コーヒーの味と標高の関係|1500m以上の高地が美味しい理由とテロワール

コーヒーの味と標高の関係|1500m以上の高地が美味しい理由とテロワール

スペシャルティコーヒーのパッケージに「標高1,800m」や「SHB(Strictly Hard Bean)」と書かれているのを見たことはありませんか。標高の高さをわざわざアピールするのには、ちゃんと理由があるのです。

高地で育ったコーヒーは、なぜ美味しいのか。そして、それは本当に「絶対」なのか。NOVOLD COFFEE ROASTERSの6銘柄を具体例に、標高と味の関係をひも解いていきます。

 

「標高が高い=美味しい」は本当か

スペシャルティコーヒーの世界では、「標高が高い産地の豆は品質が高い」という認識が広く共有されています。これは多くの場合、事実に基づいた傾向です。ただし、「標高が高ければ無条件に美味しい」というわけではありません。

標高850mのブラジルで育ったブルボン種のナチュラルには、アーモンドとミルクチョコレートの穏やかな甘みがあり、多くの人に愛される王道の味わい。標高1,800mのエチオピアで育った原種のナチュラルは、ブルーベリーやジャスミンの鮮烈なアロマに満ちた、衝撃的なフレーバー。どちらが「美味しい」かは、好みの問題。大切なのは、標高が味にどのような影響を与えるかを知り、自分の好みに合った一杯を見つけることです。

 

高標高がコーヒーに与える3つの影響

標高が味に影響するメカニズムは、主に3つの要素から説明できます。

第一に、昼夜の気温差による成熟の遅延と、糖度・酸味の蓄積。高標高では、日中は太陽の光を浴びて光合成が活発に行われますが、夜間に気温がぐっと下がることで代謝が鈍り、日中につくられた糖分が消費されにくくなります。結果として、チェリーの中に糖分と有機酸がじっくりと蓄積。酸味が鮮やかで、甘みの深いコーヒーが育まれるのです。

第二に、豆の密度の高さ。高標高でゆっくり成熟した豆は、細胞壁が緻密で硬くなります。これがいわゆる「ハードビーン」。密度の高い豆は焙煎時に均一に熱が通りやすく、フレーバーがクリアに発現しやすい傾向があります。

第三に、病害虫リスクの低さ。高標高は気温が低く、コーヒーの大敵であるコーヒーベリーボーラーやさび病菌の活動が抑制されます。農薬の使用量を減らせるだけでなく、健全なチェリーが育ちやすい環境。これもまた、品質に寄与する要因です。

 

NCR 6銘柄の標高比較 — 850mから2,200mまで

NOVOLD COFFEE ROASTERSのコーヒー豆パッケージ6種が並ぶラインナップ

NOVOLD COFFEE ROASTERSの取扱い銘柄を、標高の低い順に並べてみましょう。この並びは、味覚チャートの傾向とも興味深い対応を見せます。

ブラジル山口農園(850〜1,200m)——甘味4・香り3・コク2・酸味2・苦味2
最も標高が低いこの銘柄は、酸味が穏やかでナッツとチョコレートの甘みが中心。ブラジル フルッタ アナエロビック(850〜1,200m / 1,080m)——酸味4・香り4・甘味3・コク1・苦味1。同じ標高帯でも、嫌気性発酵という精製の力で酸味と香りが劇的に変化する例。

マンデリン エスペシャル(1,300〜1,500m)——コク4・苦味3・香り3・甘味2・酸味1
スマトラ式精製のアーシーな個性が、標高以上に味を支配する例外的なケース。グアテマラ エルインヘルト(1,500〜2,000m)——コク3・甘味3・香り3・酸味2・苦味2。バランスの取れた気品。標高の上昇とともに酸味と華やかさが増す傾向が見え始めます。

コスタリカ グラナディージャ(1,850〜1,950m)——甘味3・香り3・酸味2・コク2・苦味1
高標高のクリーンな甘みとフローラルな余韻。そしてエチオピア アリーチャ村(1,800〜2,200m)——酸味4・甘味4・香り4・コク2・苦味1。最高標高帯が生む、圧倒的な酸味と香りのアロマティックさ。標高と酸味・香りの関係性を、見事に体現しています。

 

標高だけではない、緯度・品種・精製との掛け算

標高が重要な要因であることは確かですが、それだけで味が決まるわけではありません。ブラジル山口農園は標高850〜1,200mと比較的低い位置にありますが、味覚チャートで甘味4を記録しています。これは、ブルボン種の品種特性とナチュラル精製の甘みが、標高以外の要因として大きく貢献しているから。

マンデリン エスペシャルは標高1,300〜1,500mと中程度ですが、スマトラ式精製の特性がコク4・苦味3という独自のプロファイルを形成しています。標高による酸味の傾向よりも、精製方法の影響が前面に出ているケースです。つまり、コーヒーの味は標高×品種×精製×土壌×気候の掛け算。単一の要因だけでは語り切れない複雑さが、コーヒーの面白さであり、奥深さなのです。

 

標高別のおすすめの楽しみ方

標高帯ごとに、味わいの傾向に合った楽しみ方があります。低〜中標高の豆(ブラジル山口農園、マンデリン エスペシャル)は、コクと甘みが豊かなので、やや高めの湯温(90〜93℃)でしっかり抽出すると、ボディの厚みと甘みが引き立ちます。フレンチプレスとの相性も良好。ミルクを加えてカフェオレにしても、しっかりとした味わいが負けません。

高標高の豆(コスタリカ、グアテマラ、エチオピア)は、酸味と香りを活かすために湯温をやや低め(85〜88℃)に設定。ペーパードリップで丁寧に淹れることで、フローラルな香りやフルーツの酸味がクリアに表れます。アイスコーヒーにすると、高標高豆の鮮やかな酸味がさらに映えるのでぜひ試してみてください。

 

よくある質問

NOVOLD COFFEE ROASTERSのコスタリカ産コーヒー豆パッケージと店内カウンター

Q. 標高はパッケージに書いてある?

スペシャルティコーヒーの場合、多くの豆で標高情報がパッケージや商品説明に記載されています。NOVOLD COFFEE ROASTERSの豆にも産地情報とともに標高が明記されているので、購入時にチェックしてみてください。

Q. 標高が高い豆は高価?

傾向としては、高標高の豆のほうが価格が高くなる場合が多いです。高地での栽培は労力がかかり、収量も限られるため。ただし、価格は標高だけでなく、品種の希少性、精製方法の手間、農園のブランド力など複合的な要因で決まります。標高が低くても希少な精製方法の豆が高価になるケースもあります。

Q. 標高2,000m以上の豆はどこが有名?

エチオピア(イルガチェフェ郡やシダモ地区は2,000m超の産地が多数)、コロンビア(ナリーニョ県など)、ケニア(キリニャガやニエリの高地)、ペルーなどが代表的です。NOVOLD COFFEE ROASTERSのエチオピア アリーチャ村は1,800〜2,200mで、2,000m超の区画も含まれます。