コーヒー豆を選ぶとき、産地名や品種を並べて見比べても、なかなか一本に絞れないものです。情報が足りないのではなく、比べる軸がないから決まらない。そこで、たった2つの質問から始めてみてください。①酸味は好きですか、それとも苦手ですか。②どのくらい濃く飲みたいですか。この2つに答えが出れば、自分の好みの座標はほぼ決まります。
NOVOLDが扱うコーヒー豆は、シングルオリジン6種とブレンド1種の、あわせて7種。1971年製のヴィンテージ焙煎機 Probat UG22n と、国内でも導入例の少ない Loring S35 Kestrel。この二台をどう使い分けているかを知ると、7種の並びが一枚の地図に見えてきます。読み終えるころには、最初に注文する1本が決まっているはずです。
NOVOLDの豆7種を1枚の表で比べる
まずは全体像から。酸味・コク・甘さは、NOVOLDが自社で豆ごとに評価している5段階の指標をもとに、言葉に置き換えています。気になる銘柄名をタップすると、その豆だけを掘り下げた記事へ移動します。
| 銘柄 | 酸味 | コク | 甘さ |
|---|---|---|---|
| ブラジル 山口農園|ブルボン種ナチュラルが生むナッツとチョコの甘さ | 控えめ | 中くらい | とても強い |
| ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル|ワインのような香りの正体 | 強い(柔らかい質) | 軽い | 強い |
| コスタリカ グラナディージャ|ハニープロセスが生むハチミツのような甘さ | 穏やかで明るい | 中くらい | 強い |
| エチオピア アリーチャ ナチュラル|イルガチェフェのブルーベリー感を楽しむ | 強い | 中くらい | とても強い |
| グアテマラ エルインヘルト|ウエウエテナンゴの高地が育てる気品ある一杯 | 穏やか | しっかり | 強い |
| インドネシア マンデリン エスペシャル|「マンデリンは臭い」が過去になった理由と選び方 | ごく控えめ | とても強い | 控えめ |
| ノボルドエスペシャル|1971年製Probatと最新Loringで組む定番ブレンド | 控えめ(隠し味に果実感) | しっかり | 中くらい |
続けて、焙煎度・焙煎機・こんな人向けをまとめます。
| 銘柄 | 焙煎度 | 焙煎機 | こんな人向け |
|---|---|---|---|
| ブラジル 山口農園|ブルボン種ナチュラルが生むナッツとチョコの甘さ | 中煎り | Loring | 酸っぱいのが苦手。毎日飲む1本を決めたい |
| ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル|ワインのような香りの正体 | 浅煎り | Loring | コーヒーで驚きたい。ワインが好き |
| コスタリカ グラナディージャ|ハニープロセスが生むハチミツのような甘さ | ― | Loring | 柑橘やトロピカルの香りを愉しみたい |
| エチオピア アリーチャ ナチュラル|イルガチェフェのブルーベリー感を楽しむ | 中浅煎り | Loring | ベリーや花の香りが好き。華やかさを求める |
| グアテマラ エルインヘルト|ウエウエテナンゴの高地が育てる気品ある一杯 | 中煎り | Loring | 酸味と厚みのバランスを取りたい |
| インドネシア マンデリン エスペシャル|「マンデリンは臭い」が過去になった理由と選び方 | 深煎り | Probat | 濃く、苦く。ミルクにも負けない一杯が欲しい |
| ノボルドエスペシャル|1971年製Probatと最新Loringで組む定番ブレンド | ― | Probat+Loring | 迷ったらここ。NOVOLDの基準を知りたい |
表の右端、焙煎機の列に注目してください。深く焼き込む豆は1971年製の Probat、香りと酸味を主役にする豆は Loring。この振り分けが、NOVOLDの味の地図そのものです。
ブラジル 山口農園|酸っぱくないコーヒーを探しているなら
キャラメルやブラウンシュガーを思わせる甘さに、アーモンドとヘーゼルナッツの香ばしさ。そしてミルクチョコレート。酸味は控えめで、フルーティーさもごくわずかです。「コーヒーらしいコーヒー」という言い方がいちばん近い一杯。
産地はブラジル・ミナスジェライス州のセラード地域、標高940mの山口農園。日系人の生産者による共同栽培で、品種はブルボン、精製はナチュラル(収穫した実をそのまま乾燥させる方法)です。中煎りに焼き上げるのは Loring S35 Kestrel のほう。甘さの評価は5段階中4.0と、7種のなかでも上位に入ります。
向く人:酸味が苦手な方。砂糖やミルクを入れて飲む方。毎朝の定番を一本決めたい方。
向かない人:果実のような華やかな香りを求めている方には物足りません。フルッタやアリーチャのほうが期待に応えます。
もっと詳しく: ブラジル 山口農園|ブルボン種ナチュラルが生むナッツとチョコの甘さ
ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル|コーヒーで驚きたい人へ
チェリー、ストロベリー、ラズベリー。赤い果実がまず立ち上がり、そこへ赤ワインのような発酵の香りが重なります。キャラメルの甘さとヘーゼルナッツが土台を支え、口当たりはミディアムからフル。酸味の評価は4.0ですが、質はあくまで柔らかく、尖ったところがありません。
同じセラード地域、標高1,080m。4人の生産者による委託生産で、品種はブルボンです。特徴は精製方法にあります。アナエロビック(嫌気性発酵)とは、酸素を遮断した状態で発酵させる方法のこと。そのあとナチュラル精製へ進むことで、独特の複雑さが生まれます。焙煎は Loring による浅煎り。2018年12月の試験販売では、初日に完売しました。この製法はブラジルで特許出願中・商標登録申請中です。
向く人:ワインが好きな方。コーヒーの概念を一度ひっくり返してみたい方。
向かない人:苦くて濃いコーヒーを求める方には軽すぎます。コクの評価は1.0。マンデリンとは正反対の設計です。
もっと詳しく: ブラジル フルッタ アナエロビック ナチュラル|ワインのような香りの正体
コスタリカ グラナディージャ|ハチミツのような甘さを味わう
レモン、オレンジ、グレープフルーツといった柑橘。そこへパイナップルやマンゴー、パッションフルーツのトロピカルな香りが続きます。ハチミツを思わせる甘さと、ジャスミンのような花の香り。口当たりはミディアムで、酸味は明るくクリーン。すっと澄んだ印象の一杯です。
産地はコスタリカのタラス地区、サンタ・マリア・デ・ドタ。標高1,850mから1,950mの高地です。農園はカルデロン一家が所有するグラナディージャ農園で、精製は2009年に稼働したロスアンヘレス・マイクロミルが担当します。同じこのミルからは、2011年のカップ・オブ・エクセレンス第1位が出ています。品種はカトゥアイ、精製はイエローハニー(果肉の一部を残して乾燥させる方法)。焙煎は Loring です。
向く人:香りを愉しみたい方。フルーツティーやハーブティーをよく飲む方。食後の一杯を探している方。
向かない人:ナッツやチョコレートの香ばしさを求める方には方向が違います。山口農園を選んでください。
もっと詳しく: コスタリカ グラナディージャ|ハニープロセスが生むハチミツのような甘さ
エチオピア アリーチャ ナチュラル|ベリーと花の香りが立つ一杯
ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー。赤ワインを思わせる風味に、ジャスミンやオレンジブロッサムの花の香りが重なります。ハチミツのような甘さの評価は4.0、香りも4.0。口当たりはミディアムで、酸味は明るく爽やか、余韻が長く続きます。冷めていく過程まで含めて愉しめる豆です。
産地はエチオピア・ゲデオゾーンのイルガチェフェ郡アリーチャ村。標高1,800mから2,000mの高地で、アリーチャ・ウォッシングステーション周辺の小規模農家群がガーデンコーヒー方式(自宅の庭先で少量ずつ育てる方式)で栽培しています。品種はエチオピア原種、いわゆる在来種。精製はアフリカンベッド(地面から離した棚)での自然乾燥です。焙煎は Loring による中浅煎り。なお収穫期は10月から1月とされますが、これはエチオピア全体の一般的な時期であって、この農家群の実際の収穫日を示すものではありません。
向く人:果実や花のような華やかな香りを求める方。ブラックで香りをじっくり追いたい方。
向かない人:ミルクを入れて飲む方には、せっかくの香りが埋もれてしまいます。
もっと詳しく: エチオピア アリーチャ ナチュラル|イルガチェフェのブルーベリー感を楽しむ
グアテマラ エルインヘルト|酸味と厚みのバランスを取りたいなら
ベリー系の果実感と赤ワインのような風味。そこへハチミツとキャラメルの甘さ、ジャスミンの花の香りが加わります。口当たりはミディアム、酸味は明るくクリア。コクの評価は3.0で、7種のなかでは中庸の位置。華やかさと飲みごたえの両方をほどよく持っている一杯です。
グアテマラ・ウエウエテナンゴ県ラ・リベルタ村にある、アギーレ家経営の名門エル・インヘルト農園。敷地は750haあり、そのうちコーヒー栽培に使うのは250ha、残る470haは天然の雨林として保たれています。標高1,500mから2,000m、火山性の土壌。平均気温は16度から28度、年間降水量は1,800mmから2,000mm。品種はブルボン70%とカトゥアイ30%、精製はウォッシュド(果肉を除いてから水で洗う方法)です。焙煎は Loring による中煎り。収穫期は1月から4月とされますが、こちらもグアテマラの一般的な時期を指します。
向く人:スペシャルティコーヒーを飲み慣れてきて、次の一本を探している方。来客に出す豆を決めたい方。
向かない人:はっきりした個性を求める方には、優等生すぎると映るかもしれません。
もっと詳しく: グアテマラ エルインヘルト|ウエウエテナンゴの高地が育てる気品ある一杯
インドネシア マンデリン エスペシャル|1971年製Probatが焼く深煎り
湿った土や森を思わせるアーシーな香り。クローブ、ナツメグ、シナモンのスパイス感。そこへチョコレートとブラウンシュガーの甘さ、アーモンドとヘーゼルナッツが重なります。コクの評価は4.0で7種中最大、酸味は1.0で最小。フルボディの、まさしく濃い一杯です。
産地はスマトラ島北部、トバ湖畔のリントンニフタとパランギナン。標高1,300mの土地で、指定された農家群が育てています。品種はカチモール系、ジュンベル、ラスーナ、ティピカなど複数。精製はスマトラ式(ウェットハリング)と呼ばれる独特の方法で、生豆を一度乾燥させ、果肉を取り除いてから再び乾燥させる二段階の工程です。この土地ならではの風味は、ここから生まれます。焙煎を受け持つのは1971年製の Probat UG22n。深煎りに焼き込みます。なお収穫期の10月から3月は、スマトラ島の一般的な時期です。
向く人:濃く苦いコーヒーが好きな方。カフェオレやアイスコーヒーにしたい方。
向かない人:フルーティーな酸味を期待する方には、ほぼ真逆の設計です。アリーチャやグラナディージャへどうぞ。
もっと詳しく: インドネシア マンデリン エスペシャル|「マンデリンは臭い」が過去になった理由と選び方
ノボルドエスペシャル|二台の焙煎機が同居する定番ブレンド
ダークチョコレート、キャラメル、そしてラズベリー。最後のラズベリーが、このブレンドの仕掛けです。土台の重さのなかに、ふっと明るい果実の気配が差し込む。それがNOVOLDという店の考え方を、いちばん短い言葉で説明してくれます。
組み立てはこうです。ブラジル、コロンビア、グアテマラの3種を1971年製の Probat UG22n で深煎りにする。そこへ、エチオピア アリーチャを Loring S35 Kestrel で中浅煎りにしたものを少量合わせる。あわせて4つの産地、二台の焙煎機。深く焼き込んだ豆の厚みと、浅く焼いた豆の香りを、あえて一杯のなかへ同居させています。焙煎度をひとことで言い表せないのは、そもそも一つの焙煎度で作っていないからです。
向く人:どれを選べばいいか決めきれない方。NOVOLDがどんな店なのか、一杯で知りたい方。
向かない人:単一の産地の個性をまっすぐ味わいたい方には、シングルオリジン6種のほうが向いています。
もっと詳しく: ノボルドエスペシャル|1971年製Probatと最新Loringで組む定番ブレンド
豆を挽かずに試すという入口
ここまで読んで気になる豆が見つかっても、「うちにミルがない」という一点で止まってしまう方は少なくありません。粉に挽いた状態で買うこともできますが、もっと手前に、もう一段やさしい入口があります。ドリップバッグです。
NOVOLDのドリップバッグの中身は、ノボルドエスペシャル。先ほど紹介したブレンドと同じものです。つまり Probat UG22n と Loring S35 Kestrel、二台の焙煎機で組み立てた一杯を、道具をひとつも増やさずに試せるということ。カップに引っかけてお湯を注ぐだけで、そこにNOVOLDの基準となる味が現れます。
ミルを買うかどうかは、味を知ってから決めればいい話です。
もっと詳しく: NOVOLD ドリップバッグ(4カップ入り)|8カップ入りとの選び方と美味しい淹れ方
それでも決められない人へ
7種を眺めてもまだ迷う。そういうときは、目的から逆に引いてみてください。
酸味が苦手な方は、ブラジル 山口農園かマンデリン エスペシャルの二択です。前者は中煎りでナッツとチョコの甘さ、後者は深煎りでスパイスと厚み。どちらも酸味の評価は低く、まず外しません。
毎日たっぷり飲む方には、ノボルドエスペシャルかマンデリン エスペシャル。深煎りが土台にあるので、多めに淹れても味の芯が崩れません。ミルクや氷を加えても負けない濃さがあります。
贈り物にしたい方は、相手の好みが読めないことが多いはずです。そこで役に立つのがお試しパック。シングルオリジン6種とブレンド「ノボルドエスペシャル」、あわせて7種のなかから好きな3種を100gずつ選べます。挽き方は3袋共通で指定する形式。なお、こちらはお一人様2回までのご購入とさせていただいております。
自分用に選ぶ場合も、この3種セットはよく効きます。酸味の強い1本、深煎り1本、その中間から1本。この組み合わせで飲み比べれば、冒頭の2つの質問への答えが、頭ではなく舌で分かります。
もっと詳しく: コーヒーが趣味の人の始め方|どんな豆を買えばいいか分からない人のための入門ガイド
よくある質問
Q. 焙煎機によって、そんなに味が変わるものですか?
変わります。1971年製の Probat UG22n はドイツ製のヴィンテージ機で、深く焼き込んだときの厚みのある味わいを受け持ちます。一方の Loring S35 Kestrel はアメリカ製で、精密な熱風制御によって香りや酸味をクリアに引き出す設計。国内でも導入例の少ない焙煎機です。同じ豆でも、どちらで焼くかで表情が変わります。
Q. シングルオリジンとブレンド、どちらから始めるべきですか?
好みの方向がまだ見えていないなら、ブレンドのノボルドエスペシャルが基準になります。産地ごとの違いを知りたい気持ちが先に立つなら、シングルオリジンから。どちらが正解ということはありません。
Q. 豆と粉、どちらを選べばいいですか?
ミルをお持ちなら豆をおすすめします。挽きたての香りは、粉の状態では再現できません。ミルがない場合は粉で注文するか、ドリップバッグから始めてください。
Q. 7種のうち、いちばん飲みやすいのはどれですか?
飲みやすさの基準は人によって違いますが、酸味が苦手な方の多い日本では、ブラジル 山口農園が最も抵抗なく飲める一本です。酸味の評価は2.0、甘さは4.0。ナッツとチョコレートの香ばしさが中心なので、コーヒーに慣れていない方にも届きます。
Q. マンデリン エスペシャルは、ブレンドのノボルドエスペシャルと同じものですか?
別の商品です。マンデリン エスペシャルはインドネシア・スマトラ島のシングルオリジン。ノボルドエスペシャルは4つの産地を組み合わせたブレンドです。名前が似ているのでご注意ください。
NOVOLD COFFEE ROASTERSが目指すのは、「ただ美味しい」を超えて、愛でるように愉しむ一杯。1932年創業の徳島ブラジルコーヒ店が94年かけて育ててきた知見と、Probat UG22n × Loring S35 Kestrel という二台の焙煎機が描く繊細な焙煎が、朝の光にも、夜の静けさにも寄り添います。ワインや時計のように、香りを愉しみ、味の移ろいを追いかける。そんな嗜好品としてのコーヒーを、あなたの暮らしへ。
まずは3種の飲み比べから、自分の好みの座標を確かめてみてください。











