シェードグロウン(日陰栽培)コーヒーのメリット — 環境にも味にも優しい栽培法

NOVOLD COFFEE ROASTERSのカッピングでスプーンですくい取る作業

コーヒーの木は、もともと熱帯雨林の木陰で育つ植物。ところが商業的な大量生産の過程で、日光をたっぷり浴びせて収量を増やす「サングロウン(日向栽培)」が主流になりました。その一方で、自然の木陰のもとでゆっくりと育てる「シェードグロウン(日陰栽培)」を守り続ける産地がある。味にも、環境にも優しいこの栽培法が、スペシャルティコーヒーの世界で再び注目を集めています。

シェードグロウンとサングロウン — 二つの栽培法

密閉したガラスジャーで保管される焙煎コーヒー豆

シェードグロウンとは、背の高い樹木(シェードツリー)の下でコーヒーの木を栽培する方法で、自然の森林に近い環境を保ちながら育てます。対してサングロウンは、シェードツリーを取り除いて直射日光を最大限に浴びせ、収量を優先して栽培する方法です。両者は同じコーヒーノキでも、農園の設計思想が対照的です。

1970年代以降、世界的なコーヒー需要の増大に応えるため、多くの産地でサングロウンへの転換が進みました。直射日光の下で育てると光合成が促進され、収量が大幅に増える。しかし、森を切り開いて太陽にさらされた農園では、土壌の劣化、生態系の破壊、化学肥料や農薬への依存が加速しました。大量生産の効率と引き換えに、失われたものもまた大きかったのです。

シェードグロウンが味を高める科学的理由

産地から届いた生豆の麻袋。ブラジル・グアテマラ・コスタリカ・インドネシアの袋が並ぶ

シェードグロウンのコーヒーが美味しい科学的な理由は、日陰で育つコーヒーチェリーの成熟がゆっくり進み、糖分と有機酸がじっくり蓄積されることにあります。高標高の寒冷地で成熟が遅れて風味が濃縮されるのと同じ原理が、シェードツリーの木陰でも働いており、結果として糖度が高く酸味と甘みのバランスに優れたチェリーが育まれます。

また、シェードツリーの下は日照ストレスが少ないため、コーヒーの木が健やかに育ちやすい。ストレスの少ない環境では欠点豆(未熟豆、過熟豆、虫食い豆など)の発生率が低下し、結果的にカップの品質が安定します。シェードグロウンは収量では劣るものの、一粒あたりの品質で勝る——量より質の栽培法です。

生態系を守る — 鳥、虫、土壌微生物との共生

焙煎した豆の品質を手のひらで確認する様子

シェードグロウンが生態系を守る仕組みは、シェードツリーが小さな森のような環境を作り出し、鳥・昆虫・土壌微生物と共生しながら害虫駆除や土壌保全、温室効果ガスの削減にまで貢献することにあります。農薬に頼らず生態系全体で農園を支える、自然との共生型の栽培法です。

シェードツリーが存在する農園は、小さな森のような生態系を形成します。多様な樹種が鳥類の生息地となり、渡り鳥の中継地点としても機能。鳥や昆虫は自然の害虫駆除の役割を果たし、農薬への依存を減らすことができます。シェードツリーの落葉は天然の堆肥となって土壌を豊かにし、根系は土壌の浸食を防止。さらに、樹木は炭素を固定するため、温室効果ガスの削減にも寄与します。

サングロウンの農園が「コーヒー工場」だとすれば、シェードグロウンの農園は「コーヒーの森」。人間だけでなく、鳥や虫や微生物も含めた多くの生き物が共存する場所。そこから生まれるコーヒーには、生態系の豊かさが味わいとして宿っているのかもしれません。

アリーチャ村のニセバナナ — シェードグロウンの実例

NOVOLD COFFEE ROASTERS(ノボルドコーヒーロースターズ、1932年創業)のエチオピア アリーチャ村ナチュラルは、シェードグロウンの代表的な実例です。イルガチェフェ郡アリーチャ村では、ニセバナナ(エンセーテ)の木がシェードツリーとして機能しています。バナナに似た大きな葉を持つこの植物が、直射日光からコーヒーの木を守り、適度な日陰を提供。

庭先でコーヒーを育てる「ガーデンコーヒー」スタイルで、化学肥料や農薬に頼らない栽培が実践されています。ニセバナナの落葉が土壌を肥やし、多様な植物が共存する環境が自然の害虫駆除を担う。この標高1,800〜2,000mの環境で育ったエチオピア原種のコーヒーは、ブルーベリーやラズベリーの鮮やかな果実感とジャスミンの華やかな香りを持ち、冷めてからの甘みの変化も楽しめる——味覚チャートで酸味4・甘味4・香り4という圧倒的なフレーバーを実現しています。

シェードグロウンのゆっくりとした成熟が、このフレーバーの豊かさの一因であることは疑いありません。環境を守る栽培法が、結果的に最高の味を生み出している。自然への敬意と品質の追求が、矛盾なく両立する好例です。

シェードグロウンのコーヒーを選ぶ意味

シェードグロウンのコーヒーを選ぶ意味は、品質面と環境面の両方にあります。品質面では、ゆっくりとした成熟がもたらす糖度の高さと、ストレスの少ない環境から生まれるクリーンな味わいが、カップの中に確かな違いとして表れます。収量より一粒ごとの品質を優先する、量より質の選択でもあります。

そして、環境面での貢献。シェードグロウンのコーヒーを購入することは、生産地の生態系保全と生産者の持続可能な農業を支援することに直結します。大量消費・大量生産の対極にある、この丁寧な栽培スタイルを支えるのは、最終的には消費者の選択。NOVOLD COFFEE ROASTERSのエチオピア アリーチャ村ナチュラルを選ぶことは、美味しいコーヒーを飲むことであると同時に、エチオピアの小さな村の暮らしと生態系を守ることでもあるのです。

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よくある質問

Q. シェードグロウンは認証マークがある?

バードフレンドリー認証(スミソニアン渡り鳥センター)やレインフォレスト・アライアンス認証など、シェードグロウンに関連する認証は存在します。ただし、認証を取得していなくてもシェードグロウンを実践している農園は多数あります。アリーチャ村のガーデンコーヒーのように、伝統的な栽培スタイルとして自然にシェードグロウンを行っているケースでは、認証の有無よりも栽培の実態が重要です。

Q. 価格は高い?

シェードグロウンのコーヒーは収量が少ないため、サングロウンに比べて価格が高くなる傾向はあります。しかし、スペシャルティコーヒーの価格帯のなかでは突出して高いわけではありません。味の品質と環境への配慮を考慮すれば、むしろ価値のある選択と言えるのではないでしょうか。

Q. 日本で買える?

もちろん買えます。NOVOLD COFFEE ROASTERSのエチオピア アリーチャ村ナチュラルは、通販で全国どこからでも購入可能。焙煎工場から直送されるため、鮮度も万全です。シェードグロウンの味わいを、ぜひご自宅で体験してみてください。

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