家にドリッパーが一つ。それで十分に美味しい。けれど、ふと気になる瞬間があります。フレンチプレスにすると何が変わるのか。エアロプレスやサイフォン、マキネッタも気になってきます。夏になれば水出しと急冷式アイスの違いも知りたくなるし、旅先ではドリップバッグに助けられる。
同じ豆でも、淹れ方が変わると表情がまるきり変わります。すっきり澄んだ一杯にもなれば、とろりと重い一杯にもなる。豆を変えなくても、味は動かせるということ。
この記事では、ハンドドリップ/フレンチプレス/エアロプレス/サイフォン/マキネッタ/水出し/急冷式アイス/ドリップバッグの8種類を、味の傾向・手間・抽出時間・器具・挽き目・湯温・豆と湯の比率という同じ物差しで並べます。表を眺めて、自分の生活時間に合う方式を一つ選んでいただければ。そして、その方式に合う豆まで。
8種類の淹れ方 早見比較表|味・手間・器具・抽出時間・挽き目・湯温・比率

まずは全体像から。気になる方式名をタップすると、その解説へ飛びます。
| 方式 | 味の傾向 | 手間 | 抽出時間 | 器具 | 挽き目 | 湯温 | 豆:湯の比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ハンドドリップ | すっきり。酸味や華やかさが出やすい | 道具はシンプル。注ぎ方で味が動く | 2〜3分 | ドリッパー、ペーパー、ケトル、スケール | 中細挽き〜中挽き | 90℃前後(浅煎りは88〜92℃) | 1:15〜1:16 |
| フレンチプレス | 濃厚。オイル感ととろりとした質感が残る | 注いで待つだけ。味がブレにくい | 4分 | フレンチプレス本体、スケール、タイマー | 粗挽き(ザラメ糖くらい) | 90〜95℃ | 1:15〜1:16(ボディ重視なら1:13〜1:14) |
| エアロプレス | クリーンさとボディを両立。酸味と甘みのバランス | 2分弱で完了。持ち運べる | 浸漬1分30秒+プレス約30秒(計約2分) | エアロプレス本体、ペーパーフィルター | 中挽き〜やや細め(500〜700μm) | 88℃基準(銘柄により85〜94℃) | 1:14前後(豆14g:湯200ml) |
| サイフォン | 香りが強く、雑味の少ないクリアな味わい | 浸漬時間を守れば安定する | 全体3〜5分(浸漬60秒前後) | ロート、フラスコ、ろ過器、スタンド、熱源 | グラニュー糖よりやや細かい中挽き | 95℃前後 | 記載なし |
| マキネッタ | パンチのあるコクと甘み。とろっとした質感 | 挽き目・水量・火加減の3点で味が変わる | 音で判断 | マキネッタ本体(約2気圧) | 細挽き | 記載なし | 水は安全弁の下まで |
| 水出し | やわらかく丸みのある口当たり。甘味とコクが前に出る | 仕込んで待つだけ。時間はかかる | 8〜12時間(浅煎り12〜14時間/中煎り10〜12時間/深煎り8〜12時間) | 浸漬式ポットまたは点滴式ポット、フィルター | 粗挽き〜中粗挽き | 冷水 | 1:10〜1:12.5(粉40g:水500ml) |
| 急冷式アイス | 湯で開いた香りがそのまま冷えて届く | 都度淹れる。数分で終わる | 蒸らし30秒+総抽出1分30秒〜2分 | 円錐ドリッパー、ペーパー、耐熱サーバー、細口ケトル | 中挽き〜中細挽き | 浅〜中煎り90℃前後/中深〜深煎り85℃ | 粉20g:湯130〜150ml+氷100〜120g |
| ドリップバッグ | 記載なし | カップにセットして4ステップ。追加の器具が要らない | 蒸らし20〜30秒 | ドリップバッグとカップのみ | 既製品 | 85〜90℃ | 湯量120〜150ml |
表の読み方を、四つだけ補足します。
- 抽出時間は「抽出そのものにかかる時間」です。湯を沸かす時間、豆を挽く時間、器具を洗う時間は含みません。
- 「記載なし」は、当店の記事で数値や味の傾向を定めていない項目です。一般論の数字で埋めず、そのまま置いています。
- 豆と湯の比率は「豆1に対して湯がいくつ」という書き方。1:15なら豆15gに湯225mlです。計算の考え方はコーヒーの抽出比率ガイドで解説しています。
- 湯温も挽き目も、表の値は出発点。そこから自分の好みに向かって振っていくものだと考えてください。
淹れ方を比べる5つの物差し|味・手間・時間・挽き目・比率

方式の数を覚えるより、違いを生んでいる仕組みを掴むほうが早い。物差しは五つです。
味の方向を決めるのは「透過」か「浸漬」か
コーヒーの抽出方式は、大きく二つに分かれます。
透過式とは、粉の層に湯を通しながら成分を引き出す方法。湯が粉に触れる時間が短く、ペーパーが油分を受け止めるため、すっきりと澄んだ味になります。酸味や華やかさが前に出やすいのもこちら。
浸漬式とは、粉を湯や水に浸けたまま置いて成分を引き出す方法。全体が均一に浸かるので味がブレにくく、コクとオイル感がそのままカップに残ります。
8方式を分けると、こうなります。
- 透過式: ハンドドリップ/急冷式アイス/ドリップバッグ
- 浸漬式: フレンチプレス/水出し/サイフォン
- 加圧: エアロプレス/マキネッタ
サイフォンは浸漬させてから吸引で濾過する構造なので、浸漬式に入りつつ、仕上がりはクリアに寄ります。加圧は、圧力で短時間に成分を押し出す方式。エアロプレスは浸漬させてから押し出すハイブリッド、マキネッタは蒸気圧で湯を押し上げます。同じ豆でも方式でここまで表情が変わる理由は、本当に美味しいコーヒーの淹れ方とはと温度と時間の哲学でも触れています。
湯温は方式ごとに違う|85℃から95℃まで
表の湯温列を縦に読むと、幅は85℃から95℃。ドリップバッグの85〜90℃が低めで、サイフォンの95℃前後が高めです。この10℃の差は、方式が「どれだけの時間、湯を粉に触れさせるか」と釣り合っています。
長く触れる方式は湯温を上げすぎると出過ぎる。短く触れる方式は湯温を上げないと出きらない。焙煎度でも変わり、浅煎りは高めに、深煎りは低めに寄せるのが基本です。温度が味の格を決める話はコーヒー豆の抽出温度が、味わいの格を決めるへ。
挽き目は「接触時間の長さ」で決まる

挽き目の並び方には、きれいな法則があります。表を接触時間の長い順に並べ替えてみてください。
- 水出し(8〜12時間)= 粗挽き〜中粗挽き
- フレンチプレス(4分)= 粗挽き
- サイフォン(浸漬60秒前後)= やや細かい中挽き
- エアロプレス(約2分・加圧)= 中挽き〜やや細め
- マキネッタ(加圧)= 細挽き
長く浸けるほど粗く、短時間・加圧ほど細かく。粉が細かいほど湯と触れる表面積が増えるので、長時間の方式で細かく挽くと出過ぎてしまう。逆に短時間の方式で粗く挽くと、味が薄いまま終わる。挽き目は「時間の埋め合わせ」だと考えると腑に落ちます。
細挽きの世界はコーヒー豆の挽き方|細挽きで引き出す上質な一杯、器具選びは味を決めるグラインダーの選び方で。
抽出時間と濃度|同じ比率でも濃さは変わる
豆と湯の量が同じでも、時間が違えば濃さは変わります。抽出とは、時間をかけて成分を溶かし出す作業だからです。
同じ1:15でも、フレンチプレスの4分とハンドドリップの2〜3分では、カップの中身が違う。だから比率だけを合わせても、狙った味には届きません。時間の考え方は一杯の格を決める、コーヒー豆の抽出時間、濃度そのものの話は高級豆にふさわしい抽出濃度とはへ。
豆と湯の比率|1:15を基準に振る

基準は1:15〜1:16。ハンドドリップもフレンチプレスもこの範囲に収まります。ボディを厚くしたければフレンチプレスで1:13〜1:14まで詰める。エアロプレスは1:14前後(豆14gに湯200ml)と、やや濃いめの設計。
一方、水出しは1:10〜1:12.5。粉40gに水500mlという、湯で淹れるときよりずっと濃い比率です。冷水は成分が溶け出しにくいぶん、粉を多めに使って釣り合いを取る。方式が変われば基準そのものが動くわけです。
比率の設計はコーヒー豆と抽出量の黄金比と抽出比率ガイドの2本で。
ハンドドリップ|自由度が最も高い基本の淹れ方

ドリッパー、ペーパー、ケトル、スケール。道具はシンプルで、はじめの一歩に選ばれるのも納得です。挽き目は中細挽き〜中挽き、湯温は90℃前後(浅煎りなら88〜92℃)、比率は1:15〜1:16、抽出は2〜3分。透過式らしく、すっきりとして酸味や華やかさが立ちます。
ただ、この方式には表と裏があります。注ぎ方で味が動くということは、狙って動かせるという長所であり、同時に、意図せずブレるという短所でもある。湯の落とし方、蒸らしの秒数、二投目の速度。どれも味に効きます。
だから伸びしろが大きい。逆に「いつも同じ味でいい」という人には、待つだけの方式のほうが合うこともあります。
まず基本の3本を、この順に読むのが分かりやすいはず。ドリップで味わう嗜好品としての一杯で全体像を、蒸らし時間は何秒がベストで最初の30秒を、二投目以降で味がブレるときの安定した注ぎ方でその後の注ぎ方を掴んでください。
そのうえで、当てはまるものがあれば。
- これから始める方は初心者でも簡単に楽しめるレシピ
- 浅煎りの豆を扱うなら浅煎りコーヒーを美味しく淹れるコツ
- うまくいかない日には抽出がうまくいかないときの整え方
- アレンジまで広げたいなら香りを飲むドリンクレシピ
合う豆は? ハンドドリップはどの豆でも受け止める方式なので、当店から「この銘柄でなければ」とは申し上げません。おすすめは、まず数種類を同じ淹れ方で飲み比べて、自分の基準を作ること。飲み比べセット 選べる3種やお試しセット 選べる3種は、そのための入口です。
フレンチプレス|待つだけで豆の輪郭がそのまま出る

粗挽き(ザラメ糖くらい)の粉に90〜95℃の湯を注ぎ、4分待って、プランジャーを押し下げる。以上。テクニックの介在する余地がほとんどない方式です。
金属フィルターが油分を通すため、コーヒーオイルがそのままカップに残ります。とろりとした質感、濃厚な口当たり。ペーパーが受け止めていたものが、ここでは全部届く。豆の輪郭がそのまま出る、という言い方がしっくりきます。
手間の軸で見ると、この方式の価値がはっきりします。注ぎ方で味が変わらない=失敗しにくい。ハンドドリップで「日によって味が違う」と悩んだ人が、フレンチプレスに移って安定を手に入れる、というのはよくある道筋です。比率は1:15〜1:16が基準で、ボディを厚くしたければ1:13〜1:14へ。
裏を返せば、味を細かく操作する楽しみは薄い。そこは好みの分かれ目です。
合う豆。オイルが残る方式なので、果実味やアロマの強い豆が映えます。ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラルやエチオピア アリーチャ ナチュラルは、ワインを思わせる香りと果実味がまっすぐ届きます。重厚なコクを求めるならインドネシア マンデリン エスペシャル。
そして浅煎りとの相性の良さ。ペーパーで削られがちな浅煎りの繊細な香味成分を、金属フィルターは残してくれます。浅煎りを持て余していた方には、試す価値のある方式。詳しい手順はプロ直伝 フレンチプレスの使い方で。
エアロプレス|浸漬と加圧のハイブリッド、短時間で濃く

浸けて、押す。エアロプレスは浸漬式と加圧を組み合わせた方式です。粉を湯に1分30秒ほど浸してからプレスに約30秒。合計およそ2分で一杯が仕上がります。
ペーパーフィルターを通すのでクリーンさがあり、加圧で押し出すのでボディも乗る。酸味と甘みのバランスが取りやすい方式です。挽き目は中挽き〜やや細め(500〜700μm)、比率は1:14前後(豆14gに湯200ml)。
面白いのは湯温の振り幅。基準は88℃ですが、銘柄によって85〜94℃まで動かします。この10℃弱の調整幅が、そのまま設計の自由度になる。しかも本体は軽くて丈夫。出張先にも旅先にも連れて行けます。
一方で、器具を専用に一つ買う必要があり、抽出量は一度に多くありません。家族ぶんをまとめて淹れる用途には向かない方式です。
合う豆と湯温の目安。
- エチオピア アリーチャ ナチュラル:低めの85〜87℃で、フローラルな香りを繊細に
- インドネシア マンデリン エスペシャル:高めの92〜94℃で、コクをしっかり引き出す
- コスタリカ グラナディージャ:バランス型。基準の88℃から始めやすい
- ブラジル 山口農園:ナッツを思わせる香ばしさ
- グアテマラ エルインヘルト:果実感と気品のある一杯に
インバート法(本体を逆さに置いて浸漬させる淹れ方)を含む具体的なレシピはエアロプレスでスペシャルティコーヒーを最高に淹れるレシピ集に。
サイフォン|香りが立つクリアな一杯

ガラスのフラスコ、立ちのぼる湯、静かに落ちてくる液体。喫茶店の風景そのもので、「自分には難しそう」と思われがちな方式です。
でも、手間の欄をもう一度見てください。浸漬時間を守れば安定する。実はサイフォンは、ハンドドリップより失敗が少ない方式です。理由は単純で、味を左右する変数が少ないから。ハンドドリップのように注ぎ方で味が動くことがなく、決めた秒数を守れば同じ味に着地します。
湯温は95℃前後と高め。挽き目はグラニュー糖よりやや細かい中挽き。ロートで60秒前後浸漬させ、全体で3〜5分。高温で短時間、という組み合わせが香りを強く立たせ、雑味の少ないクリアな味わいを生みます。
不向きな点も。器具一式(ロート、フラスコ、ろ過器、スタンド、熱源)を揃える必要があり、洗い物も多い。忙しい朝より、時間のある休日に似合う方式です。
合う豆。95℃前後の高温抽出は、深煎りのコクと香ばしさを引き出すのに向いています。ノボルドエスペシャルのような深煎りで、香りの立ち方を確かめてみてください。
仕組みそのものに興味が湧いたらロースター解説 サイフォンコーヒーの仕組みとはへ。
マキネッタ|約2気圧が生むパンチのあるコクと甘み

イタリアの家庭で使われてきた直火式の器具。下部の水を火にかけ、発生した蒸気圧で湯を粉の層に押し上げます。
数字で位置づけるとわかりやすい。エスプレッソマシンが約9気圧なのに対し、マキネッタは約2気圧。エスプレッソそのものではないけれど、ハンドドリップとは別世界の濃度が出ます。とろっとした質感、パンチのあるコクと甘み。細挽きの粉を使う理由も、この短時間・加圧という条件にあります。
味を決める鉄則は三つ。
1. 挽き目:細挽き。粗いと薄く、細かすぎると詰まります2. 水量:安全弁の下まで。超えると危険です3. 火加減:弱火から中火。強火は焦げの原因に
そして完了の合図。コポコポという音がし始めたら火を止める。マキネッタは時間で計る方式ではなく、音で判断する方式です。だから比較表の抽出時間と湯温の欄には数値を置いていません(水から加熱するので、注ぐ湯の温度という概念自体がない)。ここが他の7方式と決定的に違うところ。
合う豆。王道は深煎りです。ノボルドエスペシャルやインドネシア マンデリン エスペシャルで、濃厚な一杯を。
ただし浅煎りという選択肢も面白い。ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラルを細挽きでマキネッタにかけると、酸味がジューシーな甘みに転じます。どちらが正解ということはなく、両方試してみる価値のある方式。
使い方の詳細はイタリア流 マキネッタで淹れるモカが最高に美味しい理由で。
水出し(コールドブリュー)|冷水8〜12時間でまろやかに

夏の定番。そして「作り方」が最も検索される方式です。
冷水では、苦味や渋みのもとになる成分が溶け出しにくい。だから甘味とコクが前に出て、やわらかく丸みのある口当たりになります。時間はかかるけれど、やることは仕込んで待つだけ。夜に用意して、朝には出来ている。
水出しコーヒーの作り方|最小手順
1. 豆を粗挽き(〜中粗挽き)に挽く2. 粉40g をフィルターまたはポットの粉容器に入れる3. 水500ml を注ぐ(比率は1:10〜1:12.5)4. 冷蔵庫で8〜12時間 置く5. 粉を取り出して完成
焙煎度で時間を変える
ここが仕上がりを分ける要点です。同じ8時間でも、焙煎度が違えば出方が違います。
- 浅煎り:12〜14時間
- 中煎り:10〜12時間
- 深煎り:8〜12時間
浅煎りは成分が出にくいので長めに、深煎りは出やすいので短めに。この一手間で、薄すぎる/出すぎる、の両方を避けられます。詳しくは水出しコーヒーの抽出時間で。
浸漬式と点滴式、どちらを選ぶか
浸漬式は、粉を水に浸けておくタイプ。フィルターごと引き上げるだけなので手入れが簡単で、はじめの一台に向きます。点滴式は、水を一滴ずつ落として時間をかけて抽出するタイプ。香りの輪郭がくっきり出る反面、器具は大きく、扱いにも慣れが要ります。日常使いなら浸漬式、休日の楽しみとしてなら点滴式。器具の比較は水出しコーヒーメーカーの選び方に。
合う豆。すっきりした甘味を求めるならブラジル 山口農園。酸味が控えめで、水出しにすると穏やかな甘さが際立ちます。コクを立てたい、ミルクで割りたいならインドネシア マンデリン エスペシャル。どちらの飲み方にも応えてくれるのがコスタリカ グラナディージャとグアテマラ エルインヘルトです。
作った後のことは水出しコーヒーの保存とアレンジ、豆選びをさらに詰めるならアイスコーヒーに合う豆へ。
急冷式アイスコーヒー|今日ぶんを数分で、香りをそのまま冷やす

水出しが「仕込む」方式なら、急冷式は「都度淹れる」方式。熱湯で抽出した液体を、氷で一気に冷やす。数分で完成します。
湯で抽出するので、香りの成分がしっかり開きます。それを急冷することで、開いた香りを閉じ込めたまま冷たくする。香りと酸の高い豆ほど、水出しとの差がはっきり出る方式です。
レシピは、粉20g、湯130〜150ml、氷100〜120g。挽き目は中挽き〜中細挽き。湯温は浅〜中煎りで90℃前後、中深〜深煎りで85℃。蒸らし30秒を取り、総抽出時間1分30秒〜2分で落としきります。氷で薄まるぶん、湯の量を通常より絞るのがポイント。
水出しとの使い分けは、生活時間で決まります。
- 前の晩に仕込める/まとめて作りたい → 水出し
- 飲みたいときに、その一杯だけ → 急冷式
味の方向でいえば、水出しはまろやかさ、急冷式は香りの鮮やかさ。どちらが上ということではなく、求めるものが違います。
合う豆。香りと酸を主役にするならエチオピア アリーチャ ナチュラルとブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル。急冷式の得意分野がそのまま出ます。コク重視ならグアテマラ エルインヘルトやインドネシア マンデリン エスペシャル。どちらの方向にも寄せられる万能型がコスタリカ グラナディージャです。
手順の詳細はアイスコーヒー急冷式レシピ、豆選びはアイスコーヒーに合う豆で。
ドリップバッグ|器具ゼロ、4ステップで淹れる

8方式のなかで、追加の器具が要らないのがこれ。必要なのはドリップバッグとカップ、そしてお湯だけです。
1. 袋を開け、バッグをカップの縁に掛ける2. 少量の湯を注いで20〜30秒蒸らす3. 数回に分けて湯を注ぐ(湯量120〜150ml)4. バッグを外す
湯温は85〜90℃。沸騰直後の湯を少し置いてから使うくらいが目安です。
味の傾向や挽き目を、この記事では書きません。ドリップバッグは、豆の選定も焙煎度も挽き目もロースター側で設計を終えてから袋に詰めるものだからです。淹れる人が調整する余地は湯温と湯量くらい。そのぶん、誰が淹れても仕上がりが揃います。
活きるのは、器具が使えない場面です。出張先のホテル、職場のデスク、キャンプ場。あるいは、洗い物をする余裕のない朝。器具を持っている人にとっても「もう一つの選択肢」として持っておく価値があります。
不向きなのは、豆を挽くところから楽しみたいときと、味を自分で動かしたいとき。そこは他の方式の領分です。
当店のドリップバッグは8カップ入りと4カップ入りをご用意しています。淹れ方のコツはドリップバッグの淹れ方に詳しく。
あなたに合う淹れ方の選び方|時間・好み・器具から逆引き

表を全部読むより、こちらのほうが早いかもしれません。当てはまるものから逆に引いてください。
朝、5分しかない→ ドリップバッグ/エアロプレス/急冷式アイス。どれも数分で完結します。
待つだけがいい。手を動かしたくない→ フレンチプレス(4分)/水出し(8〜12時間)。仕込んで放置するタイプ。
味を自分で動かしたい→ ハンドドリップ/エアロプレス。注ぎ方や湯温で結果が変わるので、いじる楽しみがあります。
コクと厚みが好き→ フレンチプレス/マキネッタ/サイフォン(深煎りで)。オイル感や濃度が前に出ます。
すっきり・華やかが好き→ ハンドドリップ/サイフォン/急冷式アイス。澄んだ液体になる、クリアな味わい。
方式が決まらないという方は、まず豆から入るのも手です。お試しセット 選べる3種で好みの方向を確かめる。方式ごとに豆を変えて試したい方には飲み比べセット 選べる3種を。同じ豆を違う方式で淹れる、違う豆を同じ方式で淹れる。どちらの実験も楽しいものです。
焙煎機で変わる、淹れ方との相性|Probat UG22n と Loring S35 Kestrel

淹れ方の前に、豆にはもう一段階あります。焙煎です。
NOVOLDには性質の異なる二台の焙煎機があります。ひとつは1971年製のドイツ製ヴィンテージ機 Probat UG22n。鋳鉄ドラムの蓄熱がじっくり豆に入り、重厚なコクを生みます。もうひとつは四国唯一の導入機である Loring S35 Kestrel。精密な熱風制御で、クリアで華やかな酸味と甘みを引き出します。
この違いは、抽出方式との相性としても現れます。Probatの生む重厚なコクは、オイルや質感がそのまま残る方式(フレンチプレス、マキネッタ、水出し)で輪郭が出やすい。Loringの引き出す明るい酸味は、澄んだ液体になる方式(ハンドドリップ、サイフォン、急冷式アイス)で伸びやすい。これは当店の実感であって、決まりごとではありません。
もちろん、Probatの豆をハンドドリップで淹れてはいけない、という話ではありません。組み合わせは自由です。ただ「この豆の持ち味を、どの方式なら一番受け止められるか」を考えるとき、焙煎機という視点が一つ増えると、選択が面白くなります。
その日の豆に合わせて二台を使い分けているのは、三代目・櫻井健司。コーヒーインストラクター1級として、徳島の焙煎所で毎日焙煎に立っています。
よくある質問|淹れ方の違いに関するQ&A

Q1. 初めて器具を買うなら、何がいいですか?
ハンドドリップをおすすめします。ドリッパー、ペーパー、ケトル、スケールという構成で、道具そのものはシンプル。抽出の基本(蒸らし、湯温、比率)が身につくので、後から他の方式に移っても土台が活きます。
Q2. 同じ豆で淹れ方を変えても、本当に味は変わりますか?
変わります。理由は二つ。透過式か浸漬式かという抽出の仕組みの違いと、フィルターの素材の違いです。ペーパーは油分を受け止め、金属フィルターは通す。同じ豆でも、すっきりした一杯にもとろりとした一杯にもなります。
Q3. 水出しと急冷式アイスは、どう違いますか?
時間と味の方向が違います。水出しは冷水で8〜12時間かけて仕込み、やわらかく丸みのある味に。急冷式は熱湯で抽出して氷で冷やし、数分で完成、香りと酸が鮮やかに出ます。作り置きしたいなら水出し、今すぐ一杯なら急冷式。
Q4. 挽き目は器具ごとに変えないとダメですか?
変えたほうが仕上がりは安定します。粉と湯が触れる時間が方式ごとに違うからです。長く浸ける水出しやフレンチプレスは粗挽き、短時間・加圧のマキネッタは細挽き。ハンドドリップの中細挽き〜中挽きを真ん中に置いて、そこから前後に振ると覚えやすいはずです。
Q5. 挽いた豆や、飲みきれない豆はどうすればいいですか?
飲む以外の使い道もあります。お菓子に混ぜると、香りが立った大人の味わいに。コーヒー豆を「食べる」贅沢|香りを楽しむ大人のお菓子レシピで、いくつか紹介しています。
NOVOLD COFFEE ROASTERSについて
NOVOLD COFFEE ROASTERSの強みは、性質の異なる二台の焙煎機を豆ごとに使い分ける「温故知新」の哲学にあります。ドイツ製ヴィンテージ機 Probat UG22n(1971年製)の鋳鉄ドラムが生む重厚なコク。最新鋭 Loring S35 Kestrel(四国で唯一の導入機)の精密熱風制御が引き出す、クリアで華やかな酸味と甘み。新旧二機を熟練焙煎士が操ることで、浅煎りから深煎りまで、それぞれの豆が持つ最良の表情を描き出します。











