なぜ深煎りと浅煎りを混ぜるのか|二台の焙煎機でつくるブレンドの設計思想

三代目代表 櫻井健司が1971年製Probat UG22nを操作する様子

深煎りと浅煎り。苦味とコクの側に振り切れた豆と、酸味と香りの側に振り切れた豆を、ひとつの袋へ入れる。「味が濁らないのか」と身構えた方は、勘がいい。目的もなく混ぜれば、たしかに濁ります。濁らせないための答えが、焙煎機を二台使い分けるという設計でした。徳島の焙煎所で毎日起きていることを、順番にほどきます。

NOVOLD COFFEE ROASTERSのロースタリー内観。Probat UG22nとLoring S35 Kestrelが並ぶ

深煎りと浅煎り、正反対の豆をなぜ一つのカップに混ぜるのか

ブレンドと聞いて「安い豆のかさ増し」を思い浮かべる人は、まだ多い。けれど焙煎度の違う豆を別々に焼いてから合わせる作業は、手間で言えば真逆の行為です。

「濁る」のではなく「輪郭が増える」

深煎りの重心は下にあります。苦味、コク、ダークチョコレートのような余韻。そのかわり、豆が本来抱えていた明るい酸や花のような香りは、火の中でおおむね姿を消していく。浅煎りはその逆で、香りと酸は立つけれど、飲み終えたあとに残る太さが出にくい。

ここに、混ぜる理由が生まれます。足して2で割るためではありません。深煎りが持てない香りを、浅煎りに担わせるため。厚みは深煎りが引き受けたまま、上に乗る香りだけを別の豆から借りてくる。設計のないまま焙煎度を混ぜれば濁りますが、役割を決めてから混ぜた味は、分離せずに層になります。

この記事で解くこと

話は3つの段に分かれます。なぜ混ぜるのかという設計の話。どうやって混ぜるのかという製法の話。そしてどの機械がどちらを担うのかという、焙煎機の話。最後のひとつは、焙煎機を二台持っているロースターにしか書けない領域です。

ブレンドは妥協ではない|喫茶文化が育てた「配合」という技術

配合という技術が日本でここまで磨かれたのには、理由があります。喫茶店という文化の存在です。

店の個性はブレンドに出た

昭和の喫茶店で客が指名したのは、産地名ではありませんでした。「あの店のブレンド」です。だから自家焙煎の店は自分の配合に名前をつけ、看板に掲げ、味の設計図として何年も手入れをしてきた。ワインのアッサンブラージュに近い、と言えば早いかもしれません。単一の畑を讃える文化と、混ぜて完成させる文化。どちらが上でもなく、目的が違うだけです。

徳島で94年、喫茶文化とともに

NOVOLD COFFEE ROASTERSを手がける有限会社徳島ブラジルコーヒ店の創業は1932年、昭和7年。徳島で初めてコーヒー豆の販売を始めた店として、地元の喫茶文化と94年を並走してきました。いまも徳島県内200店以上のプロが、この焙煎所の豆を使っています。配合という技術が育った文化の、ただ中にある焙煎所です。

ブレンドそのものの定義や銘柄選びは別の記事にまとめてあります。基礎から知りたい方はブレンドコーヒー豆の選び方|人気銘柄と単一原料との違いを、銘柄から探したい方は深煎りブレンドコーヒーおすすめ|コクと余韻を愉しむ大人の一杯ガイドをどうぞ。ここから先は、焙煎の話に絞ります。

プレミックスとアフターミックス|焙煎度を変えて混ぜるなら道は一つ

Probat UG22nから焙煎を終えた豆が排出される瞬間

ブレンドの作り方は、大きく2通りしかありません。混ぜてから焼くか、焼いてから混ぜるか。ここが分かれ道です。

一緒に焙煎する(プレミックス)と何が起きるか

生豆の段階で複数の産地を合わせ、まとめて焙煎する手法がプレミックスです。同じ釜で同じ時間を過ごすぶん味がなじみやすく、手順もシンプル。ただし釜はひとつ、火もひとつ。つまり全部の豆が同じ焙煎度になる。深煎りと浅煎りという、まったく別の到達点を同時に置くことは構造上できません。

別々に焙煎して合わせる(アフターミックス)

もうひとつがアフターミックス。産地ごとに焙煎を終え、冷めてから配合比に沿って合わせます。焙煎回数も管理する在庫も増えるかわりに、豆ごとに到達点を決められる。この豆はここまで、この豆はここで止める。設計の自由度が段違いになります。

焙煎度を変えたいなら、豆ごとに火を入れるしかない

深煎りと浅煎りを一杯の中に同居させたいなら、アフターミックス以外に道はありません。焙煎度を変えたいなら、豆ごとに火を入れるしかないからです。

NOVOLDのノボルドエスペシャルは、まさにこの手順で組まれています。ブラジル、コロンビア、グアテマラの3つの産地をPROBATで深煎りに焼いてブレンドし、そこへLORINGで浅煎りにしたエチオピア アリーチャを少し入れる。二台の焙煎機が、それぞれ別の到達点を受け持つ構造です。

焙煎度そのものが味をどう変えるかは、焙煎度でコーヒーの味はこう変わる|浅煎り・中煎り・深煎りをフレーバーホイールで読み解くで図解しています。本記事はその応用編にあたります。

深煎りの土台をつくる|1971年製 Probat UG22n の鋳鉄ドラム

三代目代表 櫻井健司が1971年製Probat UG22nを操作する様子

深煎り側を受け持つのは、ドイツ製のヴィンテージ機です。製造は1971年。半世紀以上、現役で回り続けている鉄の塊。

半熱風式が生む、伝導と対流の二重の熱

Probat UG22nの焙煎方式は半熱風式です。ドラムそのものが持つ熱(伝導熱)と、内部を通る熱風(対流熱)を組み合わせて豆に火を入れる。二種類の熱が同時に働くことで、ボディ感とクリーンな風味、そして豊かなアロマが両立します。仕組みの詳細は半熱風式焙煎のコーヒーが美味しい理由|Probat UG22nが生む長く続く老舗の味で扱っています。

鋳鉄ドラムの蓄熱が甘みを引き出す

この機械の核心は、厚い鋳鉄でできたドラムです。鋳鉄は熱容量が大きく、いったん温まると簡単には冷めない。生豆を投入した瞬間に釜の温度が落ちても、蓄えた熱がすぐ埋め合わせる。蓄熱した鉄が、芯まで熱を送るわけです。

内部からじわりと温める遠赤外線の効果もあって、豆は表面だけ焦げることなく中心まで火が通る。メイラード反応とカラメル化が理想的な速度で進んだとき、深煎りは苦いだけの飲み物ではなくなります。理屈は焙煎機の鋳鉄ドラムが味を変える理由|Probat UG22n 1971年製が引き出す甘みとコクに分解してあります。

針とダンパーで合わせる、手動の焙煎

UG22nの操作系は、手動が中心です。温度計の針、ガス圧計、ダンパー。豆の匂い、煙の色、ドラムから響く音を、焙煎士が数値と突き合わせながら手で合わせていきます。その日の豆の状態や環境で最適点は動くので、同じ数字をなぞるだけでは同じ味になりません。手で合わせられる余地が広いぶん、豆ごとの最適解へ寄せていける。深煎りの土台づくりは、この機械の領分です。

華やかさを「少しだけ」足す|四国唯一の Loring S35 Kestrel

四国で唯一導入されたLoring S35 Kestrel(2025年現在)

浅煎りの担当は、対照的な機械です。米国Loring Smart Roast社製、2017年製のS35 Kestrel。四国でこの機種を導入しているのは、2025年現在NOVOLDだけです。

熱風が均一に包む、対流式という考え方

焙煎中のドラムの中で何が起きているか、から入りましょう。Loringは対流式、精密に制御された熱風を循環させて豆を加熱します。鉄板が触れて熱を渡すのではなく、風が一粒一粒を包む。結果として、豆同士の焼きムラも、一粒の中の外側と内側の差も抑えられます。

もうひとつの特徴が、特許技術「Flavor-Lock Roast Process™」。単一のバーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う仕組みで、焙煎中に立つ煙が豆へ与える影響を抑えます。外部アフターバーナーが要らないため、従来のアフターバーナー付き焙煎機と比べて最大80%の燃料削減(メーカー仕様値)にもつながっている。カップの傾向はLoring S35 Kestrelの味と特徴を徹底解説|国内でも希少な最新鋭焙煎機が生むクリーンカップにまとめています。

0.1℃・1秒単位の制御が、浅煎りで効く理由

Loringはタッチスクリーンで温度・時間・ファン速度を管理し、PID制御によって0.1℃、1秒単位で狙いの数値を保ちます。ここが浅煎りに効く。

浅煎りは、焙煎の途中でやめる焙煎です。深煎りのように行ききって味をまとめる逃げ道がない。青さが残るか、香りが開くか。その境目は驚くほど狭い。0.1℃の揺れが、浅煎りでは風味の揺れになるので、精密制御機を当てる意味が出てきます。一度決めたプロファイルを次のバッチでも再現できることも、ブレンドの構成要素として使ううえで効いてきます。

Probatが優れている、Loringが優れている、という話ではありません。得意な領域が違うので、豆ごとに割り振っている。それだけです。

エチオピア アリーチャという産地の顔

アリーチャは、エチオピアのイルガチェフェ郡にある村の名前です。エチオピア原種(在来種)を、アフリカンベッドと呼ばれる棚で天日乾燥させるナチュラル精製。標高1,800〜2,000mの高地で、ベリーのような果実感とジャスミンを思わせるフローラルな香りを持つ産地として知られています。浅煎りで焼いたとき、産地の顔がいちばんはっきり出る。

ここまでが、アリーチャという名前が背負っている一般的な像です。そのエチオピア アリーチャを、NOVOLDはLORINGで浅煎りに仕上げ、ノボルドエスペシャルへ少しだけ加えています。

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「少し入れる」の設計|二つの熱が、一杯の中で役割を分ける

ノボルドエスペシャルの味わいチャート。コク4・酸味2・苦味2・甘み3・香り3

伝導熱主体の重心と、対流熱主体の透明感。性格の違う二つの熱が、ひとつの袋の中で仕事を分けています。熱の伝わり方そのものの違いは対流式と伝導式、焙煎方式で味はこう変わるに譲ります。

5つの軸で読む「深いのに華やか」

ノボルドエスペシャルの味わいチャートは、コク4、酸味2、苦味2、甘み3、香り3。

読み方のコツは、酸味と香りを別々に見ることです。ふつう浅煎りの豆を足せば、酸味と香りは一緒に上がります。このチャートでは酸味を2に抑えたまま、香りだけを3まで上げている。つまり浅煎りは、酸を主役にするためではなく、香りを立てるために入っている。「深い味わいの中にも華やかさを感じられる1杯」という商品コピーは、この数字の並びをそのまま言い換えたものです。

ここに「少し」という言葉の意味があります。多く入れれば酸が立ちすぎて土台が崩れ、少なすぎれば香りが立たない。「少し」という言葉に、いちばん設計が詰まっている。そしてその見極めは、機械が肩代わりできる部分ではありません。三代目代表・櫻井健司(コーヒーインストラクター1級)が毎日焙煎するNOVOLD。豆の状態を見ながら火を入れる人が現場にいることが、この設計の前提です。

ダークチョコレート、キャラメル、ラズベリー

ノボルドエスペシャルの豆とパッケージ

ノボルドエスペシャルのフレーバーノートは3つ。ダークチョコレートとキャラメルは、PROBATが担当した深煎り側から。カップの下半分を支える成分です。

ラズベリーは、LORING側から。浅煎りのエチオピアが持ち込む赤い果実の明るい香りで、鼻を近づけた最初の一瞬と、飲み込んだあとの余韻に顔を出します。

飲むと、この2つが同時ではなく順番に来るように感じられます。層になる、というのはそういうことです。焙煎所直送のノボルドエスペシャルは200g ¥2,420。ここまで設計の話を読んだなら、あとは実物で答え合わせをするのが早い。

ノボルドエスペシャル ノボルドエスペシャル ¥2,420〜 商品を見る →

どう飲むか|朝の一杯から、夜のチョコレートまで

ロースタリーの窓際に置かれたコーヒーサーバーとカップ

同じ豆でも、淹れ方と時間帯で顔が変わります。深煎りの余韻を活かすか、浅煎り由来の香りを立てるか。振り幅があるのは、二つの成分が層になっているからです。

朝と夜で表情が変わる

朝、目を覚ますための一杯なら、やや濃いめに落とすのがおすすめです。コク4の土台がしっかり出て、ミルクを少し足しても負けません。粗めに挽いて湯を高めにすると香りが立ちやすいので、休日の朝はそちらも。

夜は逆に、ブラックで少しゆっくり。温度が下がっていく途中でラズベリーの香りが前に出てくる瞬間があります。同じ袋の豆が、朝と夜で違う表情を見せる。

甘いものと合わせるなら

午後の休憩には、焼き菓子かダークチョコレートを。カカオ分の高いチョコレートなら、深煎り側の余韻と同じ方向の味なので喧嘩しません。キャラメル系の焼き菓子なら、甘み3のふくらみが橋渡しになります。もっと探したい方はチョコレート・キャラメル風味のコーヒー豆|中深煎り甘党向けスイート銘柄も合わせてどうぞ。

器具がない場所へは、ドリップバッグで

NOVOLD ドリップバッグの個包装(1杯分)

自宅でゆっくり淹れる時間があるなら、豆で。ノボルドエスペシャルは200g ¥2,420、500g ¥5,500。ミルがなくても、粗挽きから細挽きまで挽き方を指定して注文できます。定期便なら200gが ¥2,200になり、毎回¥220おトクです。1ヶ月ごとのお届けで、スキップも解約も自由。焙煎したての豆が毎月届く状態を、いちばん手間なく作れます。

職場のデスク、出張先のホテル、旅先の朝。器具を持ち出せない場所にはNOVOLD ドリップバッグ(8カップ入り) ¥2,200を。中身は同じ構成で、湯とカップさえあれば成立します。どちらが上ということもなく、同じ設計の味を、抽出環境で選び分けるだけです。

NOVOLD ドリップバッグ(8カップ入り) NOVOLD ドリップバッグ(8カップ入り) ¥2,200 商品を見る →

よくある質問

Q1. 深煎りと浅煎りを混ぜると、味が濁りませんか?

濁るのは、目的を決めずに混ぜた場合です。土台は深煎り、香りは浅煎りと役割を分けて設計すれば、味は分離せずに層になります。輪郭が減るのではなく、増える方向に働きます。

Q2. 自分で深煎りの豆と浅煎りの豆を買って混ぜてもいいですか?

手法としては可能です。ただ焙煎度の差が大きい配合は分量の見極めが難しく、少し動かすだけで印象が変わります。少量ずつ試すのがおすすめです。

Q3. 浅煎りはどのくらい入っているのですか?

具体的な配合比率は公開していません。設計としては「深煎りを主役に、浅煎りを少量」。浅煎りは酸味を足すためではなく香りを立てるために入っているので、量としては控えめな側です。

Q4. 酸味が苦手でも飲めますか?

ノボルドエスペシャルの味わいチャートは酸味2です。浅煎りは香りの役割で入っていて、酸を主役にする配合ではありません。すっぱさが苦手な方でも、深煎りベースの飲み口として受け取れるはずです。

Q5. 豆とドリップバッグ、どちらを選べばいいですか?

淹れる環境で選んでください。自宅にドリッパーがある方はノボルドエスペシャル 200g ¥2,420(定期便 ¥2,200)を。挽き方は注文時に指定できるので、ミルは必須ではありません。器具を持ち出せない場所で飲む方はNOVOLD ドリップバッグ(8カップ入り) 8カップで ¥2,200が便利です。

Q6. なぜ焙煎機を二台持っているのですか?

一台であらゆる焙煎度の最良点を出そうとするより、性質の違う機械に得意領域を割り振るほうが確実だからです。深煎りは1971年製のProbat UG22n、浅煎りは四国唯一(2025年現在)のLoring S35 Kestrel。二台あることが、この記事で書いた設計を可能にしています。

NOVOLD COFFEE ROASTERS について

NOVOLD COFFEE ROASTERSの強みは、性質の異なる二台の焙煎機を豆ごとに使い分ける「温故知新」の哲学にあります。

ドイツ製ヴィンテージ機 Probat UG22n(1971年製)の鋳鉄ドラムが生む重厚なコク。

最新鋭 Loring S35 Kestrel(四国で唯一の導入機)の精密熱風制御が引き出す、クリアで華やかな酸味と甘み。

新旧二機を熟練焙煎士が操ることで、浅煎りから深煎りまで、それぞれの豆が持つ最良の表情を描き出します。

二台の焙煎機が設計した一杯は、ノボルドエスペシャル 200g ¥2,420から。続けて飲むなら、定期便で1袋 ¥2,200です。器具を持ち出せない場所へは、NOVOLD ドリップバッグ 8カップ入り 8カップで ¥2,200を。

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