ワインにヴィンテージチャートがあるように、コーヒーにも「点数」がつけられていることをご存知でしょうか。100点満点で採点され、80点以上がスペシャルティコーヒーの目安として広く使われてきました。この数字が持つ意味を理解すると、コーヒーの選び方が根本から変わります。
スペシャルティコーヒーの定義そのものについてはスペシャルティコーヒーとは(定義の解説)で解説しています。
コーヒーに「点数」がつくことをご存知ですか

カッピングスコアとは、SCA(スペシャルティコーヒー協会)のプロトコルに基づき訓練を受けた複数のカッパーが香り・酸味・ボディなど10項目を評価し、100点満点で採点する品質基準です。SCAのカッピングフォームでは、80点以上がスペシャルティコーヒーの目安として広く使われてきました。
SCA(スペシャルティコーヒー協会)が定めたカッピングプロトコル。これは、訓練を受けた専門家が一定の手順に従ってコーヒーの品質を評価し、100点満点で点数化するシステムです。
評価されるのは、香り、味、後味、酸の質、口当たり、バランスなど複数の項目。一人の主観ではなく、複数のカッパー(評価者)が独立して採点し、その結果を総合します。科学的とまでは言えないまでも、属人性をできるだけ排除した、業界標準の品質評価法です。
そして80点。この数字は長年、コモディティコーヒー(一般流通品)とスペシャルティコーヒーを分ける目安として使われてきました。ただし現行のSCAの定義は属性ベースで、点数そのものは含みません。それでも実務上は、80点以上の豆が世界的な品質の目安として扱われています。
カッピングスコアの採点基準 — 10項目のチェックポイント

カッピングスコアの採点基準は、フレグランス/アロマ・フレーバー・アフターテイスト・アシディティ・ボディ・バランスなど計10項目です。訓練を受けた複数のカッパーがそれぞれ独立して各項目を採点し、その平均を合算することで、香りから余韻まで一杯の品質を総合的に数値化します。
カッピングスコアは、主に以下のような項目で構成されています。
フレグランス/アロマ
粉の状態での香り(フレグランス)と、お湯を注いだ後の香り(アロマ)。産地の個性や精製方法の特徴が最初に現れる部分です。
フレーバー
口に含んだときに感じる味と香りの総合評価。フルーツ感、チョコレート感、ナッツ感など、具体的なフレーバーの複雑さと鮮明さが問われます。
アフターテイスト
飲み込んだ後に残る余韻。心地よい余韻が長く続くほど高評価。逆に、不快な後味が残ると減点対象になります。
アシディティ(酸味の質)
酸味の「強さ」ではなく「質」が評価されるのがポイント。明るく活き活きとした酸味は高評価、鈍く不快な酸味は低評価。
ボディ
口当たりの厚み、重み。軽いか重いかではなく、その豆にふさわしいボディかどうかが判断されます。
バランス
酸味、甘味、苦味、ボディのバランス。突出しすぎず、不足もなく、調和が取れているかどうか。
これらに加えて「均一性」「クリーンカップ」「甘さ」「総合評価」などの項目があり、合計点がカッピングスコアとなります。
80点と85点、90点で何が違う? — スコア帯別の味わいの世界

80点と85点、90点の違いは、フレーバーの複雑さと余韻の長さです。80〜84点は産地の個性が明確な良質なスペシャルティ、85〜89点は品評会入賞レベルの際立った個性、90点以上は世界のロースターが争奪する希少な豆という3段階に分かれます。
数字だけでは実感が湧きにくいかもしれません。スコア帯ごとの味わいのイメージを、もう少し具体的に描いてみましょう。
80〜84点:良質なスペシャルティコーヒー
クリーンで欠点がなく、産地の特徴がしっかりと感じられる。日常使いのスペシャルティとして十分に高品質。コモディティコーヒーとの味の差は歴然としています。フレーバーの複雑さはやや控えめながら、バランスが良く飲みやすい。
85〜89点:優秀なスペシャルティコーヒー
フレーバーの複雑さと鮮明さが一段階上がり、「この豆ならではの個性」がはっきりと感じ取れる。余韻が長く、飲むたびに新しい発見がある。品評会で入賞するレベルの豆がこの帯域に多く位置します。
90点以上:卓越したスペシャルティコーヒー
世界中のロースターが争奪する、極めて希少な豆。フレーバーの多層性は圧倒的で、一口ごとに味が変化していく。温度が下がるにつれて現れる新しいフレーバー、口の中で広がる複雑な甘味と酸味の交錯。コーヒーが「飲み物」を超えて「体験」になる領域です。
スコアだけでは測れない「焙煎による味作り」の大切さ
カッピングスコアが評価するのは焙煎前の「生豆」の品質であり、消費者が実際に飲む「焙煎豆」の味とは同一ではありません。同じ高スコアの生豆でも、焙煎度合い・温度カーブ・焙煎機の選び方次第で、香りや甘みの引き出され方、フレーバーの再現度は大きく変わります。
ここで見落としてはいけない事実があります。カッピングスコアは「生豆」の品質を評価するもの。しかし消費者が飲むのは「焙煎豆」です。
どれだけスコアの高い生豆を仕入れても、焙煎が適切でなければそのポテンシャルは活かしきれません。浅すぎれば青臭さが残り、深すぎれば繊細なフレーバーが飛んでしまう。焙煎度合い、温度カーブ、焙煎機の選択——これらすべてが、生豆の潜在能力をカップに変換する工程です。
NCRが二つの焙煎機を使い分ける理由も、ここにあります。繊細なフローラル感を持つ豆にはLoring S35のクリーン焙煎で産地の個性をダイレクトに引き出し、重厚なコクが魅力の豆にはProbat UG22nの鋳鉄ドラムで甘みとボディを最大化する。
三代目代表の櫻井健司氏はJr.スペシャルティコーヒーカッパーの資格を持つカッピングの専門家でもあります。自らの焙煎結果を専門的に評価し、豆ごとに最適なプロファイルを追求する。スコアの高い生豆を、その数字以上の味わいに仕上げる——それが焙煎士の仕事なのです。
NCRが選ぶ高品質豆のラインナップ
NOVOLD COFFEE ROASTERS(ノボルドコーヒーロースターズ)が扱う豆は、いずれもスペシャルティ基準を満たす厳選ロットです。ブラジル山口農園やコスタリカ グラナディージャなど産地の異なる6銘柄を、LoringとProbatの2台の焙煎機で仕上げています。
NCRが取り扱う銘柄は、いずれもスペシャルティ基準を満たす厳選された高品質豆。その一部をご紹介しましょう。
ブラジル山口農園。日系生産者が伝統的なブルボン種を守る共同栽培の豆で、キャラメルやヘーゼルナッツを思わせる温かい甘みが特徴。コスタリカ グラナディージャ農園は2015年カップ・オブ・エクセレンス入賞。栽培から水洗処理まで手がけるロスアンヘレス・マイクロミル(カルデロン一家)は2011年カップ・オブ・エクセレンス優勝コーヒーも生んだ実力派で、ハチミツの甘味と明るい柑橘系酸味の銘柄です。
グアテマラ エルインヘルト農園は「グアテマラ最高峰のひとつ」と評される名門農園のウォッシュド。エチオピア アリーチャ村は、ガーデンコーヒースタイルで育まれた原種のナチュラル。ブラジル フルッタ アナエロビックは、嫌気性発酵による革新的な味わい。マンデリン エスペシャルは、「マンデリンの理想形」を追求した重厚なフルボディ。
これらの豆を、二つの焙煎機で最適に焼き上げる。スコアの背景にある品質と、焙煎士の技術が合わさって初めて、カップの中に「特別」が生まれます。
よくある質問
カッピングスコアは商品に表示されていますか?
ロースターによってまちまちです。スコアを明示しているところもあれば、していないところもあります。スコアは生豆の評価であり、焙煎後の味とは必ずしもイコールではないため、「スコアが高い=焙煎後も自動的に美味しい」とは限りません。NCRのように焙煎技術に確かな裏付けがあるロースターを選ぶことが、結果的に高品質な一杯につながります。
自分でカッピングをすることはできますか?
はい、カッピングのプロトコル自体は公開されており、自宅でも実践できます。必要なのは、カッピングスプーン、適切な温度のお湯、計量器、そして複数の豆。同じ条件で淹れた複数の豆を比較しながら、フレーバーホイールを参考に味を言語化していく。最初は難しく感じますが、繰り返すうちに味覚が磨かれていきます。
カッピングスコアが高い=自分好みとは限りませんか?
その通りです。カッピングスコアは品質の客観的指標ですが、「好み」は主観的なもの。たとえば酸味が苦手な方にとっては、明るい酸味が高く評価された90点の浅煎り豆より、82点の深煎り豆のほうが好みに合うこともあります。スコアは品質の「下限」を保証するものであり、「自分に合うかどうか」は別の軸で判断する必要がある。だからこそ、自分の好みを知ることが大切なのです。
まとめ
カッピングスコアは、SCAのカッピングフォームで80点以上を得ることが、長くスペシャルティコーヒーの目安とされてきた品質の証です(現行のSCAの定義は属性ベースで、点数は必須要件ではありません)。80点台・90点台それぞれに個性があり、点数はあくまで生豆の品質指標。焙煎士の技術が加わって初めて、カップの中に「特別」が生まれます。2015年カップ・オブ・エクセレンス入賞の実績を持つコスタリカ グラナディージャで、スコアの背景にある品質を味わってみてください。



