和菓子にコーヒー? その意外な相性の良さ
「和菓子には日本茶」——長い間、この組み合わせが当たり前とされてきました。抹茶に練り切り、煎茶に団子。和の甘味には和の飲み物を。そんな常識を、少しだけ疑ってみませんか。
実は、コーヒーと和菓子の相性は驚くほど良いのです。あんこの穏やかな甘みに、コーヒーのほろ苦さが絶妙なアクセントを加える。抹茶の旨味に勝るとも劣らない複雑な風味が、和菓子の世界をもうひとつ広げてくれる。
考えてみれば、フレンチのデセールにエスプレッソを合わせるように、甘味とコーヒーのペアリングは世界中で楽しまれています。和菓子だけが例外である理由はどこにもない。むしろ、和菓子の繊細な甘さは、上質なスペシャルティコーヒーの風味と出会うことで、これまで感じたことのない新しい表情を見せてくれるのです。
NOVOLD COFFEE ROASTERS(NCR)は、1932年に徳島で創業して以来93年、地域の食文化と共に歩んできた老舗。徳島の和菓子屋のすぐそばで、コーヒーの香りを届け続けてきた歴史があります。和とコーヒー、その出会いを楽しんでみましょう。
あんこ × エチオピアのフローラル

まず試していただきたいのが、あんこを使った和菓子とエチオピア アリーチャ村 ナチュラルの組み合わせ。
イルガチェフェ郡の標高1,800〜2,200mで育ったエチオピア原種は、ジャスミンやオレンジブロッサムのような華やかなフローラル香が際立つ豆。このフローラルな香りが、上品なあんこの甘みに寄り添うように広がるのです。
たとえば、こしあんの水ようかんをひと口。そしてエチオピアをすすると、ジャスミンの余韻が小豆の繊細な風味と混じり合い、口の中に和洋が融合した新しい風景が現れます。ブルーベリーやラズベリーを思わせる赤系果実のフルーティー感が、あんこの甘さにフレッシュな彩りを添えてくれる。
ナチュラルプロセス由来のハチミツに似た濃厚な甘味が後口に残るため、あんこの甘さと喧嘩するのではなく、むしろ自然に溶け合う。酸味4、甘味4、香り4というプロファイルの華やかさが、和菓子の控えめな美しさに花を添えるようなペアリング。おはぎ、どら焼き、最中—— あんこが主役の和菓子なら、まずこの組み合わせを試してみてください。
黒糖・きなこ菓子 × マンデリンのアーシーな深み

わらび餅にきなこをたっぷりまぶして、黒蜜をかける。あるいは、黒糖を使ったかりんとうをポリポリとかじる。こうした「土っぽい」甘味を持つ和菓子には、インドネシア マンデリン エスペシャルがぴたりとハマります。
スマトラ島北部のリントンニフタ、パランギナンで栽培され、スマトラ式で精製されたマンデリン。その最大の特徴は、湿った土や森を連想させるアーシー感。この「大地のような」風味が、黒糖やきなこの持つ素朴で原始的な甘みと共鳴するのです。
クローブやナツメグといったスパイシーな風味が、きなこの香ばしさと絡み合う。ダークチョコレートやブラウンシュガーを思わせるマンデリンの甘味が、黒糖のコクと層を重ねていく。コク5段階中4の重厚なフルボディだからこそ、きなこのどっしりとした風味にも負けません。
黒糖まんじゅう、きなこ団子、くずもち——こうした和菓子の「地味だけど奥深い」味わいを、マンデリンが「そう、これだよ」と肯定してくれるかのよう。意外な組み合わせでありながら、一度試すとこれ以外考えられなくなるはずです。
フルーツ大福 × コスタリカの柑橘系酸味

近年人気のフルーツ大福。いちご大福を筆頭に、みかん大福、ぶどう大福と、果実の甘酸っぱさと白あん・求肥のもっちりした食感を楽しむ新しい和菓子のスタイルです。
このフルーツの甘酸っぱさに合わせたいのが、コスタリカ グラナディージャ農園。タラス地方の標高1,850〜1,950mで育ったカトゥアイ種、イエローハニー精製。レモンやオレンジ、トロピカルフルーツを思わせる明るくクリーンな酸味が、フルーツ大福の果実感と見事にマッチします。
いちご大福をひと口。そしてコスタリカをひと口。いちごの甘酸っぱさに、コーヒーの柑橘系酸味が重なり、口の中に果実園が広がるかのような鮮やかさ。ハチミツのような甘味が白あんのやわらかさと寄り添い、ジャスミンの余韻がフルーティーなフィナーレを演出する。
「対比」ではなく「同調」のペアリング。フルーツ × 果実感のあるコーヒーという組み合わせは、フルーツ大福の魅力をさらに増幅させてくれます。
徳島の和菓子 × 徳島の老舗コーヒー

NCRの母体である有限会社徳島ブラジルコーヒは、1932年(昭和7年)に徳島市大工町で創業しました。創業者の桜井吉朗氏が京都で出会ったアイスコーヒーに感銘を受け、徳島初のコーヒー豆販売店を開いたのが始まり。以来93年、戦時中の困難を乗り越えながら、徳島の喫茶文化と共に歩んできた歴史があります。
徳島もまた、独自の和菓子文化を育んできた土地。阿波和三盆糖に代表される上質な甘味の文化が根付く地域で、93年間コーヒーを焙煎し続けてきたNCR。同じ土地で育まれた和菓子とコーヒーだからこそ、どこか通じ合うものがあるように感じます。
阿波和三盆糖の干菓子にNCRのコーヒーを合わせてみる。和三盆の繊細な甘さと口溶けの良さに、プロバットの鋳鉄ドラムで丁寧に焙煎された豆の重厚な甘みが寄り添う——。地域の伝統と伝統が出会うペアリングは、単なる味の相性を超えた、文化的な深みを感じさせてくれるのではないでしょうか。
よくある質問

Q. 和菓子に合う焙煎度はどのくらいですか?
和菓子の繊細な甘みを活かすなら、中煎り〜中深煎りが相性の良いゾーン。浅煎りすぎると酸味が強く和菓子の甘みとぶつかることがあり、深煎りすぎると苦味が和菓子の繊細さを覆い隠してしまう。NCRの豆は焙煎士が最適な焙煎度合いを見極めているので、そのままの状態で和菓子とのペアリングを楽しんでいただけます。
Q. 抹茶系の和菓子ともコーヒーは合いますか?
抹茶大福や抹茶わらび餅など、抹茶を使った和菓子とコーヒーの組み合わせも十分に楽しめます。抹茶のほろ苦さとコーヒーのほろ苦さが共鳴し、深い味わいの層が生まれる。この場合、ブラジル山口農園のような穏やかな豆を選ぶと、抹茶の風味と喧嘩せず調和しやすいでしょう。
Q. お茶とコーヒーを交互に楽しむのもありですか?
もちろん。和菓子を楽しむ席で、最初は煎茶で始め、途中からコーヒーに切り替える—— そんな自由な楽しみ方も素敵です。異なる飲み物と合わせることで、同じ和菓子でも違った味の側面が見えてきます。「和菓子にはお茶」「和菓子にはコーヒー」という二者択一ではなく、どちらも楽しめるのが和菓子の懐の深さ。固定観念にとらわれず、自分の好みを探ってみてください。