NOVOLD COFFEE ROASTERSが所有する1971年製Probat UG22n(22kg機)は、導入から半世紀以上を経てなお現役で稼働するヴィンテージ焙煎機です。厚い鋳鉄製ドラムが生む蓄熱性と、焙煎士が手動でガス圧・ダンパーを調整するアナログな工程が、現代の量産機にはない重厚な甘みとコクを引き出します。
なぜ半世紀以上前の焙煎機が今なお使われるのか

半世紀以上前のProbat UG22nが今も使われるのは、厚い鋳鉄製ドラムの蓄熱性と均一な熱分布が、現代の量産機では再現しにくい重厚な甘みとコクを生むためです。NOVOLDが所有する個体は1971年に導入された22kg機(製造番号「70/4164」)で、良好な状態で稼働する同型機は世界的にも稀少です。
新品の鋳鉄フライパンと、何十年も使い込んだそれとでは焼き上がりが違う——料理をする方なら、この感覚に近いものを想像していただけるのではないでしょうか。コーヒー焙煎も同じで、時間が育てた道具には、時間でしか生み出せない味があります。
Probat UG22n — ドイツの黄金期が生んだ22kg機

Probat UG22nは、1868年創業のドイツメーカーProbat社が黄金期に製造したシリーズの一台で、NOVOLDが1971年に導入した個体(製造番号「70/4164」、22kg機)は半熱風式を採用しています。厚い鋳鉄製ドラムから放射される遠赤外線が豆の芯まで熱を通し、伝導熱と対流熱の組み合わせが複雑な風味プロファイルを生みます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機種名 | Probat UG22n |
| 製造年 | 1971年(製造番号「70/4164」) |
| 製造メーカー | Probat(ドイツ・1868年創業) |
| シリーズ | UGシリーズ(黄金期・1950年代後半〜1970年代の代表モデル群) |
| 容量 | 22kg |
| ドラム素材 | 鋳鉄 |
| 焙煎方式 | 半熱風式(伝導熱+対流熱) |
| NOVOLDでの導入年 | 1971年(二代目の時代。同年に卸部も設立) |
良好な状態で稼働する同型機は、世界的に見ても非常に稀少です。市場に新たに出回ることはなく、専門業者のあいだで極めて高値で取引されています。この焙煎機にデジタル制御はなく、焙煎士が音を聴き、煙の色を見極め、豆の香りを嗅ぎ分けながら手動でガス圧やダンパーを調整するアナログな工程が、この機体の真骨頂です。
二代目が迎えたヴィンテージ機 — 徳島ブラジルコーヒの94年
NOVOLD COFFEE ROASTERSの母体、有限会社徳島ブラジルコーヒ店は1932年に徳島市大工町で創業し、94年(2026年8月時点)の歴史を持ちます。二代目の時代に1963年の西ドイツ製12kg機に続いて1971年にProbat UG22nを導入し、卸部も設立して専業ロースターとしての地位を確立しました。
創業者・桜井吉朗氏が京都で出会ったアイスコーヒーに感銘を受け、徳島で初めてのコーヒー豆販売店を開いたのが1932年。現在は三代目の代表取締役、櫻井健司氏が伝統を継承しています。2017年、櫻井健司氏の主導で新ブランド「NOVOLD COFFEE ROASTERS」を立ち上げ、同年にLoring S35 Kestrelを導入したことで、1971年製のヴィンテージProbatと2017年製のLoringが同じ空間で稼働する体制になりました。ブランド名「NOVOLD」——ポルトガル語の「NOVO(新しい)」と英語の「OLD(古い)」を組み合わせた造語——が体現する精神そのものです。
ヴィンテージならではの味わい — Loringとの決定的な違い
Probat UG22nとLoring S35 Kestrel(2017年導入)の違いは温度制御の方法です。Probatは焙煎士がガス圧やダンパーを五感で調整するアナログ機、Loringは0.1℃・1秒単位のデジタルPID制御でプロファイルを再現します。NOVOLDでは現在、深煎りのマンデリン エスペシャルをProbatで焙煎しています。
Loring S35は、精密なPID制御と特許技術Flavor-Lock Roast Processによる煙の排除で、クリーンで繊細な味わいを追求する焙煎機です。一方のProbat UG22nは、鋳鉄ドラムの蓄熱性と遠赤外線で豆の芯までじっくりと火を通し、重厚なコクと豊かな甘みを生み出します。五感によるアナログ焙煎だからこそ生まれる「揺らぎ」のようなものは、デジタル制御では再現できません。
ヴィンテージ焙煎の味を自宅で楽しむ

Probat UG22nの重厚な味わいを自宅で楽しむなら、この機体で深煎りするインドネシア マンデリン エスペシャルが代表的な一杯です。標高1,300mのスマトラ島北部リントンニフタ産で、スマトラ式精製由来のアーシーな風味と、コク4・苦味3のフルボディが特徴です。
もう一つの選択肢が、ブレンド「ノボルドエスペシャル」の深煎りベース。ブラジル・コロンビア・グアテマラをPROBATで深煎りにし、そこへLORINGで中浅煎りにしたエチオピア アリーチャを少量加えることで、深い味わいの中にも華やかさを感じられる一杯に仕上げています。
よくある質問
ヴィンテージ焙煎機のメンテナンスは大変ですか?
半世紀以上前の機械を良好な状態で維持するには、日々の丁寧なメンテナンスが不可欠です。焙煎後の清掃はもちろん、鋳鉄ドラムの状態管理、各部品の点検と調整を定期的に行っています。現代の焙煎機のように部品をメーカーから容易に取り寄せられないケースもあり、専門的な知識と経験が求められます。
焙煎所の見学はできますか?
焙煎所(徳島市東沖洲)は稼働中の工場であり、随時受け付けている一般見学は行っておりません。実店舗も当面のあいだ休業しているため、Probat UG22nが稼働する様子は、商品ページに掲載している焙煎士のコメントや本ブログでご紹介しています。
なぜヴィンテージ機に加えて新しい焙煎機も導入したのですか?
Probat UG22nの重厚な味わいは唯一無二ですが、すべての豆にその焙煎方式が最適とは限りません。エチオピアの繊細なフローラル感やコスタリカの明るい酸味は、Loring S35のクリーン焙煎でこそピュアに表現できます。豆ごとに最適な焙煎機を選べること——それがNOVOLDの「二刀流」の核心であり、ブランド名「NOVOLD」の思想そのものです。
Probat UG22nは今も何を焙煎していますか?
2026年8月現在、NOVOLDのシングルオリジン6種のうち深煎りのインドネシア マンデリン エスペシャルと、ブレンド「ノボルドエスペシャル」の深煎りベース(ブラジル・コロンビア・グアテマラ)をProbat UG22nで焙煎しています。残る5つのシングルオリジンは、2017年導入のLoring S35 Kestrelが担っています。
まとめ|1971年の鋳鉄が紡ぐ味を、自宅で
NOVOLD COFFEE ROASTERSが1971年に導入したProbat UG22n(22kg機)は、二代目の時代から半世紀以上を経てなお、三代目・櫻井健司の手で現役稼働するヴィンテージ焙煎機です。厚い鋳鉄製ドラムが生む重厚な甘みとコクは、2017年導入のLoring S35 Kestrelにはない、この一台だけの味わいです。
ヴィンテージPROBATが生む深煎りのコクを手軽に味わうなら、二台の焙煎機で仕上げるブレンド「ノボルドエスペシャル」から試してみてください。



