ストロベリーを思わせる果実感と、ほのかにワインのようなアロマ。そこに確かなボディと、上質な酸味が重なるのがグアテマラ エルインヘルトです。
酸が主役でありながら尖らず、コクもきちんとある。バランス型の一杯を探している方に向いています。

上質な酸味とワインのアロマは、どの瞬間に立ち上がるか

一口目に来るのは、ストロベリーのような果実感です。甘酸っぱく、瑞々しい。そこにほのかなワインのアロマが寄り添います。華やかではあるのですが、主張しすぎない入り方をする豆です。
中盤で、クリーンで明るい酸味が舌の上を通っていきます。ウォッシュド精製らしい透明感のある酸で、雑味に濁らないぶん、産地の性格がそのまま伝わってくる。同時に、確かなボディが下から支えます。酸だけが立って軽くなる、ということがありません。
冷めたときには、甘さのほうが前に出てきます。温度が下がるにつれて果実感が丸くなり、余韻に甘味が重なってくる。淹れたてと飲み終わりで、少し違う顔を見せる豆です。
余韻は、心地よくゆっくりと消えていきます。ワインのようなアロマが最後にもう一度だけ戻ってくる。気品ある、という言い方がいちばん近い引き際です。
グアテマラ エルインヘルトの豆のプロフィール(早見表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 産地 | グアテマラ |
| 地域 | ウエウエテナンゴ県 ラ・リベルタ村 |
| 農園 | エル・インヘルト農園(Finca El Injerto/アギーレ家経営) |
| 敷地 | 750ha(うちコーヒー栽培エリア250ha・天然雨林470ha) |
| 標高 | 1,500m〜2,000m |
| 品種 | ブルボン70%/カトゥアイ30% |
| 精製 | ウォッシュド |
| 焙煎度 | 中煎り |
| 推奨抽出 | ハンドドリップ:豆15g/湯225ml(1:15)/92℃/蒸らし30秒/合計2:30 | 挽き目:中挽き |
産地はウエウエテナンゴ県ラ・リベルタ村、標高1,500〜2,000m

この豆が育つのは、グアテマラ北西部・ウエウエテナンゴ県の山あいにあるラ・リベルタ村。メキシコとの国境に近い高地で、標高は1,500〜2,000mです。谷沿いに広がる敷地は750ヘクタール。そのうちコーヒーを栽培しているのは250ヘクタールで、470ヘクタールは天然の雨林として残されています。農園の面積のうち、コーヒーに使っているのは三分の一ほど、という構成です。
平均気温は16〜28℃、年間降水量は1,800〜2,000mm。土壌は有機物質に富んだ火山性です。そしてこの土地には、明確な乾季があります。乾季がはっきり分かれると、コーヒーの木の開花のタイミングが揃い、実の熟成の進み方も揃う。粒ごとのばらつきが出にくい、という意味です。上質な酸味と深いボディ、そしてワインのようなアロマは、この条件の上に立っています。
精製方法そのものの違いを知りたい方は、コーヒーの精製方法を全解説 — ナチュラル・ウォッシュド・ハニー・スマトラ式・アナエロビックの味の違いもあわせてどうぞ。
誰がどう作っているか|アギーレ家のブルボンとウォッシュド

エル・インヘルト農園(Finca El Injerto)を営んでいるのは、アギーレ家。ウエウエテナンゴの名門として知られる農園です。栽培している品種はブルボン70%、カトゥアイ30%。急斜面に広がる区画で、完熟した実だけを一粒ずつ手摘みで収穫していきます。機械で一斉に刈り取るやり方では選べない部分を、人の手で選んでいるわけです。
精製はウォッシュド。果肉を取り除いてから水で発酵させ、粘液質を落としてから乾かす方法です。この農園では山から湧く水を使い、60〜72時間かけてゆっくり発酵させます。ウォッシュドが得意とするのは、豆そのものの輪郭をはっきり出すこと。クリーンで明るい酸味と、奥行きのある風味は、この工程から来ています。
品種と産地と焙煎がどう味に効いてくるかは、コーヒー豆の品種・産地・焙煎の関係|種類で変わる味と香りのガイドで整理しています。
NOVOLD の焙煎|Loring S35 Kestrel と中煎り

NOVOLD はこの豆を Loring S35 Kestrel で中煎りに焼いています。Loring は、単一のバーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う特許技術「Flavor-Lock Roast Process™」を備えた焙煎機。焙煎中の煙による風味への影響を抑える設計です。
方式は対流式。精密に制御された熱風を焙煎ドラム内で循環させて豆を加熱します。豆一粒一粒に均一に熱が入るため、豆ごとの焼きムラも、豆の内側と外側の焼きムラも排除される設計です。操作はタッチスクリーン式で、温度・時間・ファン速度を0.1℃、1秒単位で自動制御(PID制御)。一度決めた焙煎レシピを、バッチが変わっても同じようになぞれます。着地点は中煎りです。

焙煎を担当するのは、三代目の焙煎士・櫻井健司。NOVOLD には性格の異なる二台の焙煎機があり、深く焼き込む豆を受け持つのは Probat。この豆は Loring で中煎りに仕上げています。二台の詳細はProbat UG22n × Loring S35 Kestrelのページにまとめました。
いちばん美味しく淹れる|92℃・中挽きの数値レシピ

ハンドドリップの基準はこちらです。豆15g/湯225ml(比率1:15)/湯温92℃/挽き目は中挽き/蒸らし30秒/合計2分30秒。蒸らしは湯を30〜40mlほど落として全体を湿らせ、30秒待ちます。あとは中心から外へ、渦を巻くように、湯面を切らさない程度のペースで注いでいく。2分30秒で落としきる想定です。
この豆は酸味が持ち味なので、湯温を下げすぎると香りが開かず、上げすぎると酸が硬くなります。92℃を基準に、まずはそのまま淹れてみてください。果実感をもう少し前に出したいときは挽き目をわずかに細かく、ボディを重くしたいときはやや粗めに。そのくらいの調整で、十分に表情が変わります。
飲み終わりまでカップに置いておくのもおすすめです。冷めるにつれて甘さが出てくるので、最後の一口までゆっくり付き合えます。
合わせたい食べ物と、飲む時間

ストロベリー感、ワインのアロマ、クリーンな酸。この輪郭に合わせるなら、まずはベリー系の焼き菓子です。ラズベリーやフランボワーズのタルト、ベリーのスコーン。カップのなかの果実感と同じ方向なので、素直に重なります。
ふたつめはチーズ。クリームチーズを塗ったパンや、あっさりした白カビ系。酸味のあるコーヒーは乳のコクとよく合います。みっつめは厚めに切ったトースト。バターだけを合わせたシンプルなもの。豆の輪郭がはっきりしているので、相手はシンプルなほうが引き立ちます。
飲む時間は、休日の朝か、午後の落ち着いた時間帯。慌ただしく飲み干す一杯というより、香りの変化を追いながら飲むタイプです。人をもてなす日の一杯としても選びやすい豆だと思います。
他の銘柄とどう違うか|飲み比べで見える立ち位置
エルインヘルトがどのあたりに立っている豆なのかは、他の銘柄と並べるとはっきりします。
ひとつはブラジル 山口農園|ブルボン種ナチュラルが生むナッツとチョコの甘さ。同じブルボン種でも、こちらは精製がナチュラルで、味の方向が大きく違います。酸味は山口農園がはっきり控えめなのに対し、エルインヘルトは上質な酸が主役。甘さの質も、山口農園はキャラメルやナッツ系、エルインヘルトは果実の甘さです。コクはどちらも確かにありますが、山口農園が丸い口当たりなのに対し、エルインヘルトは酸と一緒に立ち上がるボディ。
もうひとつはインドネシア マンデリン エスペシャル|上質なマンデリンの見分け方。こちらは深煎りで、重厚なコクと苦味が主役の豆です。エルインヘルトは中煎りで、酸とボディのバランスを取りにいくタイプ。酸味はエルインヘルトが明確に上、苦味はマンデリンが上、コクの重さもマンデリンが上です。どっしりした一杯が欲しい日と、香りを追いたい日とで、そもそも用途が違います。
逆に言えば、酸味が苦手な方、苦味とコクの強いコーヒーを探している方には向きません。この豆はクリーンな酸を軸に組み立てられているからです。ミルクをたっぷり入れて飲みたい場合も、深煎りの豆のほうが向いています。
どれが自分に合うか迷ったら、100gずつ3種を選べるお試しパックから始めるのが早道です。なお、こちらはお一人様2回までのご購入とさせていただいています。
よくある質問
Q. エルインヘルトはどんな人に向いていますか? どんな人には向きませんか?
明るい酸味とフルーツの香りを楽しみたい方に、まず向いています。酸が主役でありながらボディもあるので、軽すぎる一杯が苦手な方でも飲みやすいはずです。人をもてなすときの一杯や、ギフトにも選びやすいタイプ。一方で、酸味が苦手な方、しっかりした苦味とコクを求めている方には向きません。その場合は深煎りの豆をおすすめします。
Q. どんな品種・精製方法のコーヒーですか?
品種はブルボン70%、カトゥアイ30%。精製はウォッシュドです。ウォッシュドは水で発酵させて粘液質を落としてから乾かす方法で、豆そのものの輪郭がはっきり出るのが特徴。クリーンで明るい酸味は、この精製から来ています。
Q. おすすめの淹れ方は?
ペーパードリップなら、中挽き・湯温92℃で、豆15gに湯225ml。蒸らし30秒を挟んで合計2分30秒が目安です。湯温を下げすぎると香りが開かず、上げすぎると酸が硬くなるので、まずは92℃のまま淹れてみてください。
Q. 200gでどのくらい飲めますか?
1杯あたり豆15gで淹れる計算なら、200gでおよそ13杯分。毎朝1杯のペースなら、2週間ほどのおつきあいになります。
NOVOLD COFFEE ROASTERSの強みは、性質の異なる二台の焙煎機を豆ごとに使い分ける「温故知新」の哲学にあります。
ドイツ製の Probat UG22n が受け持つのは、深く焼き込んだ豆の厚みのある味わい。
最新鋭 Loring S35 Kestrel は、精密な熱風制御で焙煎ムラを抑え、煙の影響を排した焙煎を行う設計です。
新旧二機を三代目・櫻井健司が焼き分け、浅煎りから深煎りまで、それぞれの豆が持つ最良の表情を引き出します。




