し難しく聞こえますが、本質はシンプル。「今の温度が目標より高いか低いか」「そのズレがどれくらい続いているか」「ズレが広がりつつあるか縮まりつつあるか」——この三つの情報をリアルタイムで計算し、火力を自動調整するのがPID制御です。

Loring S35のタッチスクリーンでは、この制御を0.1℃・1秒単位で実行できます。人間の感覚では捉えきれない微細な温度変化にも即座に対応し、焙煎中の温度カーブを設計通りに維持する。結果として、ロットごとの味のブレが極限まで抑えられるのです。

 

一度見つけた最高の焙煎プロファイルを何度でも

PID制御の真価は、再現性にあります。

焙煎士が試行錯誤を重ねて見つけた「この豆の最高の焼き方」——温度の上昇カーブ、ハゼのタイミング、排気の調整、トータルの焙煎時間。そのすべてを焙煎プロファイルとして保存し、次回以降も忠実に再現できる。

たとえばコスタリカ グラナディージャ農園の豆。タラスの標高1,850〜1,950mで栽培されたカトゥアイ種のイエローハニー精製。ハチミツのような甘味とレモンやオレンジの明るい酸味、ジャスミンのようなフローラルな余韻——これらの繊細な味わいは、焙煎のわずかなズレでバランスが崩れてしまいます。

PID制御があれば、一度確立した最高のレシピを何度でも忠実に再現可能。昨日買った豆と同じ味わいが、今日注文した豆にも、来月届く豆にも宿っている。その安心感は、日常的にコーヒーを楽しむ方にとって何よりの価値ではないでしょうか。

 

デジタル制御とアナログ感覚 — NCRが両方を持つ意味

ここで一つ、大切な視点を加えたいと思います。PID制御による精密な再現性は、Loring S35の大きな強み。しかしNCRには、もう一台の焙煎機があります。1971年製のProbat UG22nです。

Probatにはデジタル制御は一切ありません。焙煎士が五感を駆使して、手動でガス圧やダンパーを調整するアナログな工程。音を聴き、煙の色を見極め、豆の香りを嗅ぎ分ける——機械には出せない温かみが、そこから生まれます。

NCRが二つの焙煎機を使い分ける意味は、まさにここにあります。再現性と手仕事の温かみ。デジタルの精密さとアナログの感性。どちらかに偏るのではなく、豆の個性に合わせて最適な焙煎を選べる。

三代目代表の櫻井健司氏は、コーヒーインストラクター1級やアドバンスドコーヒーマイスター、Jr.スペシャルティコーヒーカッパーの資格を持つ専門家。その知識と経験が、「この豆はLoringのPID制御で精密に」「この豆はProbatの五感で丁寧に」という判断を可能にしているのです。

1932年創業から93年。伝統を守りつつ新しい技術も取り入れる——ブランド名「NOVOLD」(ポルトガル語の「NOVO=新しい」と英語の「OLD=古い」の造語)が体現するのは、まさにこの二刀流の姿勢です。

 

安定した品質のコーヒーを選ぶなら

NOVOLD COFFEE ROASTERSのコスタリカ産コーヒー豆パッケージと店内カウンター

「通販で毎回同じ味を楽しみたい」——。 その願いに応えるのが、PID制御による精密焙煎と工場直送の組み合わせです。

NCRのLoring焙煎銘柄は、0.1℃単位のプロファイル管理のもとで焙煎され、工場から直接発送されます。中間業者を介さないため、焙煎からお届けまでのリードタイムが短く、鮮度も安定。

エチオピア アリーチャ村ナチュラルのブルーベリーやラズベリーを思わせるフルーティー感も、ブラジル フルッタ アナエロビックのワインのような発酵感も、PID制御が守る再現性のもとで、毎回同じクオリティでお届けします。

朝食のルーティンに、仕事の合間のリフレッシュに。「いつもの味」があることの安心感を、ぜひ体感してみてください。

 

よくある質問

Q.  手焙煎とPID制御、どちらが美味しいのですか?

どちらが優れているという話ではなく、それぞれに異なる魅力があります。手焙煎(アナログ焙煎)は、焙煎士の感覚と経験が生む唯一無二の味わい。PID制御は、最高の味を安定して再現する精密さ。NCRでは、豆の特性に応じて両方を使い分けています。味の方向性と品質管理のバランスで最適な選択をすることが、プロの焙煎士の仕事です。

Q.  家庭用焙煎機にもPID制御はありますか?

近年は一部の高機能モデルにPID温度制御を搭載した家庭用焙煎機も登場しています。ただし、Loring S35のような業務用機の0.1℃・1秒単位の精度とプロファイル保存機能を家庭用で完全に再現するのは難しいのが現状です。安定した品質を求めるなら、信頼できるロースターの豆を選ぶのが確実な方法です。

Q.  再現性が高いと、かえってつまらなくなりませんか?

面白い視点ですね。確かに「毎回違う味が楽しみ」という方もいます。しかし再現性とは、「変化を排除する」ことではなく「意図しないブレを防ぐ」こと。NCRでは、季節ごとのロットの変化や新しい産地の豆の導入など、計画的な味の変化は常に追求しています。再現性は「今回のロットの最高の味を、最後の一粒まで維持する」ための技術なのです。