「サードウェーブコーヒー」という言葉が、日本でも広く知られるようになって久しくなりました。浅煎りのシングルオリジン、産地や品種への注目、そしてバリスタのクラフトマンシップ—— サードウェーブが、私たちのコーヒーの楽しみ方を大きく変えたことは間違いありません。
では、その先にあるのは何か。「フォースウェーブ」という言葉がささやかれる今、コーヒー文化はどこへ向かおうとしているのか。そして、93年の歴史を持つNOVOLD COFFEE ROASTERSは、そのなかでどんな位置を占めているのか。
コーヒーの「ウェーブ」とは何か

コーヒーの歴史を大きな波(ウェーブ)で捉える見方は、もはや業界の共通言語になっています。ファーストウェーブは19世紀後半〜20世紀半ば。コーヒーが大衆消費財として普及し、インスタントコーヒーの登場で「誰でもどこでも飲める」時代が到来しました。品質よりも手軽さが重視された時代です。
セカンドウェーブは1970年代〜。シアトル系カフェチェーンの台頭に象徴されるこの時代は、「コーヒーをおしゃれに楽しむ」文化を広めました。エスプレッソ、ラテ、フラペチーノ——コーヒーが「体験」として消費されるようになった転換点。
そしてサードウェーブは2000年代〜。「コーヒーはフルーツである」という発想のもと、シングルオリジン、ライトロースト、産地の個性、精製方法への注目が一気に高まりました。消費者が「どこの、誰が、どう作ったコーヒーか」を意識するようになった時代。スペシャルティコーヒーの概念が広く浸透したのも、この波の功績です。
サードウェーブの功績と限界
サードウェーブが私たちにもたらしたものは計り知れません。「産地」「品種」「精製方法」といった情報がパッケージに記載されるようになり、コーヒーを選ぶ基準が「味」から「ストーリー」へと広がりました。生産者への正当な対価、トレーサビリティの確保、品質評価の標準化—— これらはすべてサードウェーブの功績です。
ただし、サードウェーブにも限界がありました。浅煎り偏重の風潮は、「深煎り=古い」「ブレンド=質が低い」という短絡的な図式を生みかねない側面も。「酸味のある浅煎りのシングルオリジンこそ正義」という画一的な価値観は、コーヒーの多様性を狭めてしまうリスクをはらんでいたのです。
深煎りが好きな人、ブレンドの妙を楽しみたい人、伝統的な喫茶店の一杯に心を落ち着かせたい人——そうした多様な嗜好が、ひとつのスタイルに収束されてしまうことへの反動が、次の波を呼び起こします。
フォースウェーブの萌芽 — 多様性と個の追求
フォースウェーブとは何か。実は、まだ明確な定義は存在しません。しかし、その萌芽として見えてきているのは、「画一的なスタイルからの脱却」と「多様性への回帰」です。
浅煎りだけでなく深煎りも。シングルオリジンだけでなくブレンドも。最新鋭の焙煎機だけでなくヴィンテージの機械も。アナエロビックのような最新精製だけでなく、伝統的なナチュラルやウォッシュドも。あらゆるスタイルが等しく尊重され、消費者一人ひとりが自分の好みに合った一杯を自由に選べる世界。フォースウェーブ的な価値観の核心は、「唯一の正解」を押しつけるのではなく、「あなたにとっての最高の一杯」を見つけるプロセスを大切にすることなのかもしれません。
NCRが体現する「伝統×革新」のハイブリッド

NOVOLD COFFEE ROASTERSの姿勢は、このフォースウェーブ的な多様性の象徴とも呼べるものです。1932年(昭和7年)創業、93年の歴史を持つ老舗ロースターでありながら、2017年に新ブランド「NOVOLD」を立ち上げ、最新鋭の焙煎機を導入した。
ロースタリーには、1971年製のヴィンテージ焙煎機Probat UG22nと、2017年製の最新鋭機Loring S35 Kestrelが並んでいます。半熱風式の鋳鉄ドラムが生む重厚なコクと甘み(伝統)。Flavor-Lock技術が引き出すクリーンで繊細な産地個性(革新)。古いものを捨てて新しいものに走るのではなく、伝統の価値を守りながら革新を取り入れる。ブランド名「NOVOLD」——ポルトガル語の「NOVO(新しい)」と英語の「OLD(古い)」を組み合わせた造語が、その哲学をそのまま表しています。
四国地方で唯一のLoring S35 Kestrelを導入しつつ、世界的にも稀少なProbatの黄金期の名機を現役で稼働させ続ける。この二刀流の焙煎スタイルは、サードウェーブの「最新こそ最善」でもなく、伝統への固執でもない。多様性と個性を大切にするフォースウェーブの精神を、焙煎という行為で体現しているのです。
あなたのコーヒーライフは何ウェーブ?

ウェーブの分類は、あくまでコーヒー文化の変遷を大づかみに捉えるための枠組み。実際のコーヒーの楽しみ方に、正解も不正解もありません。深煎りのブレンドをネルドリップで淹れるのが至福の人もいれば、浅煎りのエチオピアをエアロプレスで楽しむのが日課の人もいる。大切なのは、「自分が美味しいと感じる一杯」を見つけること。
NOVOLD COFFEE ROASTERSのラインナップは、まさにその多様な選択肢の縮図。ナッツとチョコの甘いブラジル、ブルーベリーが弾けるエチオピア、重厚なマンデリン、気品のグアテマラ、ワインのようなアナエロビック、クリーンなコスタリカ。どれが「一番」ではなく、どれが「あなたに合う」か。6銘柄を飲み比べることで、自分だけの好みの座標が見つかるはずです。
よくある質問

Q. サードウェーブのコーヒーは酸味が強い?
サードウェーブで広まった浅煎りのシングルオリジンは、確かに酸味が際立つものが多い傾向にあります。ただし、「サードウェーブ=酸味が強い」と一括りにするのは正確ではありません。精製方法や品種、焙煎度合いによって酸味の質と量は大きく変わります。酸味が苦手な方は、ナチュラル精製の豆や中深煎りを選ぶことで、サードウェーブ的な産地の個性を楽しみつつ、穏やかな酸味のコーヒーに出会えるでしょう。
Q. フォースウェーブのカフェはある?
「フォースウェーブ」を明確に掲げるカフェはまだ少ないですが、多様な焙煎スタイルや精製方法を取り入れ、画一的な価値観に縛られないロースターやカフェは確実に増えています。NOVOLD COFFEE ROASTERSのように、ヴィンテージ焙煎機と最新鋭機を共存させるアプローチは、その先駆的な例と言えるかもしれません。
Q. 深煎り派はサードウェーブに合わない?
そんなことはありません。深煎りでもスペシャルティグレードの豆を使えば、雑味のない上質なコクと甘みを楽しめます。NOVOLD COFFEE ROASTERSのマンデリン エスペシャルをProbatで深めに焙煎した味わいは、まさに深煎り派の方にこそ体験してほしい一杯。「サードウェーブ=浅煎りだけ」という時代は、もう過ぎ去りつつあります。