カップに顔を近づけた瞬間、ジャスミンの香りがふわりと立ち上る。口に含めば、紅茶を思わせる繊細な口当たりの後に、花束のような余韻が広がる——。浅煎りコーヒーには、深煎りとはまったく異なる美しい世界があります。その扉を、一緒に開けてみませんか。
浅煎りコーヒーの魅力 — 紅茶のような繊細さ

浅煎りコーヒーの魅力は、深煎りでは焙煎の過程で失われがちな繊細なフローラル・フルーティーなアロマが、そのまま豆に残ることです。焙煎度が浅いほど香り成分の分解が進まないため、ジャスミンや紅茶を思わせる透明感のある香りと繊細な酸味が際立つ一杯に仕上がります。
日本のコーヒー文化は長らく深煎りが主流でした。苦味とコクのどっしりした味わいこそが「コーヒーらしさ」だと多くの人が感じてきたはずです。しかし近年、スペシャルティコーヒーの浸透とともに注目されているのが、浅煎りの世界。
浅煎りコーヒーの特徴は、何といっても香りの華やかさ。深煎りでは焙煎の過程で失われてしまう繊細なアロマ成分が、浅煎りではそのまま残ります。フローラル、フルーティー、ティーライク。まるで紅茶やフラワーティーを飲んでいるかのような、透明感のある味わい。
「苦くないコーヒーなんて」と思うかもしれません。しかし一度、花のような香りと繊細な酸味が織りなすハーモニーを体験すると、コーヒーという飲み物の表現力の広さに驚かされるのです。深煎りが油絵なら、浅煎りは水彩画。どちらにもそれぞれの美しさがあります。
フローラルフレーバーとは — ジャスミン、ラベンダー、オレンジブロッサム

フローラルフレーバーとは、コーヒー豆に含まれるリナロール・ゲラニオール・ネロールなどの芳香化合物が生み出す、ジャスミン・ラベンダー・オレンジブロッサムのような花の香りを指します。高標高栽培の豆やエチオピア原種に多く含まれ、浅煎り〜中煎りの低温焙煎で壊れずに残ります。
コーヒーの中に「花の香り」を感じるなんて、にわかには信じがたいかもしれません。けれど、コーヒー豆には数百種類ものアロマ化合物が含まれており、その中にはフローラルな香りを生み出す成分も含まれています。
代表的なのがリナロール。ラベンダーやローズウッドにも含まれる成分で、コーヒーでは甘くフローラルな香りとして感じられます。また、ゲラニオールはバラの香りに関与する化合物。ネロールはオレンジブロッサムの甘い香りの成分です。
これらの化合物は、高標高で栽培された豆やエチオピア原種の遺伝的特性から生まれるもの。そして、浅煎りの低温焙煎でこそ壊されずに残る、繊細な存在です。深煎りの高温では分解されてしまうため、フローラルな香りを楽しむには浅煎り〜中煎りが最適な焙煎度となります。
エチオピア アリーチャ村 — ジャスミンとオレンジブロッサムの余韻

エチオピア アリーチャ ナチュラルは、標高1,800〜2,000mのイルガチェフェ郡アリーチャ村で育つ在来種を、アフリカンベッドでナチュラル精製した中浅煎りの銘柄です。ジャスミンとオレンジブロッサムのフローラル香が最も鮮烈に表現され、味覚チャートの香りスコアは最高値の4を記録します。
NOVOLD COFFEE ROASTERSのラインナップの中で、フローラルフレーバーが最も鮮烈に表現される銘柄がエチオピア アリーチャ村 ナチュラルです。
コーヒー発祥の地エチオピア、イルガチェフェ郡アリーチャ村。標高1,800〜2,000mの高地で、庭先でコーヒーを育てる「ガーデンコーヒー」スタイルが受け継がれている地域。ニセバナナの木をシェードツリーとして、エチオピア原種の豆がゆっくりと時間をかけて育ちます。アフリカンベッドでの丁寧なナチュラル乾燥が、この豆の個性をさらに引き立てるのです。
カップからは、ジャスミンとオレンジブロッサムのようなフローラル香が非常に強く立ち上ります。鮮やかな酸味とともにブルーベリーやラズベリーの赤系果実のフルーティー感が広がり、赤ワインのような重厚な果実味へと変化。そしてナチュラルプロセス由来のハチミツに似た濃厚な甘味が、後口に心地よく残る。
味覚チャートは、酸味4・甘味4・香り4。香りのスコアが最高値「4」を記録する、フローラルコーヒーの真骨頂です。
コスタリカ グラナディージャ農園 — ジャスミンの長い余韻
コスタリカ グラナディージャ農園は、標高1,850〜1,950mのタラス地方で栽培される、ジャスミンを思わせる華やかな余韻が長く続くイエローハニー精製のカトゥアイ種です。2015年カップ・オブ・エクセレンス入賞の実績を持つ、上品でクリーンな酸味が特徴の銘柄です。
もうひとつ、フローラルな世界を楽しめる銘柄がコスタリカ グラナディージャ農園。
タラス地方、標高1,850〜1,950mの高地。昼夜の激しい気温差が高品質なコーヒーを育む最適な環境を形成しています。栽培から水洗処理まで手がけるロスアンヘレス・マイクロミル(カルデロン一家)は、2011年カップ・オブ・エクセレンス優勝コーヒーも生んだ実力派。この豆はカトゥアイ種、精製はイエローハニーです。
この銘柄の特筆すべき点は、ジャスミンを連想させる華やかでフローラルな余韻が長く続くこと。ハチミツのような甘味を土台に、レモンやオレンジ、トロピカルフルーツを思わせる明るくクリーンな酸味が際立ちます。
エチオピアの鮮烈で力強いフローラル感に対して、コスタリカは透明で上品なフローラル感。イエローハニー精製の透明感が、ジャスミンの余韻をより長く、より繊細に引き伸ばしてくれるような印象を受けます。味覚チャートは甘味3・香り3・酸味2・コク2・苦味1。穏やかな構成の中にフローラルな個性がそっと花開く、品のある一杯です。
Loringのクリーン焙煎が花の香りを守る
Loring S35 Kestrelは、単一バーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う特許技術「Flavor-Lock Roast Process」により、煙の付着を防ぎながら焙煎する機械です。フローラルな香り成分は煙や不純物の影響を受けやすいため、このクリーン焙煎が花の香りを守り抜く鍵になります。
フローラルな香りの成分は、とても繊細。焙煎中の煙の付着や不純物の混入があると、せっかくの花のような香りが台無しになってしまいます。
NOVOLD COFFEE ROASTERSのLoring S35 Kestrelは、まさにこの問題を解決するために設計された焙煎機。特許技術「Flavor-Lock Roast Process」により、単一バーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行い、煙の影響を極限まで排除します。
煙がない焙煎環境。それは、豆本来のクリーンで繊細な味わいを、産地特有の個性そのままにカップへ届けるということ。精密に制御された対流式の熱風循環システムが、豆一粒一粒にムラなく熱を供給し、タッチスクリーンによる0.1℃・1秒単位のPID制御が、最高のレシピを忠実に再現します。
フローラルな成分が壊されず、煙に汚されず、豆のポテンシャルがピュアに表現される。国内でも希少なこのS35 Kestrelを導入しているNOVOLD COFFEE ROASTERSだからこそ実現できるクリーン焙煎が、花の香りを守り抜くのです。
よくある質問
フローラルな香りは本当に感じられますか?
感じられます。ただし最初は「言われてみれば…」程度かもしれません。フローラルな香りを感じ取るコツは、飲む前にまずカップに鼻を近づけて深く香りを吸い込むこと。そして口に含んだ後、鼻から息を抜く「レトロネーザル」で香りを感じること。何度か繰り返すうちに、ジャスミンやオレンジブロッサムの存在に気づけるようになるはずです。
浅煎りが酸っぱくて苦手なのですが…
浅煎りの酸味が気になる場合、湯温をやや高めに設定するか、抽出時間を少し長くすると酸味が和らぎます。また、コスタリカ グラナディージャ農園のように酸味スコアが「2」の穏やかな銘柄から試してみるのもおすすめです。イエローハニーの甘味が酸味を優しく包み込み、浅煎り特有の刺激を抑えてくれます。
フローラル系コーヒーにおすすめの淹れ方は?
ペーパードリップで、湯温は85〜88℃のやや低め、挽き具合はやや粗めがおすすめです。高温や過抽出は繊細なフローラル成分を壊してしまうため、控えめな条件で丁寧に淹れるのがポイント。薄めの陶器カップやガラスカップで飲むと、香りの立ち上がりがよく感じられます。
まとめ
浅煎りコーヒーの魅力は、深煎りでは失われるフローラルな香りがそのまま残ることです。エチオピア アリーチャ ナチュラルとコスタリカ グラナディージャは、ジャスミンやオレンジブロッサムを思わせる華やかな香りを楽しめる代表銘柄。ぜひ一度、花のような世界を体験してみてください。


