ブレンドは「余った豆を混ぜたもの」ではありません。ノボルドエスペシャルは、深く焼いた豆と、中浅く焼いた豆。別々の焙煎機で仕上げてから組み合わせた一杯です。ダークチョコレートのコクの奥に、ラズベリーのような明るい香りがふっと差し込みます。単一の豆では出せない構造を、二台の焙煎機を使い分けることで作っています。

味の特徴はどの瞬間に立ち上がるか

一口目に来るのはダークチョコレート。深煎りらしい香ばしさと、ビターな輪郭です。ここだけを取れば「しっかりした深煎り」という印象で止まります。
中盤で流れが変わる。キャラメルのような焦げた甘さが広がったあと、そこにラズベリーを思わせる酸が細く差し込みます。深い側の味に覆いかぶさるのではなく、隙間を縫って出てくる感じ。これが、少量だけ加えた中浅煎りの働きです。
冷めたときは、その果実感がさらにはっきりしてきます。熱いうちはコクが前に立ちますが、温度が下がるほど香りの層が見えてくる。淹れてすぐ飲みきらず、最後の一口まで残しておく価値があります。
余韻はチョコレートの側。ビターな苦味が舌に残り、そこへ果実の香りがうっすら重なって消えていきます。飲みごたえはしっかりしているのに、後を引きすぎない引き際です。
ブレンドの構成|二台の焙煎機で別々に焼く
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構成産地 | ブラジル/コロンビア/グアテマラ(深煎り側)+ エチオピア アリーチャ(中浅煎り側・少量) |
| 焙煎の工程 | Probat UG22n で3種を深煎りにブレンド → Loring S35 Kestrel で中浅煎りにしたエチオピアを少量重ねる |
| フレーバー | ダークチョコレート/キャラメル/ラズベリー |
| 焙煎士 | 三代目・櫻井健司 |
| 推奨抽出 | ハンドドリップ:豆15g/湯230ml(1:15)/87℃/蒸らし30秒/合計3:00 | 挽き目:中挽き |
ここで大事なのは、4つの産地をまとめて一度に焼いているわけではないという点です。ブラジル・コロンビア・グアテマラの3種は Probat で深く。エチオピア アリーチャは Loring で中浅く。焼き上げてから合わせています。だから「深煎り」という一言では説明できません。
なぜ二台で焼き分けるのか

ひとつの釜で、深煎りと浅煎りを同時に焼き上げることはできません。だからこの一杯は、別々の釜で焼いてから合わせるという組み立てになっています。
深煎り側を受け持つのが、ドイツ製・1971年製の Probat UG22n。方式は半熱風式で、深く焼き込む豆を担当する一台です。ブラジル・コロンビア・グアテマラの3種はこちらで焼かれます。
もう一台の Loring S35 Kestrel は対流式。単一のバーナーで焙煎と排煙焼却を同時に行う特許技術「Flavor-Lock Roast Process™」を備え、煙による風味への影響を抑える設計です。温度・時間・ファン速度は0.1℃、1秒単位で自動制御(PID制御)されます。エチオピア アリーチャを中浅煎りに仕上げるのは、この釜。

焼き分けるのは三代目の焙煎士・櫻井健司。2026年8月現在、四国で Loring S35 Kestrel を導入しているのは NOVOLD COFFEE ROASTERS だけです。「NOVOLD」という名前は、新しさと古さの両方を指しています。この二台の詳細はProbat UG22n × Loring S35 Kestrelのページへ。
いちばん美味しく淹れる|数値レシピ

基準はこちら。豆15g/湯230ml(比率1:15)/湯温87℃/挽き目は中挽き/蒸らし30秒/合計3分00秒。深煎り側が主体なので、湯温はやや低めに置いています。
湯温87℃は上げすぎないでください。90℃を超えると深煎り由来の苦味が強く出て、せっかくのラズベリー感が隠れます。逆に82℃を下回ると全体がぼやける。85〜88℃のあいだで、お好みの一点を探すのがおすすめです。
蒸らしは30秒。深煎りの豆はガスが多く出るので、粉全体がふくらむのを見てから次の注湯に移ります。あとは中心から外へ、湯面を切らさないペースで注いで3分00秒で落としきる想定。
ミルクとの相性も良い豆です。カフェオレにするなら豆を20gに増やし、湯を150mlに絞って濃く落としてから牛乳を合わせてください。チョコレートの側が前に出て、甘さのある一杯になります。
合わせたい食べ物と、飲む時間
コクと甘さが主役で、そこに細い酸が乗る。この構造から相手を考えると、選択肢はわりと広く取れます。
ひとつめはチョコレート菓子。ガトーショコラやブラウニーのように、同じ方向のものを素直に重ねる組み合わせ。ふたつめはナッツ系の焼き菓子。フロランタンやアーモンドのビスコッティは、深煎りの香ばしさと共鳴します。みっつめはベリーのジャムを添えたトースト。ブレンドに潜むラズベリー感を、外から呼び出すような食べ合わせです。
飲む時間は朝。1日の最初の一杯として置くと、コクが目を覚まさせてくれます。食後にも向きます。
他の銘柄とどう違うか

エスペシャルの立ち位置は、単一産地の豆と並べるとよく分かります。
ブレンドに使っているエチオピア アリーチャ ナチュラルを単体で飲むと、花とベリーの香りが主役で、コクはごく控えめ。エスペシャルではその香りが「アクセント」の位置に置かれています。酸味はアリーチャ単体のほうがはっきり強く、コクはエスペシャルのほうが厚い。同じ豆でも、量と組み合わせで役割が変わるわけです。
深煎り単体のインドネシア マンデリン エスペシャルと比べると、重厚さで上回るのはマンデリンのほう。ただしマンデリンには果実の香りがほとんど乗りません。飲みごたえ一本で選ぶならマンデリン、コクと香りの両方が欲しいならエスペシャルという分かれ方になります。
逆に、浅煎りの澄んだ酸だけを味わいたい方には向きません。ブラックで軽やかに飲みたい日には、深煎り側のコクが邪魔に感じられるはずです。品種や産地が味にどう効くかは、コーヒー豆の品種・産地・焙煎の関係|種類で変わる味と香りのガイドで整理しています。
どれが自分に合うか決めかねるなら、100gずつ3種を選べるお試しパックが早道。なお、こちらはお一人様2回までのご購入とさせていただいています。
よくある質問
Q. 焙煎度は深煎りですか?
深煎りにした3種と、中浅煎りにしたエチオピアを合わせているので、ひとつの焙煎度では言い表せません。飲んだ印象としては深煎り寄りですが、香りの層は中浅煎りのものです。
Q. コロンビアの豆は単品で買えますか?
コロンビアはこのブレンドの構成産地としてお届けしているもので、単品での取り扱いはありません。単一産地の豆をお探しなら、ブラジル・コスタリカ・エチオピア・グアテマラ・インドネシアのラインナップからお選びください。
Q. どんな器具に向いていますか?
ハンドドリップを基準に設計しています。フレンチプレスなら粗挽きでコクが強く出て、エスプレッソマシンでも使えますが、その場合は細挽きで抽出時間を短めに調整してください。
Q. 200gでどのくらい飲めますか?
1杯あたり豆15gで淹れる計算なら、200gでおよそ13杯分。毎朝1杯のペースなら2週間ほどのおつきあいです。
NOVOLD COFFEE ROASTERSの強みは、性質の異なる二台の焙煎機を豆ごとに使い分ける「温故知新」の哲学にあります。
ドイツ製の Probat UG22n が受け持つのは、深く焼き込んだ豆の厚みのある味わい。
最新鋭 Loring S35 Kestrel は、精密な熱風制御で焙煎ムラを抑え、煙の影響を排した焙煎を行う設計です。
新旧二機を三代目・櫻井健司が焼き分け、浅煎りから深煎りまで、それぞれの豆が持つ最良の表情に仕上げます。




